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社長業務代行社員の受け入れ

これは・・・新垣さん、お久しぶりです。


「社長、これからは新垣、と呼びすてでお願いします」


そうなります・・・よね。肚をくくってそう呼ぶことにします。


「よろしくお願いいたします」


           ・・・


叔父からのアドバイスに従って、業務としての社長を、誰かに委託することにした。

その事務方トップを親類、家の傘の下にはいるものの、それほど出世していない?現役会社員で管理職の人間から選ぶため、履歴書、職務経歴書を何十通か受けとった。


知っている人も居れば、まったく知らない人も多い。


正直、ズバり、という適任者は居ないが、まあ、この人なら一応任せられそう、という人を5人ピックアップして、徹底的に背景やら今までの行動なんかを探らせた・・・例の公安ラインも利用した・・・案外役に立つもんだな、というレポートも得られた。


そこで二人が切られ、残りは三人だ。この三人は結局知り合いばかりだった。まあ、イトコ、ハトコという関係性で、それこそ子供のころから、正月の親族会では見ている連中だ。

三男と言っても次男との差がほぼ二十歳ある俺からすれば、○○兄さんと、呼んでいたような人達だ。


「おとなしい人」という印象の人ばかりで、レポートから言っても、正直で真面目で、そのせいで血筋はいいのに系列会社でもそれほど出世・・・少なくとも職階は上がっていない、という人だけが残った。


で、こういう時、俺はそれなりに理性的に考えようとする。但し、アイツの天性の勘というべきものは・・・理性的とは別に、何と言ったらいいか分からないが、説得力のある何かがある。


それだけではなく、現体制とうまくやれなければこの会社の社長は勤まらないので、清水さんやガンさん、開発部のコアメンバー・・・國本さんとアレックス船長含む・・・にも『実質的』に面接には参加してもらうことにした。


実は切られた二名にも面接は実施した。やはり切るべきだったかどうかの確認、公安のレポートの信憑性も兼ねて、という側面もあるが、対比を出したいという狙いがあったのも事実だ。


全員一次面接、という形で呼びだしたが、面接は神崎に実施させた。神崎も正直で真面目、良くも悪くも裏表の無いやつだ。今では神崎も一介の課員ではなく、総務部第一課の課長だ。

単に持ち上がりというのが正直なところだが、何だかんだで色々な案件に関わり、開発部とも結構関わっている。

体は大きく、力も一般人としては有るほうだがマッチョマンというわけでもなく、見た目の若造感も抜けていない。


つまり、今回の候補者からすると、それなりの経験者の自分の面接をこんな若造にやらせるのか感が強い面接官とも言える。


ちょっと意地悪な気もするが、その程度は受け流してもらえる人でないと任せられない。なんせ、俺も清水さんも開発部のメンバーも、今回の候補者よりは年下だし、清水さんは普通に、開発部は実年齢より言動が若い。

彼等を称して幼いと言う大人もいるだろうが、大学からの関係性でそうなっている。

善し悪しの両面があるが、悪いほうを抑制する手段はもう分かっているので、今はメリットしかないということになっている。


その結果、公安情報を含めた裏取りレポートは概ね正しい・・・すくなくとも今回は・・・ということは証明された。


それと、書類ではハネなかった一名も、ちょっと自尊心高すぎだな、というのがあり、これも全会一致的に排除が確定した。


全会一致と言ってるのは上記の面接参加者のことだ。

なお、実質的に面接に参加といっても全員が同時に見ていたわけじゃない。

正直、俺も録画を倍速再生で見ている。


真面目で不器用な神崎はまったく同じような・・・完全一致ではないが、びっくりするほど同じ流れにしていた・・・面接を五名とこなし、いい映像を撮ってくれた。

名前や現在の所属は映像からカットされていて、バラバラな大文字アルファベット一文字で候補者を表現しているが、残ったのはRさんとCさんだった。


           ・・・


最終決定をしたいと思う。清水さん、どっちがいい?


「どっちかで言えばCさんです。Rさんが悪いってわけじゃないんですけど、なんとなくでは失礼ですかね?」


特にそんなことはない。ガンさんは?


「オレもどちらかで言えばCさんかな・・・Rのほうはちょっと作ってる感があるんだよな。まあ退職まで作り通せば問題ないが」


なるほど・・・俺はそれほど感じなかったな。アレックスはどうかな?


「正直、お二人にように日本人の雰囲気まではまだ理解できてません。同等に思えますが・・・ちょっとお二人とも大人しすぎる気もします」


そうかもしれないな。國本くんは?


「私もどちらでもいいかなって感じです。どっちか無理に選べって言われたら、顔でCさんかなぁ・・・くらいです」


顔か・・・まあ、表情は表現を含めた顔を含む全体の雰囲気ということであればコンプライアンス的にはセーフだが、発言には気をつけたほうがいいかな、と思わざるを得ない発言だったぞ?


「あ、そうでした。ごめんなさい。雰囲気でってことでお願いします。でも、Rさんでも問題ないとは思います。どうしてもどっちかって言われた場合だけです」


他の開発部からは何かあるか?沖永とかもタマには発言したらどうだ?


「オレですか?・・・ほぼ國本さんと雰囲気含めて同意見です。布施さんは?」

「・・・同じだなぁ・・・部長としてそれでいいのか、は、あるけどさ。メッキーは?」

「だからメッキーはヤメレ! でも同じ。たぶん開発部的にはそんなかんじかな。どうしてもっていうなら、開発部内でRとCの二択で投票システム組むけど・・・Cが勝つんだろうなって感覚はあるよ」


それはどの程度の比率なんだ、1:2なのか1:9なのか?


「アタシの感覚でよければ40:60(ヨンマルロクマル)25:75(ニーゴーナナゴー)でCさん勝ちかな?」

「そんな感じ」「こっちも」「そうです」「そう思います」

「つーわけなんで、実際にはみんなCに投票しちゃうんじゃないかな」


なるほど・・・つまり仮に投票システム組んで全員Cさんだったとしても圧勝じゃなくて僅差の可能性があるということか。

聞いてるか?CTO ?


「聞いてる。お前ら僅差みたいだが、オレは圧倒的にCさんだな。裏切る可能性がRさんとは比べものにならない。まあ、勘なんで根拠は貧弱なんだがな」


お前の勘は信じるけど、根拠が貧弱ってのはいただけないな・・・


「一応、声紋解析掛けたんだけど、Rのほうはこのあたりが怪しい。Cのほうは怪しさが薄い。二人とも自信の無さ的なパラメータはあるけど、この『はい』は自信の無さだけでなくて違う意味がありそうだ」


そのデータを送ってくれよ。いつの間にそんなことしてたんだよ!


「そーですよ、CTO 。それがあれば船長もアタシも、部長も姫ちゃんも自信を持って言えたかもしれないのに。あっ・・・沖永くんもね」


「付け足してくれてありがとう。船舶部長。そう言えば部員育成のほうはどうなってるの?」


それは俺から言おう。海上自衛隊の退職者6名、内1名が女性だ。あと商船会社からの海技士転職で女性2名、海技士の女性転職者で候補者何名か、あとは大学や高専に募集は掛けている。


「えっ!! 最近多いとはいえ、商船大学なんて多くて1~2割、大手は女性海技士も増えてるとは聞いてるけど・・・一割なんていないでしょ?よく捕まえたね、社長」


まあな。使えるモノはツテでもなんでも使ってる。今回の候補者もだけどな。

元自衛官は使い辛いか?アレックス?


「まあ、軍隊式と言えばそうですが、ハードワークを求められすぎて恐縮する感じですね。そこまで頑張らなくていいよって言います。あと用語が違いますね」


そこは民間に合わせてもらえ。仕事なんだから。


「はい。そうであれば・・・それ以外に彼等に特に問題はありません」


「おー、データ読めたよ・・・確かにちょっと怪しく思えるね・・・うーん。もっと事前にもらわないと詳しい解析は無理だよ・・・布施?」

「メッキーの言う通り。CTO 、早めに欲しかったな」「だからメッキー言うな」


まあ、俺の腹案もCさんだったから、全会一致ということでいいな?


「OK」「大丈夫です」「やっぱそっちだよな」「了解です」「承知って言わないと上司に対する返事としては不適切じゃなかったっけ?」「ほら、船は了解でいいんじゃない?」「ともかく問題ないと思います」


           ・・・


というわけで、新垣、やっぱちょっと慣れないな・・・君の立場について話し合いをしたい。やってもらうことは、社長がやるべき事務的作業のほぼ全てだ。


「社長、社長の叔父の彼からは、社長が、CEO、私がCOO、そういう感じで話が来ておりましたが、神崎さんともお話をして、私が総務部長で役員、という形がよいのでは、と思っております」


うーん・・・内部では新垣さんと呼びますよ。よその組織と話をするときには新垣さんのことを新垣、と、呼び捨てで呼びますし、敬語の差を付けますが、内部のときは普通に新垣さんと呼びます。ガンさんなんかもそうしてますから。


「ああ、建設会社の社長さんですね。分かりました。では、それでお願いします。こちらからは常に敬語でいきますのでよろしくお願いいたします」


はい。よろしく。で、総務部長というのは?


「はい。今の総務部長は清水執行役員が兼任ですが、社長と共に事務作業上のボトルネックになってしまっています」


はい。私もね。実感しているし、どうにかしないといけないと思っているので新垣さんに来てもらったわけです。


「清水さんは大変優秀な方だと思いますし、社長が引き上げたのも内縁関係とかまったく無いころだったことも知ってます。しかし、やっかみ含めて色々と彼女には負担が掛かっているのも事実です」


信じてもらわなくてもいいですが、その辺の周囲からのガードも含めて私のほうで引き受けることにしたんです。


「いえ、信じます。しかし内縁とは考えたものですね。正式に妻にするとなれば社長は三男とは言え、本家のほうが色々と煩い。愛人扱いでは法的な保護がない。逆転の一手までは行かないかもしれませんがいい手だったと思います」


言い出したのは彼女のほうです。一切入れ知恵はしてません。


「ほう・・・それは・・・彼女ほど優秀ならそれを考えても不思議はないですね。やはり学歴だけでは人の能力は判断できないということです・・・が、残念ながら経験不足です」


それはどういう意味ですか?


「どうもこうもない。彼女が新卒から何年か見ていた総務部長は中小企業の総務部長で、今の巨大コングロマリットの総務部長ではありません。マネをするにも手本がなかったんですよ。それなのにここまで出来ているのは本当にすごいことだと思います」


確かにそうですね。・・・私の責任も大きいと思います。


「申し訳ありませんがその通りです。ちょっと耳の痛い指摘をさせていただきます」


まあ、山ほど自覚がありますが・・・お手柔にお願いします。

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