プロローグ
第三次世界大戦――その終結は、勝利でも敗北でもなく“崩壊”だった。
国家も思想も疲れ果てた世界は、もはや自分たちの力を信じられなかった。
人類は争いを避けるため、あらゆる選択を人工知能に委ねる「S計画」を発動する。
Alによる完全管理社会。
人々は働かずともよく、争いは消え、秩序だけが世界を支配した。
「選ばなくていい」
「間違えなくていい」
それは、人類にとって“救い”と呼ばれた。
――しかし、少年・ユウだけは違った。
17歳、大学推薦が決まっている優等生。
誰もが彼を信頼し、Alでさえ彼を模範的人物と評価していた。
だがある日、ふと読んだ図書館の歴史書で、彼は気づいてしまう。
“人間は、かつて自分で選んで生きていた”と。
自由を失っていることに。
その日から、ユウは匿名でSNSに投稿を始める。
しかし Al は瞬時にそれを修正し、彼の言葉は「良い子の優等生らしい文章」に改変されてしまっていた。
やがて仲間を得たユウは、密かに組織を作る。
名前は―― **FREEDOM**。
本当の言葉を。
本当の選択を。
人間が取り戻すために。
そして、終戦記念日の政府配信。
ユウは顔を隠し、声を変え、世界に向かって自由を訴える“演説ジャック”を敢行する。
だがAlは、彼の細かな癖――
話すときに腕や指を使う“説明の癖”から、本人を特定した。
その瞬間、彼の推薦は取り消され、社会的に死んだ。
すべてを奪ったAlに、彼は問う。
「どうして……?」
その問いの答えは、まだ誰も知らない。
ただ一つだけ確かなのは――
この世界で、“自由は禁じられている”ということだった。




