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清水さんの決意

みんなから聞いてて、こういうことになるんじゃないかという危惧はしてましたが、こうなっちゃいまいたか・・・


火無瀬さんのことです。


本人達は隠していたつもりかもしれませんが、二人で呑みにいっているのもみんな知ってましたし、第一火無瀬さんが上機嫌すぎてバレバレでした。


私のところには社長から鈴木さんが長時間掛けて浸透するつもりの『草』らしいという情報も来てました。


社長も


「あと三年くらい掛けられていたら手遅れだったかもしれないな・・・急にあわてて動き出すなんてスパイらしくない・・・おかげで助かったんだが」


などと、ドラマの中の人のようなこと言ってました。


先日の朝礼で、火無瀬さんが既に清滝工場に赴任したこと、鈴木さんは懲戒解雇になったこと、ガンさんも管理不行き届きで減給10%一ヶ月と訓告処分になったことが告げられました。

その上で一層スパイ行為や、男女ともハニトラや社外との恋愛に注意するように呼び掛けがされました。


こうなってみると、当時は突拍子もない思い付きと行動に見えた國本さんの電撃結婚からの出産と現場復帰が英断だったのかもしれない、と思えます。


本人の希望していた

・子供が欲しい⇒男子を出産

・ゆるく長く付き合える旦那が欲しい⇒船長と結婚・・・ゆるい?のかなぁ

・まだまだ研究・仕事をしたい⇒あっさり復帰

を、全て実現してしまったんですから。


あ、体外受精とスクリーニングなんてことはしませんでした。

普通にして、普通に妊娠したそうです。

無痛分娩とやらをしたそうですが、それでも分娩直前と、出産後の体が戻っていく時期はそれなりに痛みなんかがあったそうです。


アレックス船長との仲もよく、見た目は普通に新婚夫婦してます。


他の開発部男女も内部で付き合ったりしはじめている人もいるようです。


まあ、みんな学生時代からの知り合いらしいですからね。


問題は私です。


そもそも、貧乏ではありませんでしたが、地元の母子家庭出身です。

市立の商業高校に行かせてくれただけでも母には感謝してます。


高卒ですが、地元の中堅建設会社に就職できて、平社員女子だったのが、なぜか総務部長なんかになり、今ではそれなりの高額所得者です。


母も母の事情・・・というか、独身男性と再婚して、この街を出ていきました。

私は就職したのでしかたなくアパートを借りて一人暮らしとなったわけです。

まあ、それまでもアパートでしたが、高卒新入社員の給料なんて安いものですから、もっと安いとこに移ったわけです。


母は保険外交員というやつで、それなりにはお給料が高いらしく、貧乏で苦労したことはありません。

ただ、高校生くらいになるとわかっちゃうんです。


このひと、どこかの男と付き合ってるんだろーな、ってことくらい・・・


なので、内定が決まって、高卒が確定したころに聞きました。


「ママ、私はパパじゃない男とママが付き合ったり、結婚したりしても、その男が自分のパパにならないならかまわないよ?」


母は大変驚いた様子でしたが、


「分かるの?」


「校外の彼氏ができてウキウキしているクラスメイトみたいな雰囲気は出てるよ?」


「出ちゃってたかー・・・。はい、真面目にお付き合いしようかとお話している男性はいます」


「不倫とかじゃないよね?」


「お互いバツイチだけど不倫じゃないわよ」


「ならいいよ。もう、就職するから、そこまではママが保護者ね?」


「もちろん。そのあとだって、ママがあなたのママなことは変わらないわ」


「でも、引っ越すつもりでしょ?」


「なぜそう思うの?」


「このあたりじゃないアパマンのフリーペーパーとかあれば気付くよ」


「・・・」


「四月は給料が少ないから、できれば引っ越すのは六月よりあとにしてほしいな」


「はぁ・・・、あなたも大学いったほうがよかったと思うわ。頭も悪いわけじゃないし・・・」


「うーん、いまさら別のパパはいらないから、働くよ」


「あのね、あなたの名前で、銀行口座にお金を入れてあるの」


「それ、名義預金で税金の対象にならない?」


「商業高校だけあって税金も詳しいわね。毎年110万円ずつ、あなたが小四から9年間。贈与税の免税限度額一杯に入れてあるから大丈夫」


「ほぼ、一千万じゃん?大丈夫?そんなお金?」


「私立の大学にいったら、そのくらいのお金はすっからかんよ。一応、行かせる準備はしていたってこと」


「それは・・・ありがとう」


父は小三のときに病死しました。やさしい父でしたが、仕事は安定していなくて、日雇いみたいな仕事もしてました。

酒やタバコ、ギャンブルなんかはやってなかったみたいですが。


「あとね、会社の近くのアパートに引っ越したほうがいいわよ。通勤時間なんて究極のムダだから。そこの保証人にもなるわ」


「なんか、ママから手切れ金をもらってるみたいな感じ・・・」


「あなたがママの娘なのは一生変わらないわ。でもママの都合で迷惑を掛けるから、大学のために取っておいたお金を新生活のために渡すって感じかしら・・・」


「世間的にはそういうのを手切れ金という気がするよ・・・」


「あなたがそう思うならそうかもね。うん、来年の六月まではここで一緒に暮そうか?四月か五月には会社の近くのアパートにお引越し? お引越しのお手伝いもするわよ」


「まあ、このアパートにも街にも大した思い入れもないし、通勤時間が究極のムダというのは、通学で思い知っているしね・・・」


そう、高校は片道一時間以上、結構しんどかったです。。


「ママが外交員だから、外ばかりで、かなり前から洗濯も料理もカンペキなのは知ってるし・・・家庭的なことはママよりちゃんとできるしね・・・」


「カンペキってほどじゃないけど、ウチの高校には家政科もあるし、女子校みたいなもんで、調理実習なんかもあったしね」


「小学校のころからそれなりにできてたわよ?」


「まあ、そのころよりは上達してると思うよ」


そんなやりとりの後、本当に母は六月に去っていきました。

引越しの手伝いもしてもらい、この通帳のお金は最後の砦だから、なるべく使わないように、とまで言われました。


自分の初任給で個人携帯を買い、母の番号も登録しておきましたが、翌月くらいに通話したら『現在使われておりません』になってて、おーい、母よ。何が一生変わらない、だよ、と思いました。


「新しいパパはいらない」と言ったのは事実なんで、ま、いいかと思ってました。

           ・・・


最近、本当に結婚、交際の申し込みが多いです。今までまったく知らない親戚が増えました・・・


私の給与やら、会社の秘密やら、本当に重要人物になってしまったんだなあ、と感じています。


なので、社長に面談を申し込みました。


「清水さん、また、小言かな? 最近は・・・まあ、やらかしている自覚はあるが」


違います。


「では? どのような話題か教えて欲しい」


社長は、良くも悪くも名家の出身でそれなりの教育を受けていらっしゃいますよね?


「まあ、そう言えるな。家督相続とかは、よっぽどのことが無いかぎり無いが」


私は母子家庭で、後ろ盾的なものは無いんです。


「それは・・・知っているが、何か問題が?」


火無瀬さんと似たようなことになる可能性があります。


「何?どういう意味だ?」


社長にはわからないと思いますが、今の私の給料は、二十代後半、アラサー女子としては破格なんです。


「それは清水さんの重責にあった給与なだけだぞ? 色々とある会社だしな」


はい、それは分かってますが・・・確かに重責ですけど、すんごい給与ですよ?


「・・・もしかしてホストクラブにはまっているとか・・・」


違います!!。そういうのは無いですし、お金、銀行の残高は増える一方です!!


「では問題はないのでは?」


そういうわけにいかないのですよ・・・謎の親戚が増えてます・・・


「あー、そっち系か。でも、保証人になれとか、金を貸せも清水さんなら断われるのでは?」


はい、それは断われますが、見合いとかの釣書?というのですか?高卒女子には不釣り合いなものが大量に送られてくるようになりました。


「・・・難しいな・・・清水さんにとって、こうあればいい、という希望はあるの?」


あります。


「聞いてもよい?」


いいです。ただ、ちょっと社長にとって引く内容かもしれません。


「慣れてる。希望を教えて」


えーとですね・・・社長の内縁の妻にしてもらえませんか?


「は?」


内縁の妻です。これなら住民票で、妻(未届け)で実現できます。


「すまないが・・・どうしてそうなるの?」


自分を妻にしたい野望満載の人が予想以上に大量にいらっしゃいます。

その防波堤として、社長は強力です。


「それは・・・理解しなくもないが・・・いいの?」


ウチの母は父が亡くなってからは母子家庭で、社長が買収した会社に私が就職してしばらく経ったら音信不通になったんですが、最近復活しました。

わかりやすく言うとお金目当てです。


「まあ、よく聞く話ではある」


そもそも後ろ盾が無いので・・・以前から愛人扱いされてたアレがあるじゃないですか。社長が問題ないなら、助けてくださいよ。


「・・・助けてあげたほうがよい・・・のかな?」


別に、社長が私としたいなら、まあ、OKですよ?


「しかし、最初から内縁の妻扱いでいいのか?」


面倒な一族なんですよね?正式な婚姻をすると面倒でしょう?遺産相続とか。内縁の妻ならそれが無いはずです。


「それは・・・そうかもしれないが・・・」


社長は使えるもんは使えって言いますよね?なので、私が社長の内縁の妻ってことにすれば、私でなく、弊社の総務部長目当ての、他の縁談を断わりやすくなります。


「・・・まあ・・・あるかもな、しかし・・・」


現実的な話として、住民票に記載できれば婚姻届を出さなくてもいいということは学びましたので、今の状況より、社長の内縁の妻で秘書モドキのほうが楽です。

総務の研修とかで色々学びましたよ?まあ、こういうときに内縁の妻に権利が生じるとか、逆側の研修でしたけど。


「理解はできる。が、秘書とか愛人は無いと言ってなかったか?」


無いですよ。本当に無い・・・正確に言えば無かったんですが、そっちのほうがまだ安全かもと思うようになってしまったんですよ。社長も上流階級なら、しがらみだらけのお見合いやら結婚などの面倒な申し入れには慣れていらっしゃるんじゃないですか?


「・・・まあな」


アタシも社長をちゃんと愛せます!!

社長は私のことを何人かの妻のうちの一人として愛してくれればかまいません!!


「・・・ありがとう。でも・・・」


なので、いまのボロアパートを引っ越して社長のところに住民票を移します。

で、そのときに、記載事項を『妻(未届)』とすれば、内縁の妻になれるんです。

婚姻屆は出さなくていいです。

社長も、あぶないからもっといいところに引っ越せっておっしゃっていたじゃないですか。


「確かに言ったな・・・。まあ、うちのマンションはそこそこのセキュリティレベルはあるが・・・片付いているとは言えないぞ?」


母で慣れてます。掃除もできますし、料理班でちゃんと調理できるのも見てますよね?社長と私の二人だけでもやりますよ?


「そこまで言うか・・・まあ、その辺は信用しているよ。だがなぁ・・・」


私を引き上げてくれたのには感謝してます。でも引き上げられたことで面倒な感じになってますので、防波堤になっていただけますでしょうか?


「うん・・・責任があるかないかで言えば・・・間違い無くあるな・・・しかし、それはあまり普通の女子の選ぶオプションじゃないと思うよ?」


社長のウチみたいなとこなら、愛人や内縁の妻がいてもそれほど不思議はないでしょう? 内縁なら遺産相続にも影響ないですし、主張もしません・・・。


ほんと、助けてください・・・

唯一の肉親の母も・・・あんまり信用できなくなってきちゃっているんですよ・・・


「はぁ・・・わかったよ・・・こんなあっさり決めることじゃない気がするがな・・・」


ありがとうございます。


ふつつかものですがよろしくお願いいたします。


「ちゃんと定番のセリフを言うんだね」


言わせて下さいよ!!

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