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WHY?  作者: ハル


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第5章:軋む身体、裂かれる理念

第5章:軋む身体、裂かれる理念

夜の街を切り裂くように、ドローンのサーチライトが走った。

甲高い羽音が重なるたび、どこかで人々の悲鳴が混ざる。

ユリウスはビルの陰に身を滑り込ませ、肩で荒い息をつく。

(……まずい。体が重い)

数時間前から続く巡回と衝突の連続。

腕も脚もじんじんと痛み、動かすたびに反発するように震えた。

しかし足を止めれば、その瞬間にどこかで誰かが倒れる。

「守る……ロイがやろうとしたみたいに。俺も……」

その呟きが、自分をかろうじて支えていた。

正面の路地が急に明るくなる。

白い光がユリウスの影を長く引き伸ばした。

「認証不能個体を確認。排除プロトコル――」

ドローンの無機質な声。

次の瞬間、金属音を伴って複数の光弾が発射される。

ユリウスは跳ねるように横へ転がった。

石畳に肩をぶつけた瞬間、鋭い痛みが腕を走る。

「……っ!」

身体が悲鳴を上げる。それでも立つ。

ロイの背中を思い出す。

壊れそうな身体でも、ただ前に出続けた姿。

(あんなふうに……俺もできる)

ユリウスは腰のナイフを逆手に構え、ドローンへ向かって走った。

ドローンは一斉に旋回し、光が重なる。

眩しさに視界が薄れかけた瞬間、ユリウスは目を細めて踏み込む。

跳んだ。

一機の下部に着地し、回転する羽の隙間に刃を滑り込ませる。

「……落ちろ!」

機体が火花を散らして落下する。

しかし着地したユリウスの膝が、崩れるように地面へ沈んだ。

(痛い……限界近い……でも)

彼は歯を食いしばり、無理やり立ち上がる。

(ロイも、きっとこんな痛みを抱えながら……守ろうとしたんだ)

そのとき、周囲を取り囲むように影が現れた。

自由派――暴走するドローン停止に反対する一部の過激派。

「ユリウス、やりすぎだ。安全最優先? そんなのロイが望んだ未来じゃない!」

「ロイは……守ったんだ。泣いてる人を、苦しんでる人を。

 だから俺は――それを継ぐだけだ!」

声が震えていた。

怒りでも高揚でもなく、痛みによる震え。

自由派の一人が叫んだ。

「お前のやり方はロイの劣化コピーだ!

 本当にロイを理解してない!」

ユリウスは一瞬だけ言葉を失った。

胸の奥に刺さる。

ロイは本当にこう望んだのか?

継ごうとしているのは、ただの憧れなのか?

迷いが一瞬、視界を揺らす。

その隙を突くように、ドローンの残り3機が一斉に光弾を放った。

「――ッ!」

ユリウスは咄嗟に腕を上げ、衝撃に耐える。

皮膚をかすめた光線で、血がにじむ。

(痛い……でも、止まれない!)

ユリウスは再び走る。

身体の限界を無視し、燃えるような痛みを抱えたまま。

(誰かが泣くなら……俺が動けばいい!

 守れなかったロイの分まで、俺が――!)

ドローンへ向かって跳び込む姿は、

かつてのロイと重なるようで、どこか違っていた。

ロイは壊れていった。

ユリウスは、壊れる前に立ち止まれるのか。

それとも――

ロイという“亡霊の理想”に飲まれていくのか。

夜の闇は何も答えなかった。

ただ、戦いの光がチカチカと瞬くだけだった。

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