第12章:夜明け前の選択
第12章:夜明け前の選択
廃墟ビルの屋上。
夜明け前の薄青い光が、街の輪郭をゆっくりと浮かび上がらせていく。
ジャスパーとの対話を終えたユリウスは、
まだ冷たい風を胸いっぱいに吸い込んだ。
(ロイ……俺はあなたみたいには壊れない。
でも、あなたが見つけた“答えの途中”は継ぐ)
小さく拳を握る。
ユリウスの中で、ロイの“理念”が生きていた。
◆1.自由派と安全派の衝突が、ついに表面化する
その頃、街では状況が悪化していた。
自由派の一部は「政府への不信」を理由に武装化し、
安全派の一部も「暴動鎮圧」を掲げて過激行動が増えている。
その火種は都市全域に広がりつつあった。
屋上に駆け上がってきたレミ(ジャスパーと行動する少女)が叫ぶ。
「ユリウス! 下の広場、もう限界!
自由派と安全派が真正面からぶつかろうとしてる!」
ユリウスの視線が一気に鋭くなった。
(最悪だ……このままだと本当に誰かが――)
だがそのとき、ジャスパーが静かに言う。
「行く気だろ、ユリウス。
……だが勘違いするな。
お前一人で全部止められるほど、今の状況は小さくない」
ユリウス:「分かってる。でも行かない理由がない」
ジャスパーは目を伏せた。
「……ロイもそんな言い方をしてた」
その一言が胸に刺さる。
しかしユリウスは歯を食いしばり、はっきり言った。
「俺は壊れない。
“守り方”はロイとは違う」
ジャスパーの目に、かすかな微笑が浮かんだ。
◆2.群衆の中心へ ―ユリウスが踏み込む
広場に着くと、そこは混乱の渦だった。
自由派と安全派の主張が入り乱れ、押し合い、罵声が飛ぶ。
ドローン監視網は停止し、警察も後手に回っていた。
暴力に発展する寸前――
ユリウスはその中心に向けて走った。
「そこまでだ!!」
ユリウスの声が響く。
両派が一斉に振り向いた。
「なんだお前は!」
「どっちの味方だよ!」
「安全派か!? 自由派か!?」
ユリウスは叫び返した。
「どっちでもない!
俺は――“誰も見捨てない派”だ!」
一瞬、ざわめきが広がる。
◆3.ユリウスの言葉が、群衆を揺らす
ユリウスは続ける。
「自由を求めるのはいい。
安全を求めるのもいい。
でも、そのために人を傷つけたら……それは本当の正しさじゃない!」
少年の声とは思えないほど力強かった。
「ロイは――守ろうとして苦しんだ。
俺はその続きをやる。
違うやり方で、同じ未来を目指す」
自由派も安全派も沈黙する。
その沈黙の中、ユリウスの言葉だけが広場に届いていく。
「……誰もが、ちゃんと大切にされる世界。
成果とか、立場とか関係なく。
そのために戦ってるんだ!」
その目はまっすぐだった。
ジャスパーが驚いたように呟く。
「……ロイとは違う。
でも確かに、ロイの“核心”を継いでる」
◆4.しかし、黒幕が動き始める
そのとき――
広場の上空で、何かが光った。
ジャスパーが叫ぶ。
「ユリウス! 伏せろ!!」
次の瞬間、
空から複数の黒い影が滑り落ちてきた。
無人制圧兵器――
民間兵器会社の、テスト段階のモデルだ。
どちらの派閥も制御していない。
つまり、第三勢力が動き始めた。
ユリウスは歯を食いしばった。
(まだ終わらせない……ここからが始まりだ!)
◆5.第12章・終 ― 夜明けの前、もっとも暗い影
兵器が広場に降り立ち、
群衆は悲鳴を上げて散り始める。
ジャスパーの声が飛ぶ。
「ユリウス!
お前が前に出ろ!
俺たちが後ろを守る!」
ユリウスは頷く。
恐怖よりも前に、
胸に灯る光があった。
(誰も……傷つけない)
それがロイから受け継いだ唯一の理念。
そしてユリウス自身の誓いでもあった。
夜明け前――
広場に、ユリウスの影が長く伸びた。
第12章 完




