僕と彼女の距離
小説を読もうでずっと小説を読んでいた時に憧れてた、現代恋愛を書きました。
小川瑞希はクラスの中でとても目立つ存在だ、クラスメートがあいさつする。
「おはよう~今日も可愛いね瑞希ちゃん」
「おはよう!そんな~環奈の方がかわいいよ~」
「いやいや、瑞希の前だと自分が霞むわ」
「そんなことないよ、葵の方がかわいいよ~」
瑞希を中心にクラスの女子たちが集まっている。
瑞希はどこかのんびりとした様子が、このクラス女子の中で人気らしい。
⋯それにしても、近すぎないか?もう少し離れてもいいんじゃないだろうか?
また男子にも好印象である。
「小川さんちょっとわからない授業でわからないとこがあってさ、教えてくれない?」
「いいよ~どこどこ--ああそれね、こうすれば~わかりやすいよ!」
「ありがとう、助かるよ、全然わからなかったからさ何時もごめんな」
「気にしないで~、困ったらいつでも聞いてね~」
また、大木が瑞希に話しかけている、お互いニコニコして和やかな雰囲気だ。
⋯目の前にまだ先生が居るから直接聞きに行けばいいのに。
クラスの外でも人気のようだ、彼女に声をかけるやつ、彼女を見て声援をあげる人たち。
それに手を振って応える瑞希、それを見て喜ぶ人たち
⋯アイドルなのか?一般人だぞ、あいつは。
いつも、ニコニコして親切な彼女はこの学校の人気者である。
実際彼女の周りにいる人たちはそれを実感しているだろう⋯僕を除いて。
僕の名前は田中 拓海、成績もルックスも平凡な高校生である。
クラスで目立つ訳はなく、かと言って浮いている訳でもない、
高校入学を期に親から条件付きで実家を離れて暮らしている。
一言で言うと何の取り柄も無いつまらないやつだ。
学校が終わりバイトへ向かう⋯これは実家を出る条件のひとつだ、
頼まれた作業をこなすだけ⋯まあ自分でこのバイトを選んだのだから文句はない。
特に問題なくバイトが終わり、賃貸に帰る。空はもう暗くなっていた。
到着して、鍵を開けて中に入る、そして前を見ると⋯
「おかえりなさい、拓海」
廊下に学生服にエプロンをかけた、無表情の女性⋯小川瑞希が立っていた。
親に出されたもうひとつの条件、それは彼女との同居だった。
瑞希とは家族ぐるみで幼稚園前から今までずっと、一緒だ。
もちろん反対したが、だったら実家にいなさいと言われ仕方なく従うしかなかった、
⋯こいつがいたら実家を離れても意味ないのに。
机に料理が置かれる、さすがクラスの人気者のイメージ通り、美味しそうな料理が並んでいた。
こんなに美味しい、料理をつくって貰う事が出来るなんて幸せ者だろう。
学校のやつらが見たらかわってくれと言うだろう⋯喜んでかわってやるよ。
向かいあって座った彼女の顔を見る、その表情は無表情でなんのリアクションもない。
⋯いつもこうだ。これは今に始まった事ではない、おぼえている限りずっと僕に対してはこうである。
「おはよう!瑞希ちゃん今日もかわいいね」
「はい、そうですか」
「瑞稀ちゃんは料理作るのうまいね、将来立派なお嫁さんになれるよ!」
「そうですか」
「瑞希~勉強難しくてわからないよ~教えて!」
「はい、かしこまりました」
「わぁ!すごい!全然わからなかっったから助かったよ~ありがとう、瑞稀」
「そうですか」
「瑞希はいいのか?俺なんかと同居なんて、おかしいだろう、なんで親に説得しないんだ!」
「はい」
「いや⋯はいじゃなくてさ~もっとなんか言ってよ」
「そうですね」
「はぁ~もういいよ⋯どうなってもしらないからね」
「そうですか」
ぼんやり過去の事を思い出してしまった。 毎回自分が騒いでいるだけに見えて恥ずかしいのだ。
すると瑞希が聞いて来た。
「どうかしましたか」
「なんでもない、それより、今日も美味しいな~瑞希料理の腕上げた?」
「そうですか」
僕がなにか言っても特にリアクションがない、複雑な気持ちだ。
ずっと僕たちはこんな関係なんだろうか⋯そう思っていた。
「ついに大木が瑞希に告白するらしいよ」
「あの、二人いい感じだったからこのまま付き合うかもね!」
「俺の瑞希ちゃんが彼持ちになるのか⋯まぁ関係なく推すけど」
「おいおい、いつからあんたの瑞希になったのよ、私のよ!」
クラスの中が騒がしい⋯いや何時もあいつらは騒がしいな。
嫌でも耳に入ってくる話題に、別の事を考えることで意識をずらす。気にしない、気になんてしていない。
授業が終わりバイトへ行き働く、終わる。賃貸に向かって歩く。あいだの事なんて覚えていない。
ふと公園のベンチが目に入り、そこに腰かける。
考えもしなかった、そうかあいつ彼氏できたのか⋯そうだよな僕よりも大木の方がいいからな。
そんな事を考えていたら時間がかなり進んでいるのだが、どうしても、帰る気にならなかった。
帰って瑞希にどんな顔をすれば良いのかわからない。 彼氏が出来るなら僕は?
そんな事ばかり考えていた。
さすがに長時間ベンチにうずくまっている自分に嫌気がさし帰路につく。
もう、こんな時間だからあいつは寝ているだろう。と玄関のドアを開けて⋯僕は驚きかたまった。
「おかえりなさい拓海」
彼女は何時もどうりの表情で、そこにいて、声をかけて来たのだ。
机に料理が置かれてる、どうやら瑞希もご飯を食べるようだ。僕は瑞希に問いかける。
「まだ、食べてなかったの?こんな深夜なのに?」
「はい」
「明日も学校だよ!、こんな時間まで起きてたら、明日に響くよ⋯って僕もか~」
「そうですね」
「でも君は学校の人気者だし、疲れた顔出すのはよくないんじゃないかな~」
「そうですか」
「それに君は彼氏が出来たんだ!僕のせいで迷惑をかけられないよ~ねぇ!」
「?」
おかしい、話しが噛み合わない⋯いや何時も噛み合ってないのだが。今日は特に強くそれを感じる。
「お前が付き合ったんだって~クラスで話題になってたぞ!」
「わかりません」
「わからない? ほら大木だよ~クラスメイトの! 付き合ったんだよね?」
「いいえ」
「え!なんで付き合ってないの?二人ともお似合いじゃん、仲良く話してるのみてるよ~」
「そんなことより、おはなしがあります」
彼氏が出来た事を否定した瑞希⋯別に安心したわけではないけど、何故かほっとする自分であった。
それよりも話しがあるとはいったいなんだろう。
「拓海、今度遅くなる時は連絡を入れてください。私も予定があるので、廊下で立ち待っているのは辛いです」
「いや別に、毎回廊下で立たなくても~のんびりしていればいいんだよ~ほら!学校で疲れてるだろうからね!」
「拓海」
「え!何~そんなにこっちをみて⋯わかったよ。その今日はごめんね、誤解してね~。これからもよろしく!」
「はい」
やっぱり僕には彼女との距離がわからない。
学校での瑞希の話し方は、完全に拓海の話し方を真似しています。