ゆかい丸、まさかの改造案
タッチアンドゴーができるようにするべきじゃないでしょーーーか?
「・・・それじゃ本当に航空母艦になってしまうのでは?」
船長、兼、夫、アレックスが答えてくれます。
はい、國本です。結婚しましたが、姓は変わらず國本です。アレックスが帰化したい、というので、戸籍的には私の戸籍に入ってもらいました。
息子ももうすぐ二歳、夫婦で乗船のときには一緒に乗っています。
二人の出会い? でもあるゆかい丸ですが。魔改造に継ぐ魔改造で、まったく原型を留めておりません。
元は明らかに赤い国の公開されていない強襲揚陸艇でした。
でも、何故か貨物船登録をされていてRORO船・・・実際にロールオン・ロールオフができる貨物船になっていましたが・・・燃費が悪い鈍足船として扱われていました。
ディーゼルエンジンで発電し、それでモーターを回してウォータージェットを発生させるのですから、燃費が良いわけありません。
静粛性や高機動性最優先な軍用船舶だった傍証です。
それを重力波エンジンによる電力供給という大技で超低燃費貨物船に改造したのが初代ゆかい丸。
双胴船の上に牛乳パックみたいな貨物ユニットを載せた船です。
これは14m機の輸送のためででっち上げた、と言っても過言ではない船で、巨大な14m機を運ぶことはできるものの、船としては色々問題がある船でした。
まず、見た目がカッコわるい。
そこかよ!?ってツッコミがあるかもしれませんが、船乗りというのは基本的にカッコ付けです。
なので、布施さん考案のシールド気動車・・・7m機を在来線の気動車の寸法に折り畳む大技ですね・・・と同様に、14m機も折り畳める構造にしました。私がしたわけじゃなく、布施さん中心で、メッチャ苦心してみんなで作り上げたものですけど。
14m機の直径は14.7m、長さは15mなのですが、これを、幅3m、台車込みで高さ3.8m、長さは30mなのですが、畳んだ状態では10mの三連節構造で、途中が少し曲げられる構造になってます。そうしないと交差点を曲がれないからです。
台車は電動貨車の応用で、電動のトレーラー台車です。
前後にシングルタイヤの舵輪、真ん中に荷重を受けとめるためのダブルタイヤが二軸付いており、30mでは12軸72輪というタイヤだらけの構造です。
これも、特殊車両通行許可を得るための苦肉の策です。
正直、本体の重力波エンジンから電力を供給して、自走できてしまうのですが、一応トレーラーヘッドに引いてもらうことにしています。
トレーラーヘッドも自社製作ですけどね。総括制御が必要ですから。
実際、通行ができるようになったのですが、現場では巨大な足場を組んでの組み上げ作業が必須です。
完全にバラして運んでいたときは、組み上げ自体に1週間とか必要でしたが、今の折り畳み式になってからは半日で組み上げができるようになりました。
現場でパーチから石板を作る必要があるので、補助の機器や、事前準備がいっぱい要りますけどね。
外板をシールドマシン本体でなくしてしまったので、輸送時の重量も軽くなりました。
なので、許可も取りやすくなりました。デカいけど、軸重でみたら大したことないな、的な感じです。
組み上げ、というか、14m機の立ち上げは現場でみると壮観です。7m機もすごかったですが、体積で言うと8倍?
7m機は膨らむ感じでしたが、14m機は長さが半分に縮んで膨らんでいきます。
そのとき、中空軸になっているダブルタイヤの軸は外に広がっていきます。先端の動軸は固定ですけど、そこ以外の動軸は電動で進んでいきます。
中空軸も無限に広がれるわけはなく、幅5.5m程度が限界です。
その上に14.7mの筒が乗っているわけですから、「よく倒れないなー」って思うような光景です。
なので、現地に足場が必須です。実はここは初代ゆかい丸の貨物室の一部を流用してます。そもそも14m機の運搬のための施設だったので、固定する仕組みなんかがあったわけです。それを運搬可能にして、事前に持っていけるようにしてます。
話が戻って、二代目ゆかい丸ですが、かなり船っぽくなりました。RORO 船なのは変わらないですが、無駄に高い全高ではなくなり、巨大牛乳パックと呼ばれた無粋な直方体柱でもなくなったので、見た目が船です。
あと、直径14.7mのシールドマシンを入れるために居住区とかの作りがメチャクチャ・・・一部斜めだったりしたのですが、それが無くなりました。
はっきり言うと貨物船としては異常に豪華です。船長室も、貴賓室(実質社長室)、客室も二名一室とか、狭いながらも個室もあります。
準個室として、例のカプセルホテルルームもあります。
男女別お風呂もシャワーも毎日真水!!超豪華です!!浄化槽も搭載しているので、クルーズ船とかで聞く汚水大量放出問題もありません。
まあ、ワンオペで動かせる船なので、お風呂はだいたい、片側だけ稼動ですね。アレックスと私だけだったら問題ないし、他の乗組員がいるときでも時間別で男女分けたり、私起点らしいんですけど社内恋愛も頻発しているっぽいので、ペア別とかで時間分ければ問題ありません。
転籍しちゃったけど、一応、元、商船大出身として、外洋の船上で使いもしない真水を捨てるような行為はもったいないと感じてしまいます。
いまでも充分にもったいない行為だとは思っていますけど。
あったかいお風呂があっても、外洋だと海水なのが普通ですからね。あんまり入った気がしないです。あれ。
でも、寒い海域だと温まるだけでも違うのでそういうときは入りたくなりますが。
まあ、それはそれとして、そんな二代目ゆかい丸ですが、左右から見ると大体船っぽい見た目、前後から見るとRORO 船っぽい見た目、水中から見るとウォータージェットの双胴船です。
では、上から見ると?真ん中がヘコんでいる航空母艦かヘリ空母っぽいんです。
長さは60mちょっと、幅は12mくらいしかありませんから、ヘリしか離着陸できませんけど、雰囲気的には。ミニチュア全通型甲板みたいな?
ブリッジは船の先端から10mくらいのところで、両翼の船体を繋ぐ、中空構造の真ん中にあり、まさにブリッジです。
その中央に操縦席やら、その奥の高いところに船長席がありますが、基本、一人で操船可能なので、飾りですね。
そもそもブリッジの厚みが3mくらいしか無いので、高いといってもちょっぴりです。
一応、左舷、右舷の高いところにも非常用の操船席があります。
そちらは、指紋、虹彩、その他生体認証で保護されているので、第三者による乗っ取りは困難なはずです。
ブリッジが生きているときはこちらで介入を排除できますし。
ディーゼルエンジンを取っ払った船体内部は、ほぼ、バラスト水区画です。
区画は結構分かれています。元からそういう構造でしたが、改造して浮力のためにそこそこ拡張してます。
バラスト水はウォータージェットの推進剤としても利用できますので、今でも強襲揚陸艇運用は可能だったりします。
載せてるのはトラックやトレーラー、シールドマシン以外では、精々建設用の重機くらいのものですが。
あ、そうそう、ゆかい丸は二代目になった今でも普通の貨物船、RORO 船です。
ということで、実は貨物輸送の予約が結構入っているんです。
最大で8m x 8m x 55m の自走出来る物体なら、基本分解とかしなくても運べます。
つまり、巨大重機を港湾から港湾に分解せずに持っていく、というのが、予想以上に需要がありました。
ごみ埋め立て処理場兼工業用地確保の埋立地というのは日本国内どこにでもありますが、これに使う巨大な建機はともかく輸送がタイヘン!
それに、そんなに一杯作っても需要がないから、余計な数もないそうです。
これの輸送は非常に儲かるお仕事でした。
建機を貸し出す側、借りる側にしても
・分解・組立にかかる時間がゼロになる
・部品の一部が事故などで届かなくなるというリスクがほぼゼロ。
・そもそも何もない所なので、特認を取らなくても自走させられる。
・港湾設備がなくても、ロールオン・ロールオフが可能(条件あり)
という、割高な費用を払う理由がめちゃくちゃあるお話だったのです。
ゆかい丸は遠浅の砂浜みたいなところ以外、ある所からは深くなる砂浜であれば接岸可能です。もちろん、潮位にもよります。
あと、輸送している重機が砂浜だとずぶずぶ沈んでしまうようなものだと事前に鉄板を引いといてもらう、などの措置が必要ですけど、ロールオフ用のバウランプ(船首のランプ)も長さ8mありますから、波打ち際ギリギリまで引いてもらう必要はないです。
あと、ともかく重たい重機を二台、アンカーロープ保持用に持ってきてもらう必要があります。二台合計で、ロールオフする重機のできれば二倍、最低でも1.5倍くらいの重さは欲しいです。
そうすれば、アンカーロープを重機に繋いだあと、バウランプを降ろし、ゆっくり重機に降りてもらいます。
この時点でゆかい丸は座礁したような状態から浮いた状態になっちゃいます。なり過ぎないようにバラスト水をどんどん吸い込みながら、ですけどね。
海岸で納品確認のサインなんかをもらって、乗組員は船内に戻ります。
そしてバウランプを上げて、水密確認をします。
一旦少し前進し、前部が着底するまでバラスト水を吸い込み、アンカーロープを緩めたところで、安全にロープを外してもらいます。
そしてロープを収納したら、舷側から盛大にバラスト水を吐き出します。
さらにフロントのウォータージェットノズルからもバラスト水を吹き出すことであっさり離岸可能です。
最後に、合計四つのウォータージェットノズルの向きを制御しながら噴くことで、バウスラスターでもついてんのかよ、みたいな船の回頭が可能なんです。
まあ、自動制御で、こっちはボタン押すだけなんですけど。
この特殊ロールオフは追加料金として一千万に近い数百万円を請求してますが、実際にはほぼお金かかってません。
外からみると盛大にポンプを回しているので、燃料をじゃぶじゃぶ使っているように見えるのは理解していますし、船が痛むように見えるのも事実です。
もっとも、損傷を避けるため、着底するところには追加のステンレス板が貼られてるんですよ。電食を避けるため、本体と同じステンレスです。
なので高いといえば高いですが、一回で使い捨てってわけじゃないし、神栖の乾ドックで検査もするし、経費としては30万円くらいかなぁ?
でも港湾整備をするのにかかる費用と比べたら、数百万なんて、端数ですからね。
逆に、それくらいの金額で大丈夫なんですか?と心配されることもあるくらいです。
そこで話が冒頭に戻ります。
RORO カーゴゲージの上には3.5mくらいの空間があり、その上がなんちゃって航空甲板なのですが、後端12mくらいは大型ドローン機一機分の離発陸エリアです。
離着陸は一機ずつですが、ロータを畳めば3m x 3m x 9m くらいに収まるので、積載は3機まで可能です。エレベータから左右にスライドさせるのと、一機はエレベータに乗りっぱなしですね。
前端、バウ側は小型ドローン用エレベータがあります。こちらは暫定で試作機サイズのエレベータがありますが、まあ、また改造するんでしょうね・・・
大型機の実用化が優先されたので、小型機は社長が大胆不敵にも一番最初に操縦してノリさんを拉致してきた試作機と似たサイズの機体が、微妙な仕様違いで何機か作られただけです。
大型機の仕様も完全にフィックスしたわけではないですが、火無瀬さんを載せて飛んでいったやつが先行試作機です。データを取れたみたいなので、小変更でファイナルになると思います。
自動操縦で15人乗り。下部にコンテナリフターがあり、重さに制限はあるけど、20ftまたは31ftコンテナを吊り下げ可能・・・
なので、開発部では構造材は高強度軽金属、板はエンプラ、エンジニアリングプラスチックやグラスファイバーでコンテナを作れないか、という研究を自分メニューでやっているメンバーもいるみたいです。
鉄のコンテナじゃ、それ自体が重すぎだもんね。
凄まじく話が遠回りした気がしますが、ゆかい丸の甲板部分に少なくとも100ftちょいくらい、コンテナを積載できるスペースがあります。前後の離着陸スペースを除いたところです。
重量配分の関係で、コンテナ船みたいにはぎっしり置かず、左右の船体寄りの端に一列ずつに置く話になると思います。双胴船の双胴の重心位置付近ですし。
これを真ん中に移動させる機構を作れば、コンテナを降ろしてから着艦、発艦してからコンテナ緊締が楽になるじゃないかって話をアレックスにしようとしていたわけです。
我ながら話が長くて遠回りです。ねっ、船長?
「二人きりのときはアレックスと名前で呼んで欲しいと言ったじゃないですか、ゆりこさん」
そうね。アレックス。この子も無事育ちそうだし、今度は女の子が欲しいかも。
「ゆりこさん・・・あっちのほうは淡白なものかとも思ってましたが、いつも積極的ですよね。はい、わかりました。仰せの通りに」
日程を計算するから、ある程度溜めておいてね。私を楽しんで。私も楽しむから。
「はい、開発本部船舶技術部部長殿」
いじわる・・・
「からかってごめんね。ゆりこさん」
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