リサイクル設備合流・・・できないんだけど?
あのさ
「何、メッキー」
だからメッキーは・・・今はいいか。
姫嶋です。
ここは、元、メガソーラー、現、メガソーラー兼ゆかい丸母港+乾ドック+改造基地兼メガソーラーリサイクル工場です。
どうやって認可されたんだか謎の調布-神栖便、しかも深夜の未認可運行だと、本社からここまで、30分ちょいで着きます。
量産型中型ドローン、ゆかい丸にも三機搭載可能なアレです。
実用最大速度は480km/h、瞬間最大風速?なら600km/hくらいまでは無人実験で達成しています。
人が乗っているときは最大360km/h、巡航は240~280km/hで設定しています。
まあ、どちらにしろ、空中で別の航空機とぶつかったら、乗客乗員全員死亡って程度の強度です。
航路もさんざん検討しました。
最初は多摩川上空を下って東京湾に出る、という案が検討されましたが、モロに羽田空域なので却下。
鉄道や小さい川をうまく使ってともかく東京湾に出て、そのあとは湾岸線と東関道の上を飛んでいく、というきわどいルートです。
井の頭線とか、北沢川、目黒川あたりです。
ウチのドローンはだいたいマイクロバスを一回り大きくしたような感じで、降着脚もあるので、高速なら降りれないこともないからです。
バードストライクしたことはありますが、それくらいではビクともしません。他のドローンや報道ヘリなんかが危険なんでしょうけど、都内はドローン禁止区域ばかりだし、報道ヘリはそんなに低いところを高速で突っ切ったりしませんから。
まあ、ジオデータだけじゃなく、レーダー、LiDAR、赤外線、可視光線、なんでも使って衝突回避はしてますんで、そうそうぶつかることはないです。
やっぱり鳥が一番コワいですね。
調布から神栖は、直線距離なら100kmくらいですが、迂回をするので約130km。
視界が悪いとき、特に霧にはめっちゃ弱いので、そういうときは欠航か、どうしても、という場合は低速運行です。
あと、GPSが何らかの理由で取れないとき、これはもう欠航です。
社長は飛行機の免許を持っているので、管制と会話しながら飛ばせば飛ばせるかもしれませんけど・・・
一応、重力子フィールドを前方に展開してシールドっぽい何かを作っているとは聞いてますが、そこまでくると何が何やら・・・そういや、ぶつかるかと思った鳥がうにょん!と上に飛ばされたことがあったな・・・
まあ、神栖基地は背の低い(といっても8mくらいあるけど)建屋の天井に、ビターーーーっと太陽電池シートが貼ってある構造です。ソーラーセルもロール状なので、次回の張り替えも容易。
元のメガソーラーを解体しはじめた際、ソーラーパネルは普通に従来型リサイクルに回していました。
理由は簡単で、ゆかい丸の乾ドック、母港を掘らなきゃいけないし、保管する場所もないからです。
そっちの港湾機能が完成してリサイクル工場を作っているんですが、致命的な問題が発覚しました。
ソーラーパネルを高温処理して、EVAから合成ガスを作り、酢酸を分離する工程は作れました。ガラスも割れず、シリコンも綺麗に分離できました。
問題は合成ガスをFT工場まで持っていく方式です。
建設中の鹿島N号炉、コンバインドサイクル発電機兼FT式超脱硫軽質原油生成機は鉄やさんの近くにあります。
ウチの対面は石油やさん、そしてその北側の対面が鉄やさんなのです。
Y字型に港湾が掘削されている形で、海を二回渡らないといけません。
https://www.google.com/maps/@35.9169778,140.6651646,5074m/data=!3m1!1e3!5m1!1e1?entry=ttu&g_ep=EgoyMDI1MTEwNC4xIKXMDSoASAFQAw%3D%3D
無理矢理繋ぐとしたら海底パイプラインですが、気体を輸送する海底パイプラインというのは難易度がハンパないです。浮いちゃいますからね。
しかもこの港は浚渫港ですので、定期的に浚渫が入ります。
つまり壊されちゃう危険が高い。
陸上だと超遠回りの上、あまり土地が空いてない・・・
じゃあ、ゆかい丸に活躍してもらおう、とも考えましたが、
そもそも重機移送のお仕事がそれなりに入っています。
ゆかい丸なら、タンクローリーでもなんでも運べますし、上部甲板に20ft ISOコンテナを10個くらい置くこともできますが、気体のままだと効率が悪すぎる・・・
かといって、圧縮、液化しようにも合成ガスは、エチレンと一酸化炭素と水素の混合ガスです。
FT法に使うにはめちゃくちゃ都合がいいのですが、沸点の違う三つの気体が混合しているということで、液化にはめっちゃ都合が悪い。別々に液化しちゃう上に、液化水素に至っては零下269℃、4Kで液化ですからね・・・超高コスト!!
「うーーーん、詰みかな・・・」
ね・・・合成ガスとナフサ、氷酢酸まで分離できるようになったのにねー。
EVA、エチレン酢酸ビニルは、名前に酢酸と入っていることからもわかりますが、高温処理しても酢酸が残ります。
低温、300℃くらいだともっと酢酸が大量に出来てしまいますが、私達は合成ガスのほうが欲しいので高温で処理して、酢酸の分解を促しています。
それでも酢酸、正確に言えば酢酸水溶液ができてしまいます。ナフサというか石油っぽい成分と酢酸水溶液は正に油と水。冷却して液化すれば層ができますので、割と簡単に分離できます。
水のまじった油、と、油がしっかり取りきれていない酢酸水溶液、くらいで完全に分離できるわけではないですが、それで充分です。
原油だって水分含んでますからね。
残った酢酸水溶液ですが、水と酢に分けたい・・・高純度の酢酸は化学原料として優秀、簡単に言えば売り物になります。
CTO が元の指示書を書き、火無瀬が清書したであろう手順書に書いてある通りの装置を作ったところ、重力子フィールドを用いたフィルタからほぼ純粋な酢酸のミストがスプレーのように出てきました。
それなら話は速い、と真空低温状態を作り、そこに噴くように装置を作り直したところ、あっさりと氷酢酸の粉末が得られました。
・・・ねえ、CTO って人間?
「なんだろうね? 大学の時に呑み会で会ったときには人間に見えたよ?」
この、明確で分かりやすい指示書はヨリコちゃんだよね・・・
「まあ、そうだろうね。CTO が書いたままだと、こんなに分かりやすくないね」
まあ、生きているってのがわかったのでよかったってことにするか。
「そうだね。あれも社内でくっつくウチに見えたんだけどな・・・」
そうか、子会社だけど社内か・・・。CTO もアソコで確定か。公然の秘密みたいなもんだけどさ。
「まあ、僕等はCTO の居場所は知らない。そのほうがいいんだ」
わかってっけどさ。どうだろ?
「?」
いや、あの二人だよ。年上だけどタメ口でいいって言ってたから、今もヨリコって呼んでるけど、あの子、脱ぎグセがあるんだよ。
「脱ぎグセ?」
家呑みしてて、女子だけだったりすると、すぐ下着になるんだ。
まあ、みんなで雑魚寝っつー、女子力無さすぎる家呑みだからいいんだけどさ。
「まあ、ウチには居ないけど、パンイチ男子も大学ではいることはいたな」
CTO も男だろ?一応。
「そうだね。彼女がいたことも・・・あったような気がするな。昔から気配消すのはうまいから・・・気づきにくいけど」
そこに強制失恋直後の脱ぎグセ女を放り込んだらどうなる?
「まあ、でも彼、まあ、先輩か、先輩は結構、意思は固いよ?」
固いにしろ、何年単位で他の人間を見てないところにオンナ、まあ、30過ぎてるけどCTO よりは若いっちゃ若いだろ?
それにダサくてモサかった大学時代と違って、みんな格段に綺麗になってんじゃん?
「・・・それはそうだね。で、火無瀬さんが、抱いて~とかお願いしたら、さすがに困るだろうね」
日本人なら風呂好きだろ?
「まあ、研究室で日帰り温泉とか行ったことはあるよ。普通には好きだろうね」
地下に二つ作っていると思うか?
「・・・スペースはあるだろうけど、湯船とかシャワーとか・・・なかなかの手間だよね。工事業者も入れられないし」
ラッキースケベどころか、女のほうから積極的に突撃していくなら、裸の付き合いも免れまい。
「まあ、そうだろうね。でもそれは二人に任せるしかなくない? それより合成ガスどうしよう・・・」
うーん・・・困ったね・・・
困った時のゆり子か?いや、CTO でいいか。いや、自分たちでもいけるか?
「どうするの?」
いや、鹿島共同のFT装置がデカいのは欺瞞が必要だからじゃん?
偽装無しで、重力子フィールドのFT装置作るとどうなる?
「偽装、欺瞞設備無しのFT装置か・・・やってみる価値はあるかもね」
そうね。やってみるか。でも一旦、今夜本社に帰らない?
ゆかい丸が出てるから宿泊施設がないよ。メシもほぼ尽きたし。
あと、抱き合うなら柔らかいベッドの上がいいし。
「そうだね(苦笑)」
・・・
暗くなってから色々と通信を入れ、帰りは違う航路で戻ることにした。
利根川を遡り、手賀沼経由で三郷のあたりからは外環道の上を飛び、大泉で外環が尽きたあとは予定されている中央道ジャンクション付近までまっすぐ。
そこで転回して調布インターのあたりまでくれば、もう、調布飛行場だ。
何パターンもの航路は既にインプットされているので実際に飛んで予想外の障害物を探すってお仕事もあるっちゃある。
リニアリムモーターのローターは静粛性に優れている。まあ、ロータが浮いているから摩擦音はないし、ヘリのような回転翼でもないので、風を切る轟音もない。小さめのドローンのような高周波音もしない。
ただ、高速航行用のダクテッドファンは多重ファンで空気の圧縮開放がされるのでちょっとウルサい。まあ、普通の航空機と比べれば静かなもんだ。
川や道路の上を飛ぶのも、川は音を吸収するし、道路は深夜でも騒音がなくならないからだ。
調布飛行場から本社地下ピットに到着したあと、さて、風呂でも入るか、と思っていたら、携帯が鳴った。だれかなと思いつつ反射的に通話ボタンを押したら怒鳴られた
「姫嶋!!飛行が雑すぎ!!痕跡の追跡をされてるぞ!!」
え?CTO ・・・こんな時間に何ですか。
「バカヤロー! 夜間の未認可航行は違法だってことを忘れるなよ!!」
だれに追跡されてんですか?
「米軍だよ!!あと多分自衛隊な! 外環の上、高く飛びすぎだ!!」
・・・バレますかね・・・
「消去法でウチしかねーよ!!」
・・・デスヨネ・・・
「明日朝一で社長に謝って、なんとかゴリ押しでもいいから実験計画書を後出しで押し込めないか相談しろ!!」
わかりました・・・朝までになんとか計画書をでっち上げます。
「ちゃんと意味のある実験で、理由付けもしっかりするんだぞ!!」
わかりました、親方・・・
「親方じゃねーー!!」




