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受難のブルーピース(業務委託)

「あたしたちってさぁ・・・」


どうした突然。


「活動家、プロ市民ってことになってるけど、要は『ぷー』の人だよね?」


なんだ・・・急に。確かに定職には就いてないが、社会活動家というのは一応立派な職業だと思うぞ?


「でも大学時代からずっとやってきて、結局金を出してくれる組織なりなんなりがないとどうにもならんってわかったじゃん」


・・・否定はしない・・・


「今回のだって船に乗れるって条件でウチらしか居なかっただけだし、支援金だって・・・まあ、何ヶ月かは食ってけるってくらいじゃん?」


・・・続けてもらっていいか・・・


「もう、反対のための反対運動をするのは疲れた。まだ40歳にならない程度のうちに上がりにできないかな・・・」


・・・言いたいことはわかるが、これはブルーピースから案件として受けてしまっているからな・・・


「つまり、あんな有名な団体でもアウトソースしないといけないわけじゃない?ちゃんと『やりました』って言い訳が立つ程度には示威行動をしないといけないかもだけど・・・次は価格十倍とかじゃないと受けないとかできないの?」


できなくはないが・・・組織の維持の為には・・・


「その組織も、もう維持できてないよね?まあ、非合法組織認定されたんだからどうしょうもないけど」


・・・そうだね・・・でも、急にどうしたの?


「妊娠した。お前としかしてない。で、年齢的にもラストチャンスだ。前にもお前との間で妊娠したけど、そんときは流産したよな?」


・・・そうだったか・・・そうだったか・・・


「いやか?」


・・・思ったほどイヤじゃない・・・というか嬉しいんだけど・・・


「まあ・・・言いたいことはわかっている」


・・・そう・・・どうやってヤメようか・・・


「報復もあり得るからな・・・」


そう、長年活動家をしているということは、刑法犯でもあるということで活動の

ためであれば多少の法律違反は全然やらかしまくっている。


また、この歳までまともな職歴もないので、就活もままならない。


そして、まともな形ではアパートすら借りられないのだ。


「そもそも健康保険なんて入っていたかな?」


ん?急にどうした?


「いや、妊娠・出産をするとなると必要だろ・・・今まで風邪とかを引いても市販薬だのみだったが、子供を育てるともなると・・・」


普通の市民のフリは得意だが、正直、本当の住民票がどこにあるのかもわからない。潜入のための適当な戸籍や住民票で生活しているので、もう、本来の戸籍がどこだったかも覚えていない・・・


そうだな・・・お互いの名前すら、偽名だもんな。最も、もう本名を呼ばれても反応できなくなってると思うけどな。


「それはワタシもそう。気にしない」


まあ、抜けてみるか?


「・・・あっさりしてんな?いいのか?」


いいもなにも・・・さっきお前が言った通り。なんとか派なんて名乗ってはいるものの、事実上二人組織だ。


「どこか、馴染めそうな戸籍は準備できるのか?」


中途半端な田舎な街で探すしかないだろ?

出身は北関東・・・じゃないよな?


「違う。お前は」


オレも違う。


「じゃあ、偶発的に知人に会う可能性は低いな」


そう、東京にも近く、適度に田舎で適度に街。埋もれるだけなら東京のほうがいいけど、暮らすとなるとあれこれ出会うリスクが多いのも東京だ。


でもまあ、取り敢えず今回の仕事はやらないと・・・逃げるにも資金が無い。


「まあな。埋立地の工事をする重機を運ぶ貨物船を襲うだけのカンタンなお仕事だ」


襲うといっても本当に海賊のように襲撃をするわけではなく、騒音を立てたり、接岸を妨害するくらいの話だ。


ぶっちゃけ改造漁船ベースの船一隻でできることなんて『騒ぐ』くらいが関の山だ。


海の上では質量比で全てが決まるので、こんな木っ端船では最悪船同士で衝突したらこちらが負けて沈むだけの話で、沈むのは勘弁なので適当に騒ぎ立てて、海岸や、取材ヘリから撮影してもらうだけで充分なのだ。


           ・・・


「でっけーな」


まあ、そうだな。双胴船か・・・あれで砂浜に接岸できるなんて、貨物船の常識を破りまくりだな。


「とりあえず、接岸コースに割り込む。アジテーション放送の準備をして?」


彼女が操船を担当している。二人とも一応できるけど。アジテーション放送というのは、事前に吹き込んである例のシュプレヒコールなんかも含んだ音声のことだ。


こういう仕事のときには事前にスポンサーの意向を汲んだ音声を収録しておき、現場ではそれを流すだけだ。実際にがなり立てる必要なんてない。


それに船には何人も乗れないが、音声だけなら何十人分でも放送できるからな。


まだ、夜明け前。薄暗い海岸にはテレビや新聞記者らしき人がポツポツ居る。まあ、観衆は少ないが、存在すれば報奨金にはなるだろう。


イヤーマフしたか?


「OK」


彼女がサムズアップした。


オレもイヤーマフをして、放送を開始する。正直、こうなると何も聞こえなくなる。スピーカーは相手の船だけでなく、観衆である海岸のほうにも向いている。そっちにも聞こえなければどうにもならないからだ。


あとは排除されるまで耐えているだけのお仕事・・・のハズだった。

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