第15章:暴走と制御の狭間 ― ユリウスの初めての恐怖
第15章:暴走と制御の狭間 ― ユリウスの初めての恐怖
夜空を裂く轟音が、街全体に響き渡る。
兵器たちは圧倒的な速度で迫る。
ユリウスは全身に力をみなぎらせ、覚醒の力で次々に装甲兵器を排除する。
しかし、そのたびに瓦礫や破片が跳ね、避難している民間人の近くまで飛んでいく。
「――っ、やめ……!」
ユリウスの目が初めて大きく揺れる。
拳を握るたび、跳ね飛ぶ瓦礫が人々に迫る。
彼の意識の中心は“守る”だけなのに、結果として“危険”を生んでしまう現実がそこにあった。
◆1. 初めての恐怖
「……俺が……傷つけてる……?」
心臓が喉元まで浮き上がる感覚。
背中に冷たい汗が流れ、呼吸が浅くなる。
目の前の光景が、戦闘の興奮ではなく、恐怖として押し寄せてくる。
逃げ惑う市民。
倒れた屋台。
割れたガラス片。
「こんな……こんなはずじゃ……!」
ユリウスは立ち止まり、両手を握りしめた。
力を抜こうとすれば兵器に押される、握れば周囲を巻き込む。
制御と暴走の狭間。
彼は初めて、自分の力に恐怖した。
◆2. ジャスパーの制御介入
ジャスパーが全力で駆け寄る。
背後には残党たちも動き、民間人の安全を確保しながら前線を補助する。
「ユリウス! 落ち着け! その力は制御できるはずだ!」
ユリウスは振り返る。
覚醒の力はまだ全開。
しかし、民間人への被害が現実となって目の前にある。
拳を下ろすと、瓦礫の飛散が止まる――
が、兵器は依然として襲いかかる。
「俺……どうすれば……!」
息が乱れ、震える声。
これまで“守る”ことにのみ集中していたユリウスに、初めての“恐怖”が生まれた瞬間だった。
ジャスパーはゆっくり距離を詰める。
目を逸らさず、ユリウスに語りかけた。
「力に頼るな! 目で、頭で、心で制御しろ!」
ユリウスの瞳が揺れる。
恐怖と覚悟、怒りと責任。
心の奥で、ロイの教え――“守るために決して止まらない”――がぶつかる。
◆3. 街と民間人
目の前で瓦礫が跳ね、逃げ惑う人々。
炎が建物の隙間から吹き上がり、煙が立ち込める。
ユリウスは足を止める。
拳を握るが、衝撃を生むたびに周囲が危険になる。
“守る”ことが、暴力と紙一重になった現実を直視する。
「……俺が……これじゃ……」
胸の奥が締めつけられる。
身体の力を制御できず、暴走の代償を目の当たりにする。
その恐怖は、初めてユリウスに“守ることの責任”を痛感させた。
◆4. 制御の一歩
ジャスパーが前に飛び出す。
「俺たちが守る。お前は力を使え――でも、制御しろ!」
ユリウスはゆっくり深呼吸。
覚醒の熱を抑え、周囲の状況を頭の中で整理する。
民間人の位置、瓦礫の落下範囲、兵器の動き。
頭の中で瞬時に計算し、力の解放量を微調整する。
「……これが……俺のやり方……」
身体が揺れるが、力は徐々に制御され始める。
ユリウスは初めて、“暴走と制御の狭間”に立ったまま戦うことを覚えた。
◆5. 章の終わり
夜空に轟く爆音と、跳ねる火花。
しかし、瓦礫は民間人から逸れ、兵器だけに影響する。
ユリウスの胸には、恐怖と覚悟が同時に刻まれた。
(俺は……守る力を手に入れた。
でも、力だけでは守れない……
だから……俺は、制御する――)
ジャスパーは背後で静かに頷いた。
「……これが、お前の覚醒か。
ロイとは違う、ユリウスの覚醒……」
覚醒の代償を知った少年は、
今、初めて“守るための本当の力”を手に入れた。




