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偉くなるのも大変です。

「吉岡副局長代理兼先進建設工業推進課長、本日午後という急なアポですが、スケジュール的には受けてもよろしいのですが、例のフィクサーを気取ったご年配の紳士殿の組織の方です・・・受けてもよろしいでしょうか?」


吉岡です・・・なんか凄い長い名前の課の課長に祭り上げられただけでなく、副局長代理、局長不在の際に局長の職務を代行する権限まで与えられてしまいました。


通常の技官では有り得ない大出世です。

先進建設工業推進課というのは例の会社、JSH に対応するための専門の課と言っても過言ではありません。

今まで室長待遇だったときにも、部下なんていませんでしたが、今では30人からの部下がいます。この省の課長としてはかなり少ない数の部下なのは事実ですが。


一応、課長の仕事の研修もしっかりと受けられた・・・普通は引き継ぎなどでなかなかしっかりできないのですが、私の場合は引き継ぐ仕事がない・・・ので、なんとか仕事はできています。

局長不在時に課長が判断する場合も無くはないので、課長研修で局長代理行為についてもある程度は触れています。

その時が来たらテンパるのは目に見えていますが。その時はその時です。


課長研修でもしっかり教育されたのが、政治と省庁と付き合い方です。


政治家は利権を求めがちですが、結果として国や国民によいことをしているのであれば、それは止めるべきではありません。

そもそも、昔のようにあからさまに私腹を肥やすようなやりかたはできなくなっています。


フィクサーを気取ったご年配の紳士殿、とは持って回った言い方ですが、与党の重鎮の腹心の政治家くらいの認識で問題ありません。

重鎮の政治家さんからはいざというときに切り捨てられる覚悟と引き換えに、ある程度の権限を得ている政治家さんということです。


結構な年配の方ですが、エネルギッシュで大変に対応に困ることをおっしゃってくる方です。

まあ、政治団体なんとか会を作り、現実的な実行部隊なんかもお持ちです。

政治団体の名刺で来るのか、会社の名刺で来るのかは、わかりませんが、探りを入れに来たか難癖を付けに来たのか、というところでしょう。


とりあえず、待っている若い職員に安心感を与えるのが重要でしょう。


はい、あそこの方ですか。午後三時であれば30分程度お会いできますとお伝え下さい。私一人で対応できますよ。


「でも・・・あそこは暴力的な噂もありますので少々技官・・・失礼、課長お一人では心配なのですが・・・」


まあ、殴り合いとかになれば数秒でノックアウトでしょうね。でも省内でそこまではしないと思いますよ。

ご心配なら、後ろで立っていて下さい。あなたも格闘技的には私よりは良い、という程度に見えなくもないですが。


「まあ・・・本当の武闘家から見たらそうでしょうね。一応高校のころ柔道で県大会でちょっとは勝ち上がった程度ですので、大した腕前でもないですが、一応黒帯です。お守りするくらいであればお役に立てるかと」


おや、失礼しました。柔道黒帯ですか。私からすれば数段か十段以上は格上ということになりますね。

では、随伴をお願いします。


「まあ、女子で体重別ですから、大した強さではないですが、それでも本当の素人よりはマシだと思います」


私は本当の素人ですから助かりますよ。


「いえ、失礼いたしました。そういう意味ではないのですが・・・では、3時からよろしくお願いいたします。5分前にお迎えに上がります」


どういう意図かは分かりませんが、まあまあ見た目のよい若い・・・といっても30歳くらいですが・・・の女性技官なども配下に入れられています。


たぶん、新進気鋭の技官さんなんでしょうね。将来的な幹部候補を育てるのも課長の仕事のうち、特に私のような定年間際で昇進した者にとっては重要な業務かもしれません。


JSH も、最近では工事部門ですら、男女比率を一対一に近づけるよう努力しているとは聞いています。それ以外の部署は最初から、あの開発部でさえ一対一でしたが。

建設技官も伝統的に男性のほうが圧倒的に多かったのですが、こちらも変わらなければ向こうに対応できない、ということでしょうね。


           ・・・


「政治団体頌栄(しょうえい)会の理事、来宮(きのみや)と申します。本日はご面会を許可いただきありがとうございます。」


来宮さん、よろしくお願いいたします。


「そちらの女性は・・・同室されていても問題ないのでしょうか?」


はい。局長の指示で同室させています。


「それでは・・・はい、お話させていただきますが・・・あまり若い女性に聞かせたい話でもないかと思うのですが・・・」


近内(こんない)さん、技官をしていくのであれば、男性、女性に関わらず、墓の下まで持っていくしかない話を知ることも多いです。

お覚悟が無ければご退出下さい。


「吉岡副局長代理。私も覚悟の上でこの場所に臨んでおりますのでご心配なく」


わざわざ上の階級で私を呼びますか。相手に対する威嚇にならないこともないですが。


「吉岡様は副局長代理までご出世されておりましたか。大変失礼いたしました」


まあ、肩書だけの話で、課長職なのが現実ですよ。


「何かお祝いの品などを・・・」


それは不要です。贈賄に当たる場合もありますよ


「失礼いたしました。ではお時間も限られていることですし、お話に入らさせていただきます」


よろしくお願いいたします。


           ・・・


内容ですが、確かに若い女性に聞かせるような内容ではありませんでしたね。


・例の国のスパイが JSH の女性社員を取り込もうとした。

・そのスパイは名も顔も変えていたが、公安のほうで把握され直されている段階だった。

・篭絡はうまくいき掛けているようにも見えたが、公安の捜査にスパイが焦ったせいで、失敗した。女性社員も薄々は気づいていたようだ。

・スパイは公安が捕え、尋問中の不幸な事故で亡くなった。

・JSH の女性社員も公安が任意で尋問をした。その際、一部の公安職員が暴走したようだ。

・JSH の社長が手下を引き連れて公安を急襲し、女性社員を取り戻した。

・そして、女性社員は失踪した。が、JSH としては、社内の異動ということになっている。

・どこに行ったかの想像は付くが、そこへのアクセス方法が無い。


なるほど・・・そんな事件に成っていたんですね。しかし、それを私に伝えてどうするんですか? 警察でもなんでもない省庁の課長に過ぎない私には公権力などありませんよ?


「いえ、この課も、吉岡様もあの会社に対応するためのものであるのは公然の秘密です。その、もし万が一にでもアクセス方法が無いものかと」


その前に公安の一部職員の暴走というのはどのようなことでしょうか。


「・・・その、それこそ女性の前ではあまり話せないような・・・」


「話してください!!」


近内さん・・・来宮さん、近内さんもこうおっしゃっているので話して下さい。


「あくまで伝聞です。その職員は女性社員を薬品で眠らせて、その・・・内臓部分にカメラなどを入れて何か出てこないか探ったと言われています」


無茶苦茶ですね・・・公安と言えどあまりにもあまりではありませんか?

そもそもあなたの組織の親分的立場の政治家さんは公安にも影響力がありませんでしたか?

逆にその影響力が災いすることも考えられませんか?


「はい・・・少々対応に苦慮しております」


それは・・・私に陳情してもどうにかなるお話ではありませんよ。

まあ、公安に強襲するなど、あの家のご子息でなければ難しい話ですが、押し通してしまったわけですよね?


「その認識です」


一応、個人的にも知己はありますが・・・相当怒ってますよ。それ。

基本的にはかなり温厚な方ですから。


「承知しております」


私にそちら方面の懐柔を求められても、特に出来ることはありません。

ウチの近内も相当怒り心頭という感じですから。


「副局長代理、申し分けありません。でも少々想像できてしまいましたので・・・」


近内さん、それは・・・女性として当然の感覚でしょう。私としてもその暴走公安職員は極刑だとしても・・・まあ、実際には使える人ならそのままなんでしょうけど。


「理解は出来ますが、締め落してやりたい気持ちは止まりません!」


やめておきましょう。殺人を普通の手段と思うような連中です。


「いえ、そこまででもないとは思うんですが・・・」


来宮さん、私は貴方と殴り合いでもしたら、数秒持つかどうかですが、国家公務員の倫理観として、自国の明確に違法行為をしているわけでもない女性に陵辱的行為をする国家公務員、エージェントというのは正直受け入れ難いです。


「はい、私としては吉岡様のご意見も理解いたしますが、大所高所に立った判断というのもございますので」


承知しました。来宮さんは大所高所に立った判断であれば妻や娘が陵辱されてもよい、というお立場なんですね。


「そこまでは言っておりません!!」


何か違いますか?実際そうなったとき、あなたはそれを飲み込むのでしょう?


「・・・・・・」


「課長・・・あの男、殴っていいですか」


それは許可しかねます・・・それに、最終的には勝てないんじゃないですか?


「今、脱力した状態だとしたら、首を折る、といっても実際には頚椎は折れませんが、無力化するくらいならなんとか」


アレに比べたらあなたは若い女子ですから、無力化されるのも楽しかったりしませんか?


「あーーー、無くはないかもしれませんね・・・本気で殺すのは無理ですから・・・そうか、楽しまれちゃうもあるかもしれません・・・前言撤回です」


そのほうが良いと思います


「副局長代理、吉岡様、・・・近内様、私を落としても殺してもかまいませんが、私が申し入れたいのは逆です。ウチのボスも、もう利権化は諦めています。中共、ロの国の介入を排除したい、だけなのです」


それだけでは多分不十分だと思います


「どういうことでしょうか?」


太平洋の向こうの同盟国。そこの介入も排除することが、ご案内を打診する最低限の前提です。


「!!!・・・まあ、軍事で言えば・・・理解できなくはないですが、今の政権では・・・困難かと・・・」


では、個人的なラインでは口利きは不可能です。

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