第13章:鋼鉄の影、降り立つ
第13章:鋼鉄の影、降り立つ
広場に落ちた無人制圧兵器は、
地面を割るほどの重い音を立てて着地した。
金属の装甲が月光を反射し、
赤いセンサーが次々と点灯していく。
ジャスパーが息を呑む。
「……型番、見たことねぇ。
こんなの、まだどこにも出てないはずだろ……!」
“未知の兵器”。
それはつまり どこかの組織が極秘に武装化している証拠。
そして――その武装の照準は、よりによって“人々”に向いていた。
◆1.ユリウス、最前線へ
ユリウスは迷わなかった。
「ジャスパー、後ろを頼む!
ここで止めないと……街が壊れる!」
ジャスパーは舌打ちしながらも叫ぶ。
「分かってる! お前は前で暴れてろ!!
後ろは俺らが絶対に通さねぇ!」
ユリウスは兵器の正面に飛び込んだ。
センサーがユリウスを捕捉した瞬間、
機体の腕部から光学警告が走る。
――攻撃判定。
兵器が駆動音を上げ、ユリウスへ突進してくる。
ユリウスは拳を握り、地面を蹴った。
(ここで止める!)
金属と肉体が衝突し、
火花が散った。
衝撃は骨まで響いたが、ユリウスは踏みとどまる。
(痛い……! でも下がらない!)
彼の額から汗が流れ、肩が震える。
身体は限界を訴えている。
だが――それでも動いた。
◆2.群衆を守るための“痛み”
兵器の腕が横薙ぎに振られ、
空気を切り裂いた。
ユリウスはわずかに避けたが、
金属の爪が肩を掠めた。
シャツが裂け、赤い線が浮かぶ。
痛みが走る。
それでもユリウスは牙を食いしばった。
(誰かの血が流れるくらいなら――俺が流せばいい)
肩から落ちた血が地面を赤く染める。
ジャスパーが叫ぶ。
「無茶すんなユリウス! 身体が持たねぇ!!」
ユリウス:「分かってる……! でも止めるんだ!!」
次の攻撃を受ければ倒れる。
それでもユリウスは兵器の足元に滑り込み、
低い姿勢から一撃を叩き込む。
金属音が響き、機体が僅かにブレた。
(効いてる……!)
だが――
機体の背後に、さらに三機が降りてきた。
レミが青ざめる。
「なんで……こんな短時間にこんな数……!」
ジャスパーは歯を食いしばる。
「……これは偶然じゃねぇ。
誰かがユリウスを“排除対象”にしてる」
ユリウスは息を荒げながら立ち上がる。
(俺じゃなくても……市民が殺される)
身体は悲鳴を上げていた。
視界も揺れ始めている。
だが足は止まらなかった。
◆3.第三勢力の“声”
そのとき。
広場全体に、ノイズ混じりの音声が流れた。
『――識別完了。
対象コード:アーク09。』
ジャスパーが目を見開く。
「アーク……? なんだそれ……!」
兵器のセンサーがユリウスに集中する。
『優先排除対象。
行動阻害を開始する。』
ユリウスは拳を固く握った。
(……狙いは俺か)
しかし、音声は続く。
『民間人の被害は想定内。
排除作戦、続行。』
広場全体が凍りついた。
ジャスパーが怒りで声を震わせる。
「……“想定内”だと……!?
ふざけてんのか、こいつら!!」
ユリウスの視界が赤く染まる。
(ふざけるな……)
腰を落とし、全身に力を込める。
「俺が……止める!!」
彼は再び兵器へ突っ込んだ。
◆4.ユリウスの“変化”に気づく者
その頃、遠くの監視地点で2人の影が会話していた。
「動いたな。アーク09――“ユリウス”。」
「予測より動きが早い。
彼の進化……ロイの後を継いだ者は、やはり異質だな。」
「……だが壊れはしない。
ロイとは違う素体、違う精神構造。
“完成形の可能性”がある。」
画面には、血を流しながら戦うユリウスが映っていた。
「続けさせろ。
あの子は……もうこの計画には欠かせない。」
その声は、冷たくもどこか優しい響きを持っていた。
◆5.第13章・終 ― 決戦の幕開け
広場ではユリウスが、
肩を押さえながらも再び立ち上がっていた。
兵器は四機。
ユリウスは一人。
ジャスパーは叫ぶ。
「ユリウスッ!! 一旦退け!
お前の身体じゃ持たねぇ!!」
ユリウスは振り返らず、ただ前を見据える。
「逃げたら……誰が守るんだ!」
その背中を見て、ジャスパーの胸が締めつけられた。
(ロイ……お前が救いたかった未来に、
こいつは一歩踏み込んでる)
次の瞬間、四機の兵器が一斉に動き始めた。
金属の咆哮が、夜明け前の街に響いた。




