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日本盾管隧道建設工業株式会社  作者: Jack...
7年目
68/103

高度追随性実験計画書

吉岡です。


まあ、本日は「ノリさん」のノリでやらざるを得ません。


例の JSH です。どうやら、適当なことをやらかして、米軍からレーダー照射を受けたらしいので、取り繕ってほしい、という社長からの申し入れです。


普通に考えたら有り得ない申し入れですが、国益のためなら国交省の課長としては動かざるを得ません。


幸いなことに、ほぼ、死んでも不可能な三階級特進のような立場の自分は、同期もしくは同等の人物が増えまくってます。


「吉岡課長?でいいかな?副局長代理らしいから、オレからしたら雲の上のヒトになるのかな?」


そんなことはないですよ。例の会社ですけど、無人機の実験を深夜に行ったんですが航空局に書類が届いてない・・・ということにしたいのですが・・・あなたの職位で・・・なんというか、私の言いたいことは・・・理解可能ですか?


「そういうことか・・・オレの権限では・・・まあ、適当な技官の机までは届いていたけど申請を上げるのを忘れてた、までかなぁ・・・」


その技官の方は問題ないのですか?


「少し前までの課長と一緒。地方で安い天下りのポジションならあるなしで言えばあるけど確実じゃないって感じかな?」


まあ・・・わかりますが・・・その技官が飲み込んでくれるのならその形は可能ですか? 巡り巡ってどうやってそれを確実にするのかはわかりませんが。


「そこはまあ、昔からの流れがあるんで、問題ないけど。でも米軍からの追求はノリさんのとこに行くぜ?」


貸しがあるのでまあ、なんとかなるでしょう。


「貸しがあるんだwwww、ノリ、流石だな?同期連中でもいちばんヤヴァいところ(とお)っているだけのことはあるな」


やりたくてやってたわけじゃない。自分が主人公なんて思ってない。一応妻子もいるんでね。

オレはエンジニアリング的には面白いことをしたいんけど、それで家族が危険に晒されるのはやだよ?


そう、彼は大学の同期です。なので「ノリさん」の時代を知っているわけです。

「ノリさん」は急遽復活させたんですが、こういうノリの知人友人はいまでも周囲に少ないですが存在はするので、急に呼ばれても答えられない、ということがないわけです。


彼は運輸省、私は建設省、彼は修士二年修了、私は博士過程までいったので入省年度はそれなりに違いますが、やっぱり、大学の同期というのは気の置けない間柄ではあります。


ただ、省で同期、と言った場合、一般的には入省年度です。私が目立つようになってしまったので、学年同期の面子も近付いてくるようにはなりました。


歳としては入省同期だと、特に四卒だと5~6歳も下ですからね。入省当時は博士課程のメンバーだけで集まっていたこともあります。22歳と、今ならアラサーですか?27~29ですから、それこそノリが違います。


で、見返りは何がいるのかい?


「今回はいいよ。噂の副局長代理殿に同期扱いしてもらえるだけで。普通の同期・・・入省年度のほうな? 結構うるさくて大変なんじゃないか?」


まあ、博士連中は元から浮いてたしな。


「珍しいよ。普通は修士だろう?」


好きなものに学校時代に出会えたってことにしておいてくれ。


「いいけどさ。まあ、今じゃ一緒の国交省なんだ。お互いそんなに先はないが、ひとつ宜しく」


まあ、いいよ。国土庁と北海道開発庁も忘れないでやってくれ。


「そんなのもあったか。いや、あったな。まあ、その実験計画申請書は一昨日ウチの技官に提出されたことにしておくよ」


頼んだよ。一応、あそこの社長には君のことも言っておくよ


「おう、よろしくな」


           ・・・


というわけで、社長、無事、受理されたことになったよ。


「いや、大変申し訳ございませんでした。ノリさん。敢えてノリさんと呼ばせていただいておりますが、問題ございませんでしょうか?」


そのほうが助かります。定年間際だったはずなのに急激に出世して、周囲の手の平返しにも辟易としておりますからね。


「本当にありがとうございます。まだ、疑惑の段階ですが・・・フェーズドアレイレーダで意図的に照射されたであろう、というところまではほぼ確実のようです」


横田ですか・・・あれはウチの航空局でもどうにもなりませんからね。


「入間の可能性もあるようです。一応、ウチの開発部で電波関係が好きなのがおりまして、照射されたレーダーをセンシング技術で逆探知的なことを実験としてやっており、両方から照射された可能性もなくはない、ということでした」


どっちにしても国交省としては防衛方面は・・・手が出せませんよ。


「おっしゃる通りです」


何というか・・・レーダーで探査されたことを検知できるんですね。


「まだ、リアルタイムでは無理です。センサー情報を後で集計して、事後検知です。それなりのコンピュータを載せればリアルタイム検知もできますが・・・そこまでやると本当に何のドローンだろう、という話にもなり兼ねないので」


まあ、確かに・・・


しかし、この実験の内容は興味深いですね。


「はい、我々の有人ドローンはコンテナを運べます。緊締装置を備えてますので」


船舶コンテナでもですか?


「40ft以上となると・・・中身が軽いものでないと無理です。それ以下でも重量制限はございます。重さによって出せる速度も変わってきます」


まあ、それはそうでしょう。しかし、速度が遅くても短距離なら重量物を運べるというのはゲームチェンジャーに成り得る話です。


「はい、平戸でもご覧になったとおり、我々の赴く現場は、特に災害復旧工事の際には陸路による重量物輸送が困難な場合も多いです」


それが、その『中型機』であれば運べると。

例のトレーラーライクになる14m機も運べるんですか?


「はい、陸送モードであれば緊締可能ですので、二機で協調運転をすれば、海岸から丘の上くらいまで輸送するくらいなら可能です。まあ、その他の機材も色々上げなきゃいけないんですが」


普通ならアクセス道路、工事用の道路を作るところからですからね・・・

お宅の場合、強襲揚陸 RORO 船で接岸することで、普通の重機なら船で、一まとめにして、運べてしまいますからね。


「いえ、砂浜に接岸可能だ、というだけの普通の貨物船です。武装もありませんし」


普通の貨物船は砂浜に接岸したら、それは『座礁』でしょう。簡単に復帰できる時点で・・・まあいいです。


実際、新潟・山形県境のような貨物鉄道の交通的には重要ではあるが、まあ、僻地ですね、みたいな場所で、鉄道トンネルを含む大規模崩落などが発生したら、貴社のゆかい丸でしたっけ?、あのRORO船が大活躍でしょうね。


「まあ、日本海側に回るのはそれなりに時間が必要ですが、RORO 区画にギリギリまで搭載したり、20ftや31ftなら近場までは鉄道かトラックで輸送してもらえれば、ウチの中型機で取りに行けますし、船にも積載できますね」


なるほど、見切りで航行開始して、途中で資材や重機を調達することも可能ですね。


「乗員区画が極めて狭いので、人を運ぶには向かないんですけどね」


最悪、バスごと載せてしまうのはできませんか?


「うーん、できるはできますが・・・トイレの問題が・・・」


ん?タンク式なんですか?


「汚水処理装置です。無理しても、精々50人くらいが限界かと・・・」


なんと・・・そのまま海に投棄している船もあるのに、ずいぶんと・・・環境保護的ですね?


「一応、国際航路を走ることも考えると条約には準拠しませんと」


どのレベルですか?


「乾燥汚泥と放流可能な水、レベルまでは処理しています」


それはすごい・・・MBRですか?


「はい、最後の濾過膜に重力子フィールド濾過膜を用いることで、水分子を選択的に抽出することが可能です」


また・・・トンデモ技術を開発しましたね・・・私に話していいんですか?


「今更でしょう?」


そうかもしれませんが・・・


「油脂の処理や塩素や紫外線などを用いた殺菌、殺ウィルス処理はちゃんとやってます。最後の最後だけですよ」


その濾過膜の寿命はいかほどでしょうか?


「ある意味常時貼り直しです。なので数秒~数分とも言えますし、全般検査の間隔と同じ、とも言えます」


永久機関などと言われませんよね?


「ウチはそういうものを作るつもりはありません。消耗材は存在します。これは明かせません。それにある意味、ちゃんと、故障することもあります」


故障時の対応は?


「三重化してあり、通常であれば一つ動いていれば浄化は問題ないです。さきほどの50人だと二つ動いてないと難しいでしょうね」


なるほど・・・人員を運ぶのは下水設備的に難しいと。


「基本的に弊社は自動化、省人化を旨としておりますので」


承知いたしました。大変興味深いお話をいただきありがとうございます。


さて、肝心の実施してしまった飛行実験ですが、あれは何の実験だったのでしょうか。


「はい。将来の航路自由化を見据えた地上構造物との高度追随性確認試験となっております」


外環を利用された理由は?


「はい。現状の航路も高速道路、自動車専用道路、河川上を主たる航路として認められておりますので、それに準じた環境、かつ、高度の変化が激しい道路として、外環道路を用いた次第です」


まあ、立体交差が上を走ったり、自ら上がったり下ったりする道路なのは確かです。

しかし・・・貴社の中型機は・・・無人航空機なのに人を輸送するという法のスキマを突いたような機体ですからね・・・

なんとでも言い逃れはできますが、中にいる人は観測員であって、操縦はしちゃだめですからね?


「おっしゃる通りです。事前データにより飛行しています。高度要件ですが、一般道切り替え時に念の為に高度を取ったことが要因です。安全の観点からの措置でしたが、法に触れる可能性について失念しておりました」


普通はレーダーで補足されるような高度でもないですし、どちらからもスクランブルなどは確認されてないので、無かったことにできると思いますが、今後はお気を付け下さい。


あと、社長個人の信念には背くかもしれませんが、所謂天下りのポストを用意することもお考え下さい。


「地方子会社でよければ受け入れ可能です。理由は・・・ノリさんもよくご存知かと思います」


となると・・・最長三年というところですか。説明はできますので、それで結構です。

今後は実施の予定がなくても、常時実験計画書の提出をお願いします。

提出したけど中止、は問題ありませんが、計画無き実施、は問題になりますので。

今回もですよ?


「承知いたしました。お骨折りに感謝いたします」

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