第14章:覚醒の代償
第14章:覚醒の代償
兵器四機が同時に突進してきた。
地面が割れ、火花が散り、
ユリウスの身体は吹き飛ばされる。
胸が焼けつくように痛む。
視界が揺れ、呼吸が乱れる。
“もう立てない”
誰もがそう思った瞬間――
ユリウスの中で何かが弾けた。
◆1.ロイの声が聞こえる
意識の奥で、誰かの声がした。
(ユリウス……止まるな)
ロイの声だった。
(お前は、自由を守るために――)
“立て”
ユリウスの目が大きく見開かれた。
心臓がドクン、と大きく跳ねる。
筋肉の限界が消え、
痛みが薄れ、
全身に熱が走る。
まるで身体を縛っていた鎖が外れたように、
力が溢れ出す。
ジャスパーが息を呑んだ。
「……覚醒、か……!?
ロイの時と、同じ……いや、もっと……!」
ユリウスの影がゆっくり立ち上がる。
その背中は、もはや先ほどの少年ではなかった。
◆2.“速すぎて見えない”一撃
兵器の一機がユリウスへ向けて腕を振り下ろした。
瞬間――
「……遅い」
ユリウスが呟き、
その装甲の腕に手を添えた。
次の瞬間。
轟音。
兵器の腕部が、まるで紙のようにねじ切れ、壁に叩きつけられた。
ジャスパーもレミも、
そして敵の兵器すら反応が遅れた。
ユリウスはもうすでに次の一機に向かっていた。
(速い……!)
彼自身も驚くほどに、身体が軽い。
踏み込む度に瓦礫が弾ける。
拳が触れるだけで金属が歪む。
三機目の装甲を打ち砕いた瞬間、
(俺……これは……)
ユリウスは違和感に気づいた。
◆3.制御の崩壊 ― “人々が巻き込まれる”
覚醒の力は強すぎた。
踏み込みひとつ、跳躍ひとつが、
“衝撃”として周囲にぶつかっている。
思わぬ形で被害が広がり始めた。
ユリウスが兵器の胴体を殴り飛ばした反動で、
背後の建物のガラスが一斉に割れる。
「きゃああっ!!」
破片が避難していた人の上に降り注ぎ、
数人が腕や肩を抑えてしゃがみ込む。
ジャスパーが叫ぶ。
「ユリウス! おい、やめろ!
お前の衝撃で民間人が――!」
だがユリウスの耳には届かない。
(止めるんだ……全部止めるんだ……!)
ユリウスは暴走していた。
兵器の一体を蹴り飛ばした瞬間、
その巨体が横転し、屋台を押し潰した。
「待って、誰か下に――!」
悲鳴が上がる。
ユリウスは一瞬だけ動きを止めた。
(……俺が、傷つけてる?)
胸が締めつけられる。
しかし、兵器は待ってくれない。
背後からビームが飛び、ユリウスの肩を掠めた。
焦げた煙が上がる。
(俺が……! 止めないと!!)
再び力を解放し、三機目に突っ込む。
その衝撃で地面が砕け、
避難していた市民に瓦礫が飛び散る。
「あっ……!」
ユリウスの目が見開かれた。
(……俺の力が……“人を巻き込んでる”……?)
初めて、恐怖が生まれた。
◆4.ジャスパーの決断
ジャスパーが走り、
ユリウスの前に立ちはだかった。
「ユリウス! これ以上はダメだ!!
今のお前は……ロイと同じ道に行く!!」
ユリウスは震える声で返す。
「違う……俺は傷つけたくない……!
守りたいだけなのに……!」
ジャスパーは叫ぶ。
「だったら“止まれ”!!
力じゃない! 心でコントロールしろ!!
お前はロイじゃねぇ!
暴走して終わるな!!」
ユリウスは拳を震わせた。
(俺は……ロイにはならない……!
俺は……俺の選び方をする……!)
ユリウスが深呼吸し、
力を絞り、暴走の勢いを抑え始める。
それでも兵器は迫ってくる。
ジャスパーは銃を構えた。
「ユリウス、前は任せろ!
後ろと民間人の被害は俺らが抑える!!
絶対に暴走するな!!」
ユリウスは、小さく、しかし強く頷いた。
◆5.第14章・終 ― 目醒めの痛み
ユリウスはゆっくり拳を構え、
覚醒した力を明確に制御しようと試みる。
(俺は……守るために戦うんだ
誰も……傷つけさせない)
目が澄み切った。
さっきまでの“暴走の光”ではなく、
強い意志の光。
ジャスパーはその背中を見て呟いた。
「……ロイにはできなかった“覚醒の制御”
ユリウス、お前なら……できるのかもしれないな」
兵器が一斉に突進してくる。
ユリウスは拳を握り直した。
「来い――今度は俺が選んだ力で止める!」
次の瞬間、
新たな衝突が夜空を照らした。




