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なんなんだこの会社・・・②

引き続き双葉です。


母港とやらに到着して、バウランプが降り、予告通り、見たことのあるパワードスーツが二体近付いてきました。


我々は全裸、彼女は一応妊婦の可能性があるので全裸にバスタオルを巻いてますが、いつでも全裸になれる格好で二体を出迎えました。

ルーム、隔離部屋の入口はゴンドラの入口みたいなものなので、アクリルですが、窓があります。


「君達が降伏するという双葉総吉・聡子夫妻でいいのかな?しかし全裸なのか?ちょっとは隠してほしーな?」


また女性です。女性が来るとは思わなかったので全裸でしたが、確かに管理職が女性なのは珍しくないと部長も言ってましたし、それだとセクハラになるのか?とちょっと固まっていましたが、一応、言いました。


陸上部隊は我々が投降すると言ったことが原因で超過勤務になった可能性があると伺ったので、万が一にも抵抗することはないですよ、という意思表明です。


「あいつ・・・そんなこと言わなくていいのに。まーいーよ。ムカついたのはこっちに仕事を全部振ってよこした船上組にであって、あんたらじゃないから。まー、降伏の意思というなら、・・・そっちの妊婦さん?もしくは可能性だけ?」


可能性の段階ですね。市販の妊娠検査薬らしいので。


「なるほど、バスタオルってことは、全裸でその場で一周するくらいのことはする?こっちも別に見たいわけじゃないけど、一応録画はするよ。別に公開予定はないから安心して?」


分かりました。さとこさん、タオル外して立って。


「はい」


では、二人でゆっくり一周します。


「じーーーー」


擬音を自分の口で発生させるのはどうなんでしょう。


「まあいいじゃん。特に隠したりはしていないね?」


はい。現金も含めて一旦、このハウスの外に全て出しましたし、目録も付けました。といっても大したものはないですが。


「うん。メモパッドもボールペンも外にあるね。中にいる、あるのは君達とバスタオル一枚だけかい?」


はい・・・あー、いいえ、冷蔵庫の中の冷食とレトルトや水のボトルがあります。これは目録にも書いてないですね・・・漏れてました。


「ひっかけ問題じゃないから。メシや水はちゃんと提供しないと捕虜の扱いが国際法に準じてないから、それはいいよ」


では、我々とタオル一枚のみです。


「じゃあ、服着てくれ。タグは切ったと思うけど切り忘れがあったら教えてくれ。パンツや下着も含め全部新品だ。まあ、そのヘンで買ってきただけだけどね」


そう言うと、ドアが開けられ、パワードスーツから出ているサブアーム?が紙袋を無造作に投げ込んできました。


「それ、どうやって操縦してるんですか?さっきも総吉と議論したんですが、メインの腕にしろそのサブの腕にしろ、結構なパワーがあるのに繊細な力の使い方もできますよね」


「企業秘密。ってほどでもないか。変態的天才エンジニアがウチにはいて、あまり考えなくてもそのへんはフルオートなんだよ」


さっきの部長さんも操縦が巧みでしたけど・・・大学時代にちょっとカジった程度ですが、そのパワーと重さがあるロボットがしゃがんだり立ったりできる時点でトンデモな技術ですし、動力源がわからなすぎなんですが。


「元は工学部機械工学科だっけ?まあ、双葉さんとしては違うけど。それも企業秘密。秘密の多い会社なんよ」


総吉こと私も理系ですし、海外放浪中には自動車整備工として働いたこともありますから、多少はわかりますよ。大学中は失言でした。気をつけます。


「そーしてちょーだい。服来たら軍手して靴下も履いて、外に出した荷物を全部中に入れてちょーだい?」


え、どういういことですか?別にして調べたりしないんですか?


「運ぶ都合。面倒なんよ。で、さっきスキャンしたけど、目録のウチ、カッターナイフの刃四分の一程度ってのは拘束されたときの脱出用?それ以外は全部中に入れてちょーだい?」


カッターナイフの刃は?


「床に放置でいいよ。全般検査で綺麗にする予定だし。留置施設も作んなきゃだしね」


お手数お掛けしたようで恐縮です。


「まあ、いずれ必要な設備さー。いつかは作るのが先日になっただけ。まあ、今君達が乗ってるのは仮設も仮設だけどね。逃げようとは思わなかった?」


無理ですよ・・・今も、船に搭載されていると思うんですが、酢酸を目や鼻、口に吹き付けるドローンですか?あれのせいで、エンジンが回った状態で船から落とされましたからね・・・あの妨害船はもう太平洋の藻屑でしょう。


それに、機密区画・・・そもそもロールオンエリアから中に入れませんでしたし、バウランプの先端に隙間があったとしてもそこから出られるかどうかは賭けすぎます。あと、船速が速いですからもしかして沖のほうまでわざと迂回していたら、と思うと降参したままのほうが楽でした。彼女も風邪引いてましたし。


「えーと、君からみて、こっちの船に乗っているうちの社員の・・・彼女は君にどう呼ばせているの?」


部長、または船舶部長です。基本的に船長は別にいらっしゃるのと、他の部長さんはこの船にはいないみたいなので部長と呼んでますが・・・問題ありますか?


「無いよ。確かに彼女は部長で間違いない。こっちはもう一台のほうに無口な部長が乗ってるけどね。私は副部長」


そうなると部長だけでは区別がつかなくなりますね。船舶部長と呼びます。そちらは何部なんですか。


「開発部。なんで、開発部長と開発副部長と呼んでくれればいいよ?いまは副部長でもいいけど。かぶんないから」


では、開発副部長、よろしくお願いいたします。


「はい、よろしく。短い間だと思うけど」


承知しました。しかし、皆さん管理職なのに現場仕事なんですね。


「まあね。大学のノリのまま仕事にしちゃったからさー。部長だなんだなんて言ってても自分でコード書いたりこういうおもちゃを組み立てたりが好きなままなんよ」


AIなんかも使ってるんですか?


「もはやAIは使ってないほうが不思議だよ。当然使っている。万能でもなんでもない便利な電卓みたいな道具って感じだけどね」


そういうものなんですね。この船も相当に自動化されていて、それでいて・・・異常に高速な貨物船だってことはわかりますけど・・・


「船は詳しくないんだけど、貨物船って普通どれくらいで走るの?」


うーん。マックスで15kt、普通は12か13ktだと思います。


「でたよノット!わかんないから時速何キロか、秒速何メートルかで教えてくんない?」


えーと、時速でなら・・・ちょっと不正確ですが、マックスで28km、通常で24kmくらいでしょうか?


「そうすると、1.8よりは大きいけど 2よりは1.8のほうが近いって感じかな」


1.852だからその通りですね。


「マイルとも違うんだね」


まあ、(おか)マイルと(うみ)マイル、そもそも日本語では海マイルのことを海里(かいり)と言いますから・・・


「へー。じゃあ50ktって船としては速いんだね」


50ですか!?速いなんてもんじゃないですよ・・・軍艦でも相当の快速艇ですし・・・たぶんウォータージェット推進で水中フィンを出すようなかなり特殊な船です。それこそ特殊部隊が使うような感じの。


「その子、本気になれば出せるらしいよ?」


マジですか!?それは・・・脱走しなくてよかったです。海面に叩き付けられたら、それだけで命が危ないです・・・

カッターナイフの破片を除いて積み終わりました。


「しゃべりながらでも手は動くんだね。いいね」


まあ、はい。


「じゃ、乗って?」


え?


「そのハウスごと回収するんで。あまり乗り心地よくないかもしれないけど数分だからガマンしてね?電源ライン外すから、エアコンは止まるけど、照明はバッテリで持つから」


ああ、仮設の監獄代用であった「ハウス」を持っていくということですね。

しかし・・・陸地では我々はどこに収容されるのでしょうか?


「まあ、ほぼハウスと一緒の入れ物。今度は飛んでもらう」


はい?飛ぶ?


「そう。その時にこっちで渡した書類とか、新生活に必要なものは持ってってもらうから分けといて。前のサイフとか、身分証明書とかポイントカード的なものとか、そういう足のつきそうなものは全て置いてって。現金は全額自分で持ってっていいけど、サイフ的なものの現金以外の全ては捨てて。書いてもらった目録もメモパッドから切り離して置いてって。ペンとメモパッド自体は持っていったほうがいいと思うけど」


おっしゃることは理解できます。


「紙袋の中にいかにもサラリーマンが持ってそうなリュック兼用のバッグや黒いサイフ、女子が持ってそうなリュックやサイフ、靴なんかも入っているから、次にハウスを降りるときには靴を履いてね。あとは適当に使って」


まあ、存在していることは把握してましたが・・・やはりそういうことですね。


「そういうこと」


飛ぶ、というのがまだ理解できてませんが。


「行けば分かる、ふ・・・部長、前よろしく」


「はいよ」


男性の声がしたかと思うと、前と後ろにパワードスーツが立ち、前からはサブアームが4本、後ろからはメインアーム2本とサブアーム2本がルームというかゴンドラを掴み、持ち上げられました。


「じゃ、行くよ」


はい。承知しました。これだと乗り心地というか・・・


「時代劇の駕籠だね。お殿様気分でも味わって」


まあ、護送駕籠ですけどね。おお、揺れますが・・・まあ、数分なら大丈夫でしょう。


「頼んだよ」


           ・・・


行けば分かるは本当でした。先ほどまで住居としていた仮設のルームとまったく同じゴンドラが、こちらは明らかに旅客運送機な形で鎮座してたからです。


違うのは上。何も無かったルームに比べれば明らかに飛べそうです。6ローターのドローンにしか見えませんから。つまり、飛行ユニットがゴンドラ上部に着いています。


「じゃあ、乗り換えて。短い間だったけど、あっちでも元気にやってね」


本当に短い間でしたね・・・これは・・・ドローン的な何かですよね?我々ドローンの操縦はおもちゃみたいなものをちょっと飛ばしたことがある程度なんですが・・・


「全自動だから乗るだけだよ?」


無人操縦ですか?


「そう。無人操縦旅客ドローン。あたしたちもよく乗ってる信頼と実績の輸送手段よ?」


今から乗るんですか?日没後ですが・・・


「うん。そうなるようにあっち、輸送船には調節してもらった」


選択肢ない感じですね。荷物を積み替えて、ドローン側に移ります。


           ・・・


じゃあ、乗りますね。このドアは自動ですか?


「うん。自動で閉まる。あと、これ。入社確定したみたいなんで、入社祝金。30万円入ってる。二人とも入社おめでとう!」


そう言うと、サブアームが伸びてきて、手提げ袋を渡してくれました。

それくらい入っていそうな封筒が二つ入っています。


「え?あたしのもあるんですか?」


「そりゃ、二人とも入社確定だもん。あと今月の給料はほんのちょっぴりだから、すぐ無くなっちゃうと思うけど」


まあ、手持ち現金は二人分合算してやっと10万円あるかどうかですから・・・


「服だって一組じゃ足りないし、あっと言うまだよね。そんなんじゃ」


いえいえ。いただけるだけありがたいです。ああ、これで車の免許も取るんですか?


「ん?会社提携のところなら会社の補助も出るし、一旦は会社に付けといて一年くらい掛けて払えばいいはずだよ?それより、あっちはエンジンかモーター付きがないと死ぬらしいから原付取ってね。それまでは電チャリが社宅にあるって聞いてるからそれでがんばって」


社宅ですか・・・いきなりですね。こんなので飛んでって大丈夫ですか?


「ウチの社宅ならwww。まあ元廃校らしいから、グラウンドあるし、降りるのは大丈夫なはず」


多分、違法な気がします・・・


「多分、Hの周りに○書いてあって、ヘリポートの届出も無理矢理取ってあるから大丈夫」


元廃校が社宅、寮的な存在ですか。


まあ、今の耐震基準的には微妙でもそれなりの耐震建築でしょうし、部屋も多そうですから・・・台所とかお風呂はどうでしょう?


「共通だと思うよ。もしかしてタトゥとかある感じ?」


二人ともないです。まあ、がんばって打ち解けますよ。でも夜に到着して皆さんにご迷惑じゃないでしょうか?


「もしかしたら歓迎会準備されてるかもよ?」


う・・・設定を目一杯覚え直しておきます。

「私もがんばるよ・・・」


「じゃ、そろそろ飛ぶはずだから離れるね」


彼女、正確には彼女のパワードスーツの外部スピーカーから聞こえる声、がそう言うのと同時に出入口のドアが閉まり、ドローンは静かに飛びはじめた。


さとこさん、とんでもない会社に入ってしまったみたいですね。


「なんか、世間ってこんなに進んでましたっけ?」


多分ですが・・・違うと思います。


「やっぱそうですよね。会話自体は普通なのに技術がとんでもないです・・・」


私もそう思っています。

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