鹿島共同発電所
ちょっとワガママ言ってもいいかな?
「なんだ?火無瀬さんのことか?」
違う。鹿島に火発があるだろ? あれ買えないかな?
「・・・俺の、今や全く付いていけない知識でも、何をしようとしているか、わからんこともないが、アレは元が国策会社に近いものがあるからな・・・」
まあ、そうだよな。考えてることを実現するには、ぶっちゃけ、あれがいいんだよ
「理解はするが・・・そういえば火無瀬さんの様子はどうだ?」
おかしいはおかしいが、普通になりつつある。公安って自国の国民にも容赦ないんだなってことは理解した。
「まいったな・・・社員を守れなかった愚かな経営者だよ・・・」
それは・・・本当にダメにされてしまう前に救い出せたということでいいんじゃないか?
まあ、何らかの薬品だろう・・・もう二週間だから、あとひと月とか、最大でも三ヶ月もあれば抜けると思うぞ。
「普通の医者じゃわからん薬品なんだろうな」
オレもそう思うが、特に検査キットも思いつかないし、有機化学はさっぱりだからな。
「念の為聞いておくが・・・」
やってねーよ。それどころか、こっちは全身なにかに覆われた状態でしか接していないって。
「ちなみに、具体的には、どう、おかしいんだ?」
言動は落ち着いて、最初のようにどこでも検査したり見たりしてくれ、というのは無くなったし、メシも普通に食ってる。
「メシはどうしてるんだ?」
まあ、冷食のキットだよ。面倒ないし、塩分少なめとか栄養素とか考えられているからな。
「お前と同じか。じゃあ、サプリとかも」
そうだな。一応水溶性ビタミンは過剰なくらいに、脂溶性のものは微妙に必要量以上くらいになっているはずだ。
「風呂はどうしてるんだ?最初は洗面台だけだったんだろう?」
さすがにキツいだろうということで、風呂は許可したよ。オレが風呂に行くときには自室とトイレ以外には行けない状態にしてさ。
「そんな隔壁ないだろう?」
ああ、隔壁じゃない。電撃網を起動して、許可されたところ以外に行こうとするとビリっとくるようにしている。
「・・・非人道的・・・と、言おうと思えば言えるが、別に許可された範囲なら何も起こらないのであれば・・・」
まあね。オレもやることないから鍛えたと言えば鍛えたし、力ならヒョロガリの昔よりはあると思うよ?
でも女を殴るなんてオレにはできそうにないからさ。
それに、実際おとなくしている。実際に電撃を食らったことはないよ。
あ、最初のちょっとヘンだったころ、試しに食らってみたい、といって、一回だけ足をチョンと出してバチっと行ったことはあるな。
「まあ、好奇心と言えば好奇心だろう・・・で、今のところそれほど、おかしい、という感じはしないが、どこがおかしいんだ?」
元の生活を知らないから、もしかしたら以前からそうだったのかもしれないだけどさ、あまり服を着ないんだ。ブラだけ、とかさ。
「ほぼ全裸ということか?」
そう。
「大丈夫か?」
慣れた。最初はちょっとアレだったが、ずっとだからすぐ慣れたさ。
「なるほど・・・まあ、自宅では裸族というのも居るらしいから、自分とは違うが、それだけだとおかしいとは断定しづらいな」
まあね。たださ・・・その部屋にはプライバシーはないよ、あちこちにカメラやマイクがあるよ、と言ってあって、明らかにこれは監視カメラだよってのもあるんだけどさ。
「そういう部屋なんだろうな。俺は見てないが」
だね。そういう部屋なんだけどさ、その明らかに監視してますよーってカメラに向かって、大体一日一回おっぱじめやがんだよ。
「・・・それはセルフサービス的な何かというやつか?」
そう。通販の雑誌とか渡して欲しいものを電子ペーパーに書いて渡せっていったらさぁ、いわゆる大人のおもちゃ的なものを書きやがって、まあ、いいか、と思って渡したんだけどさぁ・・・
「それは・・・ちょっとおかしいと言えばおかしいな・・・見せたがりというやつなのか・・・」
するなとは言わないよ?オレだってしないことはないし、寝てるときについでにするとかなら別に特に何も思わないよ? たまたま見ちゃったら、するんだ、って思うだけさ。
だけどさー、わざわざカメラに向かってすることないだろ?しかも予告付きさ?
「予告?」
24時間見張っているわけでもないし、声を聞いてるわけでもないから、基本はチャットなんだよ。
「まあ、妥当なところだろうな」
そこに何時ごろからします。って書いてあるんだよ。
「確かに普通じゃないな。毎日見てるのか?」
一回目はちょっとアレだったけど毎日見てたら飽きるよ。あいつには悪いけど。
「ある意味、同じ女優、というわけか」
しかもシロートのな。
でも逆を言えばおかしいところはそこぐらい。
「まあ・・・裸族で見せたがりね・・・特にそういう印象はないが、そういう性癖があったかどうかは・・・ちょっと分からないな。聞きづらいが元の部署のメンバーに聞いておくか?」
まあ、別にいいよ。特に問題ないし。まだ、直接会ったのは一回だけだし。
「ん?モノや食事の受け渡しはどうしているんだ?」
火無瀬が部屋にいるのを確認してからロックして、ワゴンをその部屋の前に持ってっている。で、オレが戻ってからロック解除だ。
「食事は?」
冷凍だから、いっぺんに届けているよ。最初からその部屋には冷凍庫も電子レンジもあるからさ。
「それ・・・孤独のほうでおかしくなっているかもしれないぞ」
孤独?・・・まあ孤独と言えば孤独だが・・・それほどか?
「お前は慣れているかもしれないが、普通の人間は人と会話する機会が無いことそのものがストレスになることもあるんだ」
まあ・・・わからなくもない。
「しかも、今はお前からの一方通行だろう?しかも声だけ。あとはチャットか・・・それは何かアピールしたくなるかもしれないぞ?」
・・・まあ、ここにいたら絶対オレが女とやってないってのはわかるからなー。
その可能性は・・・考えていなかったが・・・ありうるかーー。
ここに生の女がいますけど、需要ありませんかーって感じなのか・・・
朝と夜に1 on 1というか、モニタ越しの会話時間を作ってみるか。まずは。
「それはいいかもしれないな」
それで改善するか、様子を見るよ。
「オーケー。おっ、さっきの話だがダメモトでとある所にチャットを入れておいたんだが、反応が来たぞ?」
なんの話だっけ?
「火発だ。老朽化した何号機とやらの建替えをしたいが資金が無いという話が来た」
金か。お前の得意分野だな。
「ま、そうだな。発電所そのものは買えなくても資金と引き換えなら色々ブチ込めるな」
頼むよ。火無瀬はさっきの案で様子を見るさ。
「そちらもよろしく頼む」




