CTOによる重力式フィッシャートロプシュ
地下帝国の帝王ことCTOだ。
いや、冗談だ。
「なんの冗談ですか?」
社長に相談したら、火無瀬のことを気にしててさ、まだ、モニタ越しだけど、朝と夜に一定時間で1 on 1しようかと思うんだけど、どうかな。
「!!是非お願いします!!」
そこまで?
「そこまでです。そうでなければあんな書き込みしませんよ」
まあ、そうかもな
「そうかもな、じゃないです。初日と、あの時以外、話なんかしてないじゃないですか。CTO は外と通信できるのかもしれませんが、私はほんとうに一人ぼっちなんですよ・・・」
すまん。気付いてなかった。オレは一週間くらい人と話せないなら話せないで特に苦痛はないんでね。一ヶ月となるとわからんが。
「わかってほしいです(苦笑)。まあ、性癖と言われてもかまいませんが、裸を見られるのも別に気にしませんし、美人だった過去もないので、私を女として見てくれるのもうれしいくらいです」
そうか。でもしばらくはモニタ越しだけな。
これは社長からも言われているし、オレ的にももう少し観察したいんだ。
「はい。スパイ扱いはしかたないです。裸族は証明する方法がないんですが、もとからです。今だったら、私は何も隠してませんよ的な意味もあるんじゃないでしょうか?」
そうかもね。元から家では裸だったんだ?
「まあ、オッパイ垂れるのはいやなのでブラのみとかですかね。あっPJの通販ありがとうございます。やっぱいいブラのほうが気分が上がります」
まあ、雑誌渡しただけだし。食事の不満はない?
「そのうち飽きるじゃないかと思いますが、まだ大丈夫です。量や栄養素は整っているみたいですし、別にビタミンとかのサプリもいただいてますし、体調は外に居たときより良いくらいです。お酒もありませんしねww」
まあ、オレは飽きずに食ってるよ。お酒は普段は飲まないけど、出してやってもいいよ?
量を管理したいから缶のビールとかチューハイ、ハイボールになるけど。
あと、普通の冷食、唐揚げとかシューマイとか脂たっぷりで体に悪そうだけどタマにならうまそうなものもある。みんなレンチンだけどな。
「そうですか・・・えと、電波時計置いてあるんですが、これ、同期しているんですよね?日付とか時間、曜日は信用していいんですか?」
大丈夫。NTP を電波時計の電波に変換する装置を付けているから、地下でも市販の電波時計が使える。
「なるほど、プロトコルは公開されてるんですから作れるはずですよね。じゃあ、金曜日の夕方だけでもいいので、ハイボールを3つ、500ccの缶でお願いします」
結構呑むね。まあ、いいけど。7%のほうでいい?9%もあるよ?
「うう・・・それなら9%のほうで。氷と・・・ガラスはダメかもしれませんが、アクリルとかプラでもいいのでコップ・・・いまの水を飲むコップでなく大振りで透明か半透明のものがいただけると嬉しいのですが」
気持ちはわかる。プラのカップは本来は使い捨てのやつならあるよ。海でビール売ってるようなやつね。洗って乾かして何回かは使ってほしいけど。氷は製氷機のやつならある。
「充分です。さっきの冷食ですけど、シューマイって大き目の9個入りの、価格的に少し、お高めのやつですか?」
そうだけど?
「あれ、3個ずつで切り離せるんで3個、いただけます?その日だけでいいので」
ああ、いいよ。オレもタマには食おうかな。
「モニタ越してもいいので、一緒に食べることを希望します・・・あのー・・・結構希望を言いたいだけ言ってる気もしますが大丈夫でしょうか?」
大丈夫。この工場は結構金を稼いでいるからさぁ。
・・・
そんな感じで他愛もない会話なんかをしているだけで、例の書き込みはやめて、公開○○ショウ的なものも無くなった。
やっぱストレスだったんだ。
別にダベっているだけではなく、主に夕方は仕事の話もしている。
「CTO。これって、フィッシャートロプシュですよね?」
そうだけど。
「気体の分留ができれば確かに簡単にできますね」
そうなるね。まあ、最初の思い付きは國本だけどさ。
「そうなんですね。彼女はダンナ・・・すてきな外国人船長さんを捕まえてうらやましい限りです」
まあな、それなりに見れる男だしな。しっかり裏も洗ってある。
「うう・・・あの人も早めに洗ってほしかったです」
いや、お前ののめり込みかたも速かったって聞いてるけど。
「それは・・・そうかもしれません」
で、話を戻してさ、フィッシャートロプシュでさ。
「はい、それで合成の排熱を水に吸収させて蒸気タービンを動作させて発電・・・神栖ですか?」
わかる?
「流石にわかりますよ。コークスガスを利用したコンバインドサイクル発電のガスタービン段をバイパスしてFT法で石油を作って、その排熱で蒸気タービン段を稼動させるということですよね?」
その通り。課題があるが何だと思う?
「・・・課題ですか・・・と言うことは、稼動中の火力発電所が神栖にあるんですよね・・・その稼働中の火発が定期点検とかで長期停止にならないと改造ができない。その上、それって他社の持ち物・・・東電とか・・・なので改造許可がおりないとかでしょうか」
それでだいたい合ってる。合ってると仮定したとき、それをどう解決しようとする?
「えっ・・・難しくないですか?場所も限定されているでしょうし、FT法で作った油は触媒にもよりますけど、軽質原油っぽいものでそのまま使いづらそうですけど・・・まあ、ボイラーやディーゼルなら動きそうですけど」
肝心の改造については?
「うーん・・・都合よく耐用年数が来たんなら、そこに合意の上実験炉ってことで入れるくらいしか思いつきませんが・・・」
そんなところだろうね。軽質原油っぽいのは確かにディーゼル機関とかなら動くだろうけど、他にはどう考える?
「どう・・・でしょうか・・・あまり思いつきませんが」
神栖には鉄屋だけでなく石油コンビナートもあるよ?
「あるんでしょうね・・・ということは原油から分留しているということですから・・・軽質脱硫原油として販売する、くらいでしょうか?」
一つの手だね。売れると思う?
「CO2フリー原油・・・ん、カーボンネガティブ原油になるのかしら?」
まあ、コークスガス由来ならカーボンネガティブって・・・
あっだめだ。原料が石炭だからニュートラルと言い張るのが精々だね。
でも捨ててる排熱を回収してFT法してるっていうのと、例のリサイクル工場由来のプラスチック原料の比率を公開する。・・・これもネガティブじゃないな。
あとは本来気体分留は秘密なんだけどどうにか大気中の二酸化炭素を回収できる技術をでっちあげて、工場というか工業地帯の排熱を利用することにより空気中の二酸化炭素を効果的に回収できている・・・まあこれは本当にできちゃうんだけど・・・これらの比率を合計して、ちょいポジ、ややポジ、ネガティブでトータルでネガティブになるとすればいけるかな?
「それなら売れると思います。二酸化炭素の回収をどうやって正当化するか見物ですね」
意地が悪いな。・・・ちなみに、いくらで売れる?
「・・・タンカーで運んできた原油と同じ単価になるなら売れます。少し高くても大丈夫かもしれません・・・つまり、それを計算しておけ、ということですね」
明日でいいよ。もう夜だ。
「はい、わかりました。為替と原油取引価格は変数にしておきますね」
よろしく
「でも、CTO 、これって、耐用年数が来た炉があっても、交渉する前にサンプルの原油が必要じゃないですか?」
そうだろうね。FT法の難点はなんだったっけ?
「反応開始に膨大な熱が必要、石炭やガスの改質にもエネルギーが必要、設備が巨大、あたりでしょうか」
水蒸気改質とかをすっとばしてFT法のコアのところの原料は何?
「CO と Hです」
何日か前に高効率アルカリ水電気分解触媒の話、読まなかった?
「・・・そういうことですか・・・二酸化炭素は気体分留で大気中から直接収集ができる・・・水はそれこそ純度を気にしなければいくらでもある・・・高温槽に水蒸気と二酸化炭素だけを入れて触媒で一酸化炭素化する・・・吸熱反応ですよね?なんか熱源欲しいですね・・・で、別途アルカリ水化した水から水素を作る・・・酸素はどうしましょう?まあ、大気開放でもいい気がしますが・・・そうすると、最初の高熱高温とかなくてもFT法が成立する・・・ああ、そこで重力波エンジンですね?・・・えと?完全にカーボンネガティブじゃない?」
まあ、酸素は地中にタンクがあるから圧力掛けて液化しとこう。もう、少しだけあるけどね。純度の高い酸素は反応材料として有用だよ。
あと、液体窒素も液化二酸化炭素も高温槽も、ついでに読みは一緒だけど恒温槽も作ってある。
「そういえばフリーズドライ回収の話、ありましたね・・・べつに私が来なくてもFT法自体はできたんじゃないでしょうか。いや、まとめておきますよ?明日にしますけど」
そうね。火無瀬がいなくても出来たよ。でもまとめてもらうにはお前がいたほうがいいな。オレの構文だとなかなか理解してもらえなくてさ。
「あの文章や式ではそうなりますよ・・・まあ、自分が役に立てると思うことが今は一番の薬ですから・・・わかりましたよ・・・」
で、火無瀬が来た方式が重要なんだよ。
「あのドローンですか」
ここでFT法で脱硫原油や、荒っぽいディーゼル燃料っぽいものが作れたとして、何が問題?
「・・・利用用途がないですね。もしくは輸送手段がない・・・そういうことですか・・・エラく高コストな輸送手段ですね。まあ、提案時のサンプルにはなるでしょうけど・・・」
まあね。たださぁ、アレの電気代、ほぼゼロだからさぁ。一見高コストに見えるんだけど、別に大したコストはかかんない。ドローンの減価償却だけだね。
「それでも高いとは思いますが・・・使わないより使いたおしたほうがいいかもしれませんね。でも、仮にISOコンテナ使うとすると、20ftの石油製品用の液体コンテナですよね?」
多分ね。
「あれ、空荷でほぼ4tありますよ?25klくらい入るはずですので、30tですよ?飛べます?」
あれってローター面積に比例するけど出力も大事だろ?
あのモーター、一種のリニアモーターで、中心にモーターがついてるんじゃなくて、ローターの保持枠っぽいのがモーターに見えないけどリニアモーターなんだよ。だから電力を入れられるだけ入れればローターの翼の失速速度まではパワーは出る。
「まあ、パワフルだとは思いましたが・・・発進のときもすごかったです」
どうすごかったの?
「よくない組織の方が地上に潜んでいたらしく、垂直カタパルト発進でした」
そんな機能なかったと思うけど。
「本来地上までエレベータを上げてから発進のはずですが、まだエレベータが地下の状態の時に、機体を電磁石で強力にエレベータに貼り付けながらローターも高速にぶん回しておいて、電磁石への電流カットオフで地下からズドンと飛び上がりました」
あれはコンテナの保持と、脱落検出のためのものだったはずだけど・・・そう言われればそういう使い方もできなくはないな・・・
しかし危ないことするなぁ・・・
「私が意図してやったわけじゃないですよ?社長の指示か開発部の誰かの思い付きでしょう?」
そりゃそうだ。空力とかそれほど理解してないけど、要は微分不能点っぽいものを作っちゃうとバグの元だからさぁ。
流石にシミュレーションは回したと信じたい・・・
「まあ、微分不能になりそうな挙動でしたねww」
だから危ないって。まあいいや、で、ローターの枠側がエネルギー消費側でローター自体は磁力で浮いて高速で回るだけなんだ。
「その方式だと摩擦もほとんど無いですね・・・そもそも、あれに載せてる重力波エンジンって、どれくらいの出力があるんでしょうか?」
放熱状態と燃料消費も関係するから一概には言えないけど連続定格出力的に言うなら80MWくらいなら出せると思うよ?
「燃料っていってもパーチですよね・・・mc ですから無限みたいなもんですし・・・しかしメガワットですか・・・正に桁が違いますね。ざっくりで十万馬力以上ありますね・・・でも、一般的にはそういう機関って排熱もものすごいはずなんですけどね」
そこはまだ研究中。取り出せないダークエナジーの一部がそのため・・・エントロピーの打ち消し・・・に消えてるんだろうとは思うんだけどね。
ま、あんま熱力学とかやってなかったしな。
「軽すぎません?」
いいじゃん。じゃ、また明日
「・・・おやすみなさい」
おやすみ。




