久々登場清滝工場
社長、おはようございます・・・というか深夜ですが。
「おはよう、火無瀬さん。運ばれる覚悟はできたかな」
まあ、選択肢ないですし。
「うん、ダブルチェックにAIチェック、データ的には何回もチェックをしてOKという判定にはなっている」
野川の防災工事の時に作ったあの通路を使うのは私が始めてですか?
「単に通る、のではなく、ドローンで通るのは君が始めてだ」
光栄です。
野川の防災工事というのは比較的最近の案件で、初の14m機案件でした。
カンタンに言うと、川の地下に大雨時の迂回トンネルを作る、という工事です。
それ自体は普通にもうかる案件だったのですが、その時、交渉で小金井と調布のクリーンセンタのある対面の公園の中に発進基地を作らせてもらいました。
実はそれが今の新社屋です。
見えるところは、地上二階建のちんまりとした建物ですが、地下は広大です。
シールドマシンの発進基地も今だに兼ねてます。
それと、野川の工事の時に多摩川に逃すトンネルだけでなく、調布飛行場の隣にある雨水浸透池に越流対策として一本トンネルを掘っています。
それだけじゃなくて、調布飛行場に直接出ることができるトンネルとエレベータまで作ってしまっています。ここも14m機で掘ってます。
衛星画像だと、調布飛行場の滑走路の北端に、四角く芝生が切られているように見えるところがあるかもしれません。
14m機は直径14.7mですから広大です。有人ドローンも飛行して行ける太さです。
「新型はトイレも付いてはいるが、地上側のタンク洗浄システムがまだ未完成なので、できれば使わないでほしい」
わかってます。トイレも済ませてきました。
「わるいが見送りは私だけとなる。では、起動する」
・・・これが飛ぶんですか?まるでミニバンを一回り大きくしただけのものにも見えますよ?
「まあな。でもこれでも空力的には効率的なんだよ」
タイヤまで付いてますが
「降着脚だ。滑走路や道路を走行する可能性もあるからな。それに離着陸時のショックも小さい」
まあ、それはそうでしょう。まあ、ローターも上下用と推進用が付いてるみたいなんであきらめて乗りますか。
「一応操縦席に乗ってもらうが、非常時以外には操縦はしないでいいはずだ。資格はあったよな?」
ドローンの操縦資格はありますが・・・認可をくれた国もこんな巨大なドローンは想定していないはずです。はい、座りました。ベルトもOKです。
「では、スタートボタンを押してくれ」
タッチパネルですけどね。はい。
畳まれていたローターが展開され、回り始めました。
ローターの回るモーター音が強くなったかな?というくらいでふわっと浮きました。
「では、暫しの別れだ」
はい。では、いってまいります。
社長の声はもう、コクピットのスピーカーから聞こえています。
地下倉庫から浮きあがったドローンはいつの間にかシールドトンネルに入っていました。流石に広大ですね。
ドローンと呼んでいますが、大きさ的にはバスです。約ですが、幅3m、高さ3m、長さが9m。ローターを開くと幅も約9mになります。確かに14m機のトンネルでないと飛べませんね。
社長、飛行場の地下ピットが見えてきました。一旦着陸ですか。
「自動で停止するはずだが、手動介入してもかまわないよ」
しませんよ。はい。停止しました。最前列は上も多少は見えますから上部ハッチがスライドしているのが見えます。こっちは真っ暗ですからね。
「深夜だから誰もいないはずだ。まあ、誰かいたらどっちにしてもよろしくない関係者だろう。手でも振ってやってくれ」
拳銃でも持ってたらどうしましょうか?
「拳銃なら問題ない。アサルトライフルだと防弾性能的には少々心許ないな。数発なら持つはずだが」
えと、これ、時速数百キロでちゃうんですよね・・・穴が開いてると寒いと思います。
「まあ、こちらでもモニタしている。いないよ。物陰に事前に隠れられたらちょっと見えないが、発進でカバーする」
いやな予感がします。
「数値データ的には大丈夫だ」
その声と同時にローターが爆速回転し始めました。まだ地上に上がっていないんですが・・・しばらくして、ゴンっという衝撃とともに急上昇したかと思うと滑走路の上空10メーターほどを高速で南に移動しはじめました。
ああ、そういえば電磁石でベースにくっつく機能とか見た気がします。上昇気流発生させておいて電磁石で離陸しないようにしておいて、そこへの電力カットで一気に急上昇ですか・・・乱暴です。
少しずつ高度を上げながら滑走路、公園、道路の上を通って、中央高速の上でギュインと曲がりました・・・発進も転回も乱暴なデータです。
万が一を考えればそうする理由はわかるんですが・・・。
中央高速の上を進むのは200km/hくらいでしょうか。性能的にはもっと出るんでしょうけど、まだいろいろβですからね。
社長が周囲の制止を振り切っていきなり操縦した初号機と比べると貨物スペースが無くなっています。
そのかわり、31ftコンテナをトップリフター的なもので掴んで飛べるという、ある意味とんでもない貨物積載量になっています。
まあ、その分、飛ばす手順はなかなか面倒なようです。
なんて言ってるうちに多摩川で・・・あれ、多摩川の上を飛ぶんだ。送電線の横って聞いたとき、ちょっと怖いかもって言ったんで反映してくれたのかな?
あ、でも横田基地のそばも通るので、高度を落しておきたいってほうが大きいかもしれません。
そして秋川のほうに曲がることもなく多摩川上空を青梅のあたりまで飛んでいきます。
そこでまた激しく曲がると青梅市内の圏央道の掘割の上を飛んでいきます。
このまま鶴ヶ島JCTまでいくのかな、と思ったら、八高線のあたりで高速から逸れて、八高線の上を飛んでいきます。
まあ、そっちのほうが田舎だし、鉄道の上ならそんなに起伏もないよね、とは思います。
このあとどうするのかなーと思ってましたが、寄居のあたりで高速の上に戻りました。
なるほど、人口があるとこの上は高速ってことね。
高崎・前橋を過ぎて、利根川の上、そして吾妻川の上を飛行していきます。
ちなみに高度は低いですが、この車体の色は艶消しグレーなので、地上からは見えづらいでしょう。
しかし、この高度はいろいろと違法かもしれないな・・・と思いつつ、あっと言うまに清滝工場というかメガソーラーが見えてきました。
このメガソーラーは高効率変換で表彰されたりしていますが、真っ赤なウソで、重力波エンジンの電力も回しているだけの話だったりします。
私はあれの実現方法は知りませんが、止められないものであることくらいは知ってます。
そういうことをしているので色々と欺瞞が必要になって、少し前に、山の上のほうを切り開いて、池を作りました。
何故か夜も少量ながら売電できているので、売電できる方式を作りだすことになったためです。
そう。揚水発電です。
吾妻川の近くの下部地下池と、メガソーラー頂上近くの上部池です。
下部地下池のところに水力発電所を作り、夜間の売電を可能にするのです。
正直、太陽光の調子が良すぎると、同時同量原則のため、売り切れない場合というのが多いのも事実です。
上部池は直径30m程度の開口部があり、周りの森よりもさらに高いフェンスで囲まれてます。
これは防衛のためもありますが、森の中に超深い池があるのも事実なので危険防止のほうが主目的ですね。
なにせ、めっちゃ深いんで。
で、揚水発電ですので、明け方近くには水位が下がっています。
新型機、火無瀬より清滝工場。フェンス内下降中ですが、受け入れお願いします。
『本当に来ちゃったよ・・・只今水位はマイナ30m。マイナ12~20mくらいのところ、12時の方向に幅20m、高さ8mののハッチを開けるので、てきとーに降りて』
雑な誘導ですね。12時の方向というのは、真北という意味でいいんでしょうか。
対地位置固定ボタンを押して手動で高度を下げていきます・・・
湖面の位置より下に来ましたので、着水しないよう、ゆっくりと、ゆっくりと・・・
あ、これですね・・・今度は高度維持ボタンを押してジョイスティックで微速前進・・・で、いいみたいですね。
で、着陸ボタンを押すと。
はい、降りました。
火無瀬より清滝工場。降着完了です。
『はいよー、侵入者無しみたい。ハッチ閉めます。その機体気密だよね。20分くらいそのまま待機』
はい?
『今降りたら火無瀬死ぬから』
えっ・・・すごいところに来ちゃった?




