投降者の受け入れ体勢を考える
やれやれ・・・社長も無茶を投げてくれるもんだ。
アレックスです。
まあ、船長なんて仕事は調停やら面倒事の裁決も仕事のうちだってことはわかってますけどね。
かなり無茶な提案であることは事実だと思いますが・・・やるしかないか。
ゆり子さんがリモート操縦してくれた、既存中型機のキャビンを改修した客室は見事に到着しました。
とんでもないスピードだったですよ?。モニタ上で見ていて大丈夫か?と思うような速度。まあ、単発のプロペラ機でも出る速度といえばそうなんですけどね。
もう、「ドローン」という速度域じゃないですね。
「設計上はまだ出るよ?」
そうなんですか?ゆり子さん。
「一応、設計図的には720km/h~780km/hくらいまでは出るよ。気温にもよるけど瞬間最大なら900km/hまでは出せなくない。まあ、マッハはプロペラで飛んでるから無理だけど」
気温が関係あるんですか?
「マッハはほぼ気温で変わるから。気圧は無関係じゃないけど、ほぼ気温。気圧はどちらかというと冷却に関わってくるの」
そうなんですか。
「えーと、ウチのリムリニアモーターってとんでもない効率なのよ」
はい。
「でも、効率が99%だとしても1%は排熱になるの」
まあ、そうですよね。
「仮に高速時、720km/hと仮定した時にざっくり推進に2MW・・・2600馬力くらいだから、1000トンくらいの中型貨物船クラスの馬力と同等くらいかな?」
あー、それくらいですかね。船腹にもよりますが、200~300ftというところでしょうか。
「そうなると、200kWの排熱をあの中型機で処理しなきゃいけないわけ」
9m四方ですから、30ft四方というところですね・・・それは厳しい。
「で、船と違って海もないわけで、空気だけでそれを処理するのが本当にしんどくて、ヒートパイプとか仕込んでるんだけど、速度の限界は排熱の限界で決まるの」
ああ、機体全体がオーバーヒートしてしまうんですね。
「うん。赤外線検知されちゃう。スティンガーミサイルが恐くなるwww。その上、高度を上げてしまうと気圧が下がるでしょ?」
はい。
「そうなると気温が下がっても空気の絶対量が減るんで、排熱的には不利になっちゃうの。可変ピッチプロペラとか、ダクテッドファンのターボプロップモドキで流量確保はできるんだけど」
今日の480km/hくらいだとどうですか?
「それくらいの速度なら、温度は上がるけどほんわりくらいだから、対スティンガーミサイル的も問題ないのよ。その実証を得るための試験でもあったんだけど、ざっとデータ見ただけなら大丈夫そう・・・速度が倍になると、原理的に必要な電力は最低2の二乗で4倍になるんだけど、実際には2.5の二乗で6.25倍くらいってのが実験的に導かれてるの」
じゃあ、瞬間最大の900km/hって・・・
「一分とかが限界ねwww」
でも、揚力は足りなくならないんですか
「まあ、屋根というか本体を開いたときには小さいながらも、翼のような形状をしているから、速度を出せば上下方向のローターだけじゃなくて、多少は本体そのもので揚力を得られるんだよ。あと、ダクテッドファンの横のラム圧吸気口からのエアをローター側にも回しているし。まあ、ラムエア使うと空気抵抗にはなっちゃうんだけどね」
まあ、冷却できないとスティンガーミサイルの餌食にもなりかねませんから・・・
「そういうこと。480km/hは実質的には実用最大かもしんないね。リムリニアモーターの効率を0.1%でも改善できれば全然違うんだけどね」
無敵と思われた重力波エンジンにも意外な敵がいたんですね。
「だいたい排熱はどんな機関でも敵よwww。モーターの効率99%だって普通なら夢のような話なんだけど・・・」
まあ、内燃機関だと、超大型タンカーのユニフローディーゼルだって熱効率60%で既に理論的な限界らしいですからね。
「うーん、内燃機関はそのあたりどうしようもないわね。でも60%なんだ・・・すごいのね。車のエンジンなんて、御題目はともかく、実際には35%程度だもん」
まあ、タンカーは低速の定速ですから。ゴーストップが多い自動車では無理でしょう。
「うん、ゆかい丸も本当なら燃料ジャブジャブ船だからねーww」
ああ、船だから排熱はほぼ気にしなくてもいいんですね。
「そう、ウォータージェットで熱をいくらでも捨てられるから」
まあ、動力源は原子力空母並のパワーですからねwww
ああ、それはそれでいいんですが、彼等はどうしてますか?
「一応、監視カメラは付けてあったから、監視できてるよ。男のほうはごはん作ってるね。電子レンジで冷食あっためてるだけだけど」
その、自称妊婦の女性は?
「毛布にくるまって寝てる。サーモカメラもあるけど、本当に熱があるかどうかはわかんない。マッパでカメラに写ってくれれば解析はできると思うけど」
マッパ?
「あ、日本語のスラングか・・・えーと、素っ裸といえばわかる?全身の裸体?」
それなら分かります。完全に裸か、解析目的ならブラとパンティくらいになってほしいということですね?
「うん。それくらいならウソかどうかは分かると思うよ」
まあ、風邪引いて高熱出してるなら難しいでしょうね。
「でも、ご飯たべるでしょう?本当に風邪を引いてるなら、あったかいもの食べたほうがいいと思うし。あの冷食シリーズ、栄養はしっかりしてるから、まずは食べて寝ることだと思うよ?」
で、社長から、ちょっと難しい命令が来てるんです。
「よくありがちだけど・・・何?」
何とかして引き込めって指令です。
「は?引き込めって、引き抜き的な意味で?でも過激派やさんなんでしょ?」
一応、公安に調べてもらったらしいです。レポートが来てます。
そうしたら、元々活動家ではあるものの、暴力革命とか、そっちじゃないのはそっちじゃない・・・違法行為はしているみたいですが・・・
「私も見てもいい?」
はい。禁止されていません。あなたの席でも端末でも見れますよ。共有ドキュメントフォルダからどうぞ。
「わかりました。拝読します・・・」
・・・
「なんとも評価に困るレポートですね・・・」
そうなんです。
「元々は環境保護団体。過激化するかと思いきや、それほどでもない。コロナ禍で大規模集会が開けなくなり、呉越同舟で他のグループと合併?したようなしなかったような・・・なのであっと言うまに分裂。この何年かは二人で活動しているサークルのようなもの・・・だからと言って違法行為をまったくしてないわけではない・・・でも、過激派、過激でない団体に関わらず、活動の実績作りを買われてアウトソースを受けているのが最近の資金源。二人とも小型船舶免許があるかどうかは不明なものの、漁船レベルまでなら操船技術はそれなりに優秀らしい・・・」
綺麗にまとめて頂いてありがとうございます。
「何だろう・・・心底悪い人じゃないっぽいけど・・・やっぱ過激派に準ずる人達だよね?」
まあ、海賊と言われる人達にも、彼等なりの「正義」の言い分があることがほとんどですから・・・それにこのレポートの内容が100%信用できるわけでもないんです。
「あ、それはそうか・・・でも、これで私たちで判断しろ、と言われても・・・困るよ?会うだけなら、パワードスーツ着てけば対物ライフルでも持ってこない限りなんとかなるから私が会いにいってもいいけど・・・」
あれ、そんなに頑丈ですか?
「うん、12.7mm の500ライフル弾だと流石に厳しいけど、NATO弾やAKの7.62mmなら数人からの一斉斉射程度なら平気。表面は壊れるけど複合装甲だから、貼り替えで復活する。みんな、頭とか狙いがちだけど、そこには人の頭はないから、仮に500弾の集中砲火で頭が落ちるほどの銃撃されても中の人はそう簡単に死なないよ?」
なんでそんなに頑丈なんですか?
「まあ、CTO が作ったものだからね。一人で鉄骨、例えばH型鋼で建造物作っているときに数十~数百トンの鉄骨が崩れてきても死なないように考慮されてるみたいだから」
建設用途に作ったものかもしれませんが、対テロ装備として非常に優秀ですね。
「他にも低酸素下環境とかでも数時間は活動できる装備とかも入ってるよ? 彼は面倒なの嫌いだから、周囲の酸素を奪って相手を無力化することもできる・・・まあ、これもトンデモ装置だけど・・・実用化済みだよ?」
は?そんなことが・・・できるんですか?
「換気が悪いとこならできる。その応用で、二酸化炭素直接回収のDAC装置だって・・・公表してないけど実用化できてる」
それって・・・
「まあ、そうね、青い国やら赤い国やらが戦争始める原因になる程度の技術だよ?そもそも重力波エンジンがそうなんだけどさ」
・・・
「えーとね。イマサラだけど、アレックスだって偽名だよね?船員だったって言い張ってるけど・・・軍事組織に所属してたことあるよね?」
・・・
「それ分かって夫婦?配偶者になったんだし、子供も作ったんだから、それは言わなくていいよ?今後はそういうのやらないでほしいけど」
ご存じだったんですか?もちろん・・・社長は知ってますけど・・・
「わかるよ。だってアレックスの公称の経歴を信じるなら、スペインかポルトガル人のはずなんだけど、寝言が東欧なんだもん。あ、社長も含め、誰にも言わないから殺さないでね?今ではアレックスも息子を愛してくれてると信じてるよ?」
まいりました・・・寝言でバレましたか・・・
「モルドバとかそのあたりっぽい」
ばっちりじゃないですが・・・近いですね・・・あなたも息子も愛してますよ。殺したりしません・・・
「じゃあ、それでいい。私も男、夫としてあなたを愛しているし、それでいい。どうせこんな仕事をしてたら墓の底まで持ってかなきゃいけない秘密だらけだしねwww」
・・・愛してますよ、ゆり子さん。それはいいとして、投降者の扱いをどうしましょうか・・・
「一応・・・CTO と火無瀬のテストケースに使う、というアイデアが無くもないです・・・ちょっとアレですけど」
そういう使いかたですか。・・・それは考えてなかったな。それは社長に相談しないとまずいですよね。
「する前提です。まあ、住むところくらいはもう事前に準備してあると思いますけどね」
はあ。まあ、任すしかないか・・・




