反則リサイクル
「プラスチックを石油に戻せるんですか!?」
落ち着け、清水さん、
プラスチックを石油に戻す技術は既にあるし、一部では使われている。
「え? そうなんですか? その割にはあまり聞かない気がします。リサイクルガソリンとか・・・」
ああ、ガソリンはいい例えかもしれないな。
清水さん、普段車を運転しないあなたにはわかりづらいかもしれないが、ガソリンの値段はわかるかな?
「高くてもリッター200円くらいかと。ニュースとかでもときどき話題になってますよね?」
そう。まあ、そんなもんだ。リサイクルガソリンだとリッター3000円、と聞いて買う気になるかい?
「え・・・15倍ですか・・・さすがにそれはリサイクルで環境に良いと聞いても総務部長としては許可しかねますね・・・重機の燃料費って結構すごい経費なんですよ・・・2倍でも難しいかと・・・社長が直接決裁していただければ一部なら認められると思いますが・・・」
そう。環境にいいことしてますよ。という御題目作りのためでないと難しい値段なんだ。
プラスして、研究を続けていかないと値段が下がらないから、研究のために作られてしまったものを自家消費する、くらいが関の山かな。
「あーー、それなら理解できます。ウチでも残土からシールドセグメント作って大幅に経費削減してますもんね」
まあ、あれは反則なんだがな。特にどこの規制にも法律にもひっかからないがな。
「もしかして、似たような合法的な反則を目論んでいるんですか?」
メガソーラーの解体で、なら、割と簡単にできる。
メガソーラーであれば、実験的な設備を除けば、全部同じソーラーパネルを使うのが自然だ。
「はい。わかります」
なので太陽電池の、ソーラーパネルの廃棄時に困る、仕様の違い、というものが無い、もしくは少ない。
「すみません、そこはわかりません」
布施君、頼む。
「また僕ですか・・・CTO居ませんし仕方ないですけど・・・まあ、リモートで聞いてて、あとで間違い突っ込まれるんでしょうけど・・・」
俺からもそんなことしないように言っておくよ。
「はいはい。じゃあ、多少の間違いがあるかもしれませんが、大枠で合っているであろう説明をします。開発部各位も細かい間違いは気にしないように」
「はーい」「うん」「お」「りょ」
「はい、お願いします」
「まず、ソーラーパネルの中で中核的な太陽電池モジュール。これはメーカーや時期により、有毒な砒素やカドミウムを含みます。ただ、同一メガソーラーの中でなら、極端に違うモジュールはないと思われます。精々が3~5種類かと」
「それでも一種類じゃないんですね」
「一種類も有り得ますが大規模メガソーラーとなると第一期、第二期、みたいに開発することもあり、その場合、コストダウンを目的として軽微な仕様変更が行なわれることも少なくないと思います」
「大規模マンションの売り方みたいですね」
「・・・あー、まあ、お金の回収という意味では似てるかもしれない・・・まあ、いいや。最悪、窒素雰囲気、さっきも出た窒素100%の空気の中で粉砕してしまえば、パーチで元素毎に回収もできなくないです。いや、できないか。できないな。面倒なことはあと回しにしましょう。プラスチックからですね」
「はい、後回しでとりあえずOKです」
「高温窒素雰囲気で気化、気体に分解されるプラスチックの組成がほとんど変わらないというのが大きいです。重量比でガラスに次ぐ重さで、ガラスをそのものはこの方式で分離してしまえば、ほぼそのまま回収可能ですから」
「プラスチックのガス化ですか、社長がチャチャ入れたとこでしたね?」
まあな。布施君、続けて
「はい。途中で仕様変更があったとしても重量比が変わるとかで、組成のほうはあまり変化がありません。画期的な新素材ができた、などがあっても普通は出たては高いですし、実績あるものを採用するでしょう」
「それは、部材の調達でもそうですね。わかります」
「なので、社長がおっしゃった、メガソーラーの再生プロジェクトでは、大量の同一仕様のソーラーパネルの再生事業を行うので、高効率でプラスチックの液化が出来てしまっても言い訳が立つのです」
「言い訳が立つ・・・なるほど・・・他所様ではマネ出来ない弊社の技術と言い張っているアレですね」
「そうですね。シリコンやガラスリサイクルは技術的に確立しているところもありますから、綺麗な板状であれば高く売れる可能性もありますから、ウチで独占しないほうがいい気もします」
「ああ、共存共栄で、みんななかよくと言い張っているアレですね」
「そう。ナフサの形だと保管が大変だから、敢えて5%メタノール+95%エタノール混和物を同量の水で割って50%水溶液で保管してもいいかもしれない」
「ナフサは聞いたことあるような気もしますがわかりません。エタノールはお酒ですよね、メタノールを混ぜるのはなぜですか?あと、水で割るのも?」
「うん、エタノール、純粋なエチルアルコール+水だと酒税が掛かるんだ。なので呑めないように、毒性のあるメタノールを混ぜることで工業用のアルコール原料として扱える。水で50%濃度にすれば危険物扱いにしなくてすむけど・・・タンク輸送をタンクコンテナで考えると、そこは気にしなくてもいいかもな・・・ナフサはプラスチックの原料って考えていいけど、ものに寄っては沸点が低い、30度くらいだから面倒なので」
「よく理解できないのはわかりました」
「ごめん。エタノールやメタノールからエチレン作るのでも脱水処理は必要なんだけどね」
まあ、そのあたりはアルコール事業法が改正されて、工業用エタノールについては割と緩くなったから、あまり気にしなくていい。
「そうなんですね。承知しました」
そうだ、布施君、いろいろ考えてくれてありがとう。清水さんは 20ftISOタンクコンテナ、という用語だけ覚えてくれれば大丈夫だ。
「またフィートですか・・・お船の業界はフィートが好きなんですかね?」
まあな、昔から使っているからの一点張りだろう。でもISOコンテナなら鉄道にも積める。
「でも線路は近くにあるんですか?」
ある。鹿島サッカースタジアムという駅を知っているかい?
「はい、一度だけ知人とサッカーを見にいったことがあります」
そこから、貨物専用の路線が南のほうに伸びているんだ。その路線の神栖という駅からメガソーラーまでは2~3kmというところだな。
「それならトラックをレンタルか、運送業者さんに運んでもらえばいいですね。まさか、道の上に線路を引いたり?」
今では許可が出ないよ。昭和初期ならともかく。まあ、メガソーラー内部には線路を引いてもいいかもしれないな。
「そんなに内部で距離があるんですか?」
まあ、幅100m、長さ500mだから、需要が無いわけじゃない。
ソーラーパネルが一平米あたり、15~20kgと言われているし、5万平米全てに設置されているわけじゃないにしろ、少なくとも700t以上の輸送が必要だから、仮設線路は意味無くないな。
「ちなみにペロブスカイト?になると軽くなるんですか?」
約1/10になると言われている。ただ、軽いので、地上設置が逆に難しくなる。
まあ、RORO船 を隠すための建屋が必要だから、かまわないんだがな。
「置くだけだと飛んでっちゃうとか?」
まあ、フィルム状だしな。屋根に張るのが現実的だろう。マンガ的な表現としてギザギザ屋根の工場ってあるだろう。あんな感じかな。
ヘリポートのところは水平屋根かつドローン用エレベータが必要だが、まあ、ペロブスカイトであれば貼れないこともない。
「ああ、RORO船 ゆかい丸用の秘密基地ですもんね。って、100×500mの建屋ですか!?また100億円くらい飛んでっちゃうんですね??!」
ドック化したり、船改造したり、太陽電池再生工場を作ればもう一桁行くな。
「やっとトータル黒字化が見えてきたのに(泣)・・・まあ銀行のほうから『何か借りませんか~』って営業が来るようになったので借りるのはぜんぜん借りれますが・・・」
大丈夫。メガソーラー再生の投資案件にするから金は勝手に集まるよ。




