CTOはマッチョメン?
火無瀬です。
ここに来た直後、孤独で狂いそうになった時期もありましたし、そのころ、明らかにおかしい行動を取った自覚もあります。
まあ、かまってちゃんですね。今考えると本当に恥かしいのですが、その時はそうするしかない、と思いつめてました。
それは朝晩にCTO との1 on 1が毎日設定されるようになってからは、ぱったりと収まりました。
それまでは、声を聞くとしてもあちら側からの一方的な「通告」で、会話とは呼べませんでしたから。
通販とかで生活物資は買ってもらえますが、私を部屋に閉じ込めておいて、CTO がワゴンを押してきて、部屋のすぐ外において、戻ってから電撃システムをオンにして、やっとロック解除です。
まあ、トイレとお風呂も行けるようになりましたし、食事も予想に反して飽きません。
冷凍の宅配弁当のおかずだけバージョンみたいなものですが、種類はかなりあります。一月以上経った今でもまだ、重なりはないので100種類以上はあるようです。補給は週一度、一回に24食来るので在庫は増えつづけています。
ご飯は玄米や雑穀米、たまに白米のレンチンご飯です。
ほとんどの場合、半分のパックで充分です。全然運動できてないし。
特にパン好きというわけでもないので、無ければ無いでかまわないです。
不満というほどではないです。たまには外で食事したい、と思いますが、当分は叶わぬ夢というやつでしょう。
電波時計やPCの画面でしか、時刻や曜日は認識できないのですが、金曜日の夕食には濃い目のハイボール三缶と氷が付いてきて、栄養や減塩、糖質オフ優先のふだんの食事以外・・・普段の食事は室内の冷凍庫にギッシリ詰まってます・・・に唐揚げやらシューマイやらハンバーグが頂けます。
どれか一品ですが、希望を言えば在庫があるものなら頂けます。
無ければ別のものを提案してもらえます。
今週、今日はエビチリの予定です。楽しみです。
ま、週末の小さな贅沢というやつです。
仕事こそしていますが、実質的には囚人みたいなもので、かつ、社長の言っていることを信じるなら、事実上幽閉ですが、外部の脅威から保護されているのも事実です。
信じない理由は無いので信じてます。公安で何かされたんだろう、という記憶もほのかにですが蘇えりつつあります。
ずいぶん酷い目にあわされたんだろうとは思いますが、それをぼやかす薬品でも投与されたんでしょう・・・
まあ、詳しい記憶が無いほうが幸いなことをされたんだろうな、という想像はつきます。
金曜日夕方の1 on 1は画面越しですが、一緒にご飯を食べられるのが楽しみです。
・・・
「今週もおつかれさま。画面越しだけどカンパイしようか?」
はい、お願いします。カンパイ!!
「カンパイ。さて、喰うか」
はい。エビチリから行きます。
んんーーーウマいです!!
「安あがりだな。ま、オレもだけど」
あの冷食、すごく種類あるんですね。10種類くらいしかなくて飽きるんじゃないかと思ってたんですけど。
「そうだね。今んとこ120種類くらいあるよ。まー、あっちの言い分だけで、ほぼ一緒じゃね?ってものもあるけどさぁ」
普通の冷食は・・・毎日は体に悪そうですけど、普通においしいですよね。
「ま、マズい飯屋や居酒屋の食い物よりはずっとウマいな。それに糖質、脂質にしろ塩分にしろ、しっかり表示されているから安心とも言える」
確かに。そういえば宅配ってどうなってるんですか?CTO が入口まで受けとりに行くわけじゃないですよね?
「あんなの行けるかよwww。宅配受取装置は真っ先に開発したんだよ。街中、スーパーとかコンビニに受取ボックスがあるだろ?あれの大規模版を太陽光発電施設の入口のところに置いてあるんだ」
冷蔵とか冷凍庫はどうなってるんですか?
「上蓋式の冷蔵庫と冷凍庫が置いてある。かなりデカいよ」
そこからの侵入って無いですか?
「昔はあった。もう無いね」
冷蔵庫も冷凍庫も何らかの仕組みで工場の入口まで持ってくるんでしょうね・・・電源はどうなってるんですか?
「バッテリー。実装的にはUPSだね。コンプレッサーが回ってしっかり冷えている状態を維持するだけなら大した消費電力は食わない。バッテリーで充分だよ。地上では商用電源から常時インバーター形式のUPS経由で、そこのところの接点は工夫が必要だったけどね」
なるほど・・・UPSで冷凍庫を冷やすんですね。確かにおっしゃる通りでしょう。でも複数冷凍庫ユニットがあるってことでいいですか?
「その通り。現在どっちも三つあるけど実質二つで運用中。ちなみに聞かれてないけど移動は農業用モノレール的なやつね。途中経路は窒素雰囲気だからさ」
まあ、それなら侵入しても死にますね。農業用モノレールならかなりの傾斜でも動けるでしょうから・・・じゃあ、普通の荷物もそれで運ばれてくるんですね
「そうさ。普通の荷物の受け口は滑り台になってて、カゴで受けとめる。あとは同じくモノレールだね。一応自律システムになってて、空き台車の運用なんかも自動化されている。入口のところに自律車庫がある感じだな。最初は苦労したけど、今ではシステムに任せきりだよ」
・・・えーと、トンネルなわけですよね・・・通信は無線ですよね?どうやって通信してるんですか?
「LCX ケーブルだな。通信速度はイマイチだけど、標準の暗号化にもう一段エンキャップスレーションして秘匿性を高めてある。あと、ケーブルは3セット6本あって、一本でも生きていれば通信はできる。切断の検出もできるようになっている。今のところ切られたりしたことはないし、1セットずつであれば、モノレールロボットで張り替えもできるようにしてある」
車両基地のクラッキング対策は?
「照明無し、低温環境、窒素雰囲気化。モノレールのレールは水平だが、高架になっていて、地面は水平になっていない。あと、サーバの類は一切置いて無い。それはこっち側だ」
一応、クライアントというか自律電動貨車のほうは?
「もう、デバッグポートもないのでUSBもシリアルもRJ45も差すところがない。フリー状態なのに赤外線で30℃以上のものを検知したら逃げるようになっている」
なるほど・・・なにか探ろうとしてもまっくらなところで移動されちゃうわけですね。
「そう。一応、IDは128bitあるので18,446,744,073,709,551,615台くらい運用できるようになっているけど、実際には30台しか無いし、運用に入っているのは同時に16台もない。運用に入ってないのにはデバッグポートがあるものもあるけど、それはレールから降ろしてあって、何かのバグがあっても物理的に動いたりしないようになっている」
となると、ポイントとかも自動化されてて、地上に近い車両基地もガラガラというわけですか?
「そうだね。上の車両基地もみっちり詰めれば256台以上入るはずだけど10台くらいしか入っていないね」
なるほど・・・ちなみに一両あたりの耐荷重設計は?
「500kgだね。1tくらいなら壊れないはずだ。レール部分もね」
じゃ、遅いんじゃないですか?
「遅いww。超遅い。上からここまで数時間かかる。でも冷蔵庫も冷凍庫もバッテリー劣化時でも24時間はバッテリーで動けるから問題ない」
じゃあ、仮に冷凍庫や冷蔵庫に忍び込んでも死にますね。
「温度の前に窒息するだろうけどな」
あ、そうか。
バッテリー劣化したらどうするんですか。
「交換するだけだよ。それ自体も通販で買ってるしな。ユニット交換だから簡単だよ」
電動貨車への給電はどうしてるんですか?結構電力必要ですよね?
「うん。第三軌条。なので侵入してなぜか生きていても感電して死ぬだろうな」
ああーー。でも効率悪いですよね・・・
「まあ、最初は重力波エンジン発動機を付けてたけど、それ自体を窃盗されることを考えてさ。まあ、爆縮させるのがオチだとは思うけど。ま、作ってみたかったってのも大きいかな」
巨大鉄道模型ですかwww。
「近いものがあるね」
ここにいると時間はありますもんね。
「だね。ともかく暇だから。一応、9時から18時って勤務時間だけどさぁ」
それ以外も土日もずっとやろうと思えば・・・
「いくらでもね。有給取ってもやることないし。普段でもジムかプールかのんびり温泉か・・・くらいだしさ」
プールもあるんですね。
「ちっちゃいし、塩素臭いよ。一人だと掃除がタイヘンだからさぁ」
あれ、温泉だったんですか。でも大きいですけどユニットバスですよね?
「まあね。ユニットバスっつっても一番大きなやつだから手足もしっかり伸ばせるしさぁ。まあ、掃除の都合だよ。温泉は温泉だよ。地中から湧いてるから。源泉掛け流しってやつ」
へえ・・・そうだったんですね。
「温度はちょっと低めだったから適当な熱交換器で温度上げてるけどな」
まあ、排熱はいくらでもあるでしょう。ここなら。
「そうそう。38℃くらいでの長風呂がいいんだよ。全身浴だな」
ああ、ぬるめでしたね。飲まない日はあれで入眠調整してますよ。
「なるほどね」
で、あの大きさなら、いっしょに入れますよ?
「その話か・・・」
いやじゃないっておっしゃってましたよね
「いやじゃないけど、まあ、オレとしてはそろそろいいかもな、とは思っているんだけどさ」
ふと思ったんですけど、体見せてもらえますか?
「は?急になんだよ?」
いや、私ブラだけで、あと全裸じゃないですか。
「まあ、それが習性か、でなきゃ敢えて見せてるんだろ?」
そうですが、さっきもジムとかプールとかおっしゃってましたし、ヒマなら筋トレみたいなのもよく聞きますし、なんやかんやの肉体労働も御自分でやるしかないんですよね?
だとしたら、いい体になったんじゃないかなーと思っただけです。
「まあな。なにもかも自分で工事だったし、必要に応じて体力も付けたさ」
見たいです。
「あのなぁ・・・まあ、いいか、Tシャツ短パンだから、ちょっと引けば見えるだろ?よっこらせっと」
・・・
「ほい、どうだ? こんなポーズ取るんだっけ?ま、ボディビルと違って見せる用じゃないから、見栄えはイマイチかもだけどさぁ」
・・・大学時代のガリガリから比べたら、大変ご立派です。
ガチムチとは言いませんが、ラグビーやってました、と言われたら、どおりでご立派な、と言いたくなりますね。
「まあな。こっちはそういう性癖ないから、短パン脱げは無しな。もう戻るぞ」
・・・
「結構肉体労働もあるし、ロボットにやらすにしろ、ロボットを組み立てるのはオレだから、重いものも持たざるを得ないからな。それなりには筋肉付いたよ。付くのも嬉しくて、いろいろ研究というか勉強もしたさ」
体脂肪も低そうですね。
「あまり下げても一人の引きこもり生活にはよくないらしいんで、15%は切らないようにしてる。まあ、感染症はもらわないな、ここの生活だと。怪我のほうが恐い」
なるほど・・・安全靴とか手袋なんかよく買うんですか?
「そんなに一杯はいらないが、基本は安全靴に防刃グローブだな。薄めの作業性のいいやつにしているけどさ。作業服も会社のやつを送ってもらってる」
あれはカッコいいですからね。私のも洗い替えがそろそろ欲しいです。
「お前、24時間ブラしか付けてないじゃん!」
それは幽閉モードだからです!寝てるときは場合によっては生理用ショーツ履いてます!!
それに、外で実作業するようになれば着ますよ!!一着だとさすがに厳しいです!あとCTO に会うときにも着るようにしますよ。
「幽閉モードね・・・まあ、幽閉モードか・・・わるいな・・・」
いえ、そうされるのは承知の上で来てますからあやまってもらわなくても。
あと、エクササイズ的なものも部屋でできるものだと限界があって・・・
ジム使えませんか?
「あー・・・確かに・・・デブるよな」
まだデブってません!!見えてるでしょ?!
「だが、そのパックを二つ食いだすようになるとすぐだぞ?」
う・・・ちょっとそう思うことはあります。食べれば食べれちゃいますね・・・
「そうね・・・ジムかあ・・・気持ちはすごくわかるけど・・・とりあえず、ステッパーぐらいかな? そっちに差し入れるからそれでガマンしてもらえないかな?」
まあ、ステッパーだけでもあれば下半身は効率的には鍛えられるでしょうけど・・・じゃあ、お願いします。
それより、一緒にお風呂入れるようになるのはいつからでしょうか。
「それなー・・・本社のほうで許可をもらわないといけなくてさぁ」
・・・まあ、その必要はあるかもしれません。
「一応、その手の専門家にも相談してるみたいなんだけどさ、お前がオレの暗殺を狙っているとしたら、深層心理的なアレされてるかもしれないから、本人に暗殺なんて意識がまったくなくても危険かもしれないって言われちゃうとな・・・公安で薬品投与されたっぽいしな、お前」
・・・ちょっとだけ思いだしてますが、あまり思いだせないほうがいい気がしているアレですね・・・
なんなら、このPC受け取る前にやったアレ、おもちゃは捨ててないならありますよね。アレで隠しもってないかどうか確認してもらってからお風呂でもいいですよ?
「お前なあ・・・それなりに面倒なんだよ。それに何度もあんなんやりたくないよ」
さっきの筋肉の付き具合なら、私は武器がないと勝てそうにないでしょう?
それに、公安が暗殺なんてさせます?
「公安といってもいろいろあるらしいからさぁ。政治家にとっては自分の小遣いにならないなら無いほうがマシってアホだっているかもしんないし」
ああ・・・ありそう・・・
ぶっちゃけ、数年掛けてここをすっかり掌握しない限りはCTO を殺してしまったらアタシも餓死か窒息死なんでしょうけどね。
「まあ、教えるのヘタだしな、オレ。そうなっちゃうだろうな。希望を持たせてから落としたくないんで・・・オレからは開放されるよう働き掛けているけど、いつかはまったくわかんない・・・って言うしかないんだよ。今は」
うーん・・・冷静に他人事として考えると、そうなんでしょうね・・・今はそれで充分です。今夜はお酒も呑んだし、あっさり寝れると思います。
もし、明日朝、お風呂に入りたくなったら、こっちから呼出していいですか?
「まあ、一発だけならともかく、連続で電撃くらったら最悪死んじゃうからな。朝6時を過ぎてたら対応できると思うよ」
はい、一回浴びてみようと思って、一度やりましたが、結構キツかったですから。
わかりました。6時ですね。6時00分01秒でもいいですか?
「小学生かよ。まあ、5時59分59秒でもかまわないよ」
おまけありがとうございます! 残り一缶も呑みますけど、一旦おやすみなさい、ということで本日はありがとうございました。
「はいはい、おやすみ。歯磨きしてから寝ろよ」
おかーさんですか?
「せめておにーさんにしてくれ」
承知しました。おやすみなさい。おにーさん♡
「はいはい、おやすみ」




