社長はなんやかんやで商売上手だが、船長のオレは暇だ。
なるほどなー、離島で暇潰しの道具を売ると。
船員なんかやってると、船の上ではどうやって暇潰ししようか、と思うことも多いからなんとなくわかる。
忙しい時は猛烈に忙しいが、航海が順調なら、暇になるのが船の乗組員・船員というものだ。
それは船長でも変わらない。
リサイクル工場の桟橋はあまりにも外海だったので、みんなを降ろしたあとは的山大島の北側の湾内に入らせてもらった。湾の中っていうだけで落ちつくもんだ。
港湾には入らないが既存の漁船などの航路に邪魔にならないところに投錨して停泊している。
湾内なので、普通に圏内で電話が通じる。漁協にも連絡して、許可取りもしてある。
実際のところ、完全にコンピュータ任せでも航行可能な船・・・あいかわらず動力源というか電源が不明というのが謎だが・・・なので、船の中にはオレ一人だ。
姫嶋さんが、船長一人だとさびしいだろうから残ろうか? と言ってくれたが、遠慮した。
まあ、男女二人になったら口説いてしまいそうだし、彼女が受け入れてくれたら嬉しいは嬉しいが、いきなりそのような関係も時期尚早という常識的?な感覚も持ち合わせてないわけじゃない。
まあ、暇には慣れているし、一人当直にも慣れている。
しかし、オレにも一台くれたが、人気の携帯ゲーム機か。
順番待ちができる商品が、田舎でも定価で買えるなら、欲しいやつはみんな買うだろう。
ついでに売っているケースや保護シールやストラップ。
本体が数万だから、これらの合計数千円は高く思えずつい買ってしまうだろう。
まあ、大切に使いたいだろうしな。
決して詐欺でもなんでもないんだが、こいつらの利益率は高いんだよな。
ちゃんと定価が書いてあって、まとめると200円引きくらいのセットになってるというのもつい手が出る一因だろう。
正直、ゲーム機の仕切り、つまり仕入れ値は高く、粗利は一割もない。
なので、リカバリが必須というわけだ。
とはいえ、この会社にとってはボランティアみたいなもんだろう。
この船に乗る、ということが決まりかけた段階で、某軍事組織からダブルスパイのお誘いが来た。
やなこった。こんなことしているヤツらが鈍いわけはない。
明確にキッパリと断わった。そして、社長にもどこから誘いがあったか報告した。
「まったく。凝りないな。あいつらは」
いいんですか。オレを雇っても。一応過去には関わりあいがありますよ?
「もう、足を洗ったというか、二度と関わらないんだろう?信じるよ」
ありがたいことです。社長に忠誠を捧げますよ。
「やめてくれ、ウチは軍事組織じゃないんだ。給与と安定性、将来性に釣られていてくれる程度でかまわん」
口ではそうおっしゃってますが、知人から、オレが何かやらかしたのか?って程度には探られているというのは聞いてます。
「まあ、船長を任すんだ。多少の身辺調査は勘弁してくれ」
当然です。逆にそういう組織・・・会社のほうが信用できます。
「では、お互いに信用するということでよろしく」
承知いたしました。船では了解、を使いますがね。
そんな感じの会話もあった。そんなことを思い出すくらいには暇だ。
オレも長いこと船に乗っていて、上陸許可が出ると色々と衝動買いをしてしまう、という欲望には慣れている。
たぶん、この島の住人も、普段島や本土でもあまり見掛けないものが普通の値段で売っているであろう、あのマイクロバス改造の移動販売車で散財してしまうんだろうな。
しかし、この船も謎だよな・・・
この程度の大きさなのに造水機が付いてて、海上でも水もお湯も使いたい放題なんて贅沢すぎるぜ。
まあ、いつでもシャワーが浴びれるのはありがたい。
一応、日本も長いので風呂という習慣も知ってはいるが、さすがに一人で風呂は贅沢が過ぎるような気がしてやっていない。
日本船だと乗員用の風呂がある船にも乗ったことあるが、湯船は海水だったしな。
真水数百リットルを一人で使って捨てるのは船員としてなかなか勇気がいる。貧乏性かな?
でも、姫嶋さんが一緒に入ってくれるんなら使うな。
まったくオレってやつは・・・アホだな。




