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言う保身もあれば言わない保身もある

引き続き吉岡です。


事務次官といえば、国の中での偉さでいえば国土交通省大臣と同じレベルです。

しかも、コロコロ変わることも多い大臣と違い、叩き上げで出世競争を生き抜いている、つまり省内政治にも長けた公務員人生を貫き通し、一つの「アガリ」にたどり付けたとんでもない人物なのです。


一般企業でいえば超大企業の社長が、1 on 1 で定年間近の部長代理と面接するようなものです。


では、失礼して着席させていただきます。


「案外驚かないね。もう少し驚かれるかと思っていましたよ」


それは、米軍またはその中の特殊な組織に誘拐されたり、延々と地方で本来存在しないはずの室長をしていたり、今回も私ですら見聞きしたことのある秘書さんたちが暗躍したり、一応リフレッシュ休暇を取得した、ということになりましたが、社長さんにほぼ強制的に同行を依頼されたりすれば、大抵のことには動じなくなります。


「ははっ、それはそうだろうな。私が米軍に誘拐されたら、正直ちびってしまうかもしれません」


それは私も似たようなものでしたよ。正直よく生きて帰れたとおもっております。

話を進めるために結論から申し上げますが、あの会社には現代物理学を越えた何かは存在します。それは私の感覚で申し上げてよければ、米軍に拉致されたときのようなオカルトチックなものではありません。

論理的な『何か』ではあるだろうと思います。


「その『何か』に心当たりはないですか?吉岡さんは工学博士で技術士でしょう? 工学博士はともかく、技術士なんだから知識もアップデートされているんじゃないですか?」


私になりに考えたことならありますが、裏付けも何もありませんよ。現場事務所で、ここにある書類は全て自由に閲覧してよい、と言われたのでそれなりに見させていただきましたが、手掛かりはありませんでした。

特に例の重力波エンジン。記述さえございませんでした。

念の為言わせていただきますが、ペラ一枚すら見落すな、というのは一人で行っている限り無理です。

所長の机や現場監督など責任者の机も袖机ではなく、単なる板でした。

ご丁寧なことに、鍵のかかるキャビネットすらありませんでした。

パソコンは、私は警察ではないのでさすがにアクセスできませんでしたね。


「まあ、その程度には徹底してないとあれだけの秘匿は無理でしょうね。吉岡さんのおっしゃる通り、各党のセンセイ方もそれなりに活動されているんですが、何もわからん、と、何故か(ウチ)に問い合わせ・・・それも脅しめいたのが来るんですよ。裏付けがなくても、あなたのカンでもいいので話せることはありますか?」


パズルのピースが一つではなく、ごそっと欠けている有様と言えば近いと思います。

活動されている皆様も理解している通り、「建設残土からコンクリートめいたものが作れる」「無から電気を作れるとしか思えない」「凄まじい掘削スピード」この全てに重力波エンジンが関わっていることまでは確実ですが、公開されている論文を読んでも実現方法はわからないように記述されています。


「ですね。しかし現場で見て、触って、何なら船にまで乗ったんでしょう? しかも秘書さん達の追跡を振り切って。 しかも不可能なルートだそうじゃないですか」


それは局長にレポートを出しましたよ。次官に開示していないわけはないですよね?


「直接聞きたいんです。レポートは私が預かって読んだあと、局長には忘れるように指示しました。あんなものを紙で残してはよくないので溶解処理機でしっかりと処分させていただきました。そのために今時(いまどき)手書きで提出したんでしょう?

わざわざコピーすると反応する紙まで使って。

あ、盗聴も録音も心配しなくていいです。私もされたくない派ですから。もちろんレポート以上のことをおっしゃってもかまいません」


そう、国家情報組織的なものよりは劣るであろうが、省庁でもその程度の特殊用紙は用意されている。コピー機の光に反応してコピーされたという、消えない地紋が浮き上がる用紙だ。

見た目は横書きの便箋だが、局長レベルならこの紙はコピーすると反応するヤツだ、くらいの知識は当然ある。

今の日本国の中央官庁では、それを省内のコピー機で取ろうものなら警報がセンターに行き、警備の人間が回収に行くくらいの機密保持も実装されている。


撮影しようにも、CCD 等の電子部品を使った今どきのカメラなら、かなり写りづらい紙とインクになっている。

なお、昔ながらのレンズとフィルムだけのカメラにはあまり効果が無いが

今となっては貴重品・骨董品の上、目立つことこの上ない。

なお、フラッシュや強い照明にも反応して地紋が出るので骨董品でも撮りづらくはなっている。


特殊組織なら、そういう紙でも写せる小型カメラを持っていると思うが、省庁では用意されていない。


次官、わかりました。レポートには全て書いたつもりですが、もう一度話します。


           ・・・


「なるほど、非常に興味深いですね。レポートに記述されていた通り、電気推進にも関わらず、電源が不足しているであろうドローンと船舶。微妙に違法ではあるとは思いますが、立件は難しそうな移動ですね・・・」


まあ、国や警察がどうにかしようとすれば別件でもなんでも・・・


「それは社長の実家が許してくれない。流石にあの家の息子に対して微罪で逮捕なんてことはできません。どんなしっぺ返しを食らうか・・・第一、あなたも分かっているでしょう?」


何がでしょうか?


「航続距離が無限大に近い外洋航海可能な船と、こちらも航続距離が人間の生理現象次第という有人運搬、数百キロの荷物運搬が可能なドローン。あのお坊ちゃんだってタックスヘイブンの銀行口座もあれば、匿名投資組合など無限と言ってもいいほど持っている。少なくとも、あの会社のコアメンバーは日本に居住している必要がないんですよ」


確かにおっしゃる通りです。


「自分のサイフにしようとしているバカな政治家どもは本当にバカです。日本に居住していて下さい、どうかお願いします、と土下座をしにいくような話なんですよ。本来は。土下座じゃ意味がないから、何らかの立法をして、あの会社やお坊ちゃんだけ、税率を下げるような措置をして利益誘導をするような案件です」


凄まじい技術だとは思いますが、そこまでですか?


「それで毎年彼等関連からの税収が数億減ったところで対した損害はありません。20年くらいの時限立法にしておいて、仮に平均で50億円の効果があったとしても一兆円に過ぎません。その程度は彼等にとっては端金なのも事実ですが」


すみません。ちょっとお金のほうは詳しくなくて・・・そこまでの価値ですか・・・


「はい。なのであなたにも新設する課の課長になってもらいます。俸給も通常の課長ではなく、局長代理級です。肩書は・・・揉めそうですが・・・副局長代理兼課長にしようと思っています。さらに、定年延長の上、天下り先もいいところを用意しますよ。それくらいしないとあなたを取ろうとする人が増えすぎるんです。まあ、それが私の権限でできる最大限とも言えますが」


・・・それは予想外です。精々課長待遇の○○室くらいかと思っていたのですが・・・


「それではバカな政治家どもに付け入る隙を与えるだけです。あなたは日本の中央省庁でも、どんなに低く見積っても10位以内に入る重要人物になってしまったのです。自覚してください。で、可能であれば、省に在籍してください!!お坊ちゃんに対するのと同じで、これはお願いです!!」


この人がほぼヒラ技官の自分に対して頭を下げるなど想像もできなかった。彼の中では土下座に近いものがあることは理解できる。


承知いたしました。定年延長を受けいれ、役職を受任いたします。


「そうか!!ありがとう!! ま、全てを語ったとは思ってないが、それは自分でも一緒だからな・・・」


はい、おっしゃる通りです。

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