官舎への交通手段。そして離脱
さて、ノリさんね。
吉岡技官の名前は憲作だから憲をノリと読ませるわけだ。某ねるずの小さいほう、といっても相方がデカいから、普通に身長があったはずだ。
急にフランクな呼び方にするのは、なんというか勇気がいるが、まあ、やるしかない。
ノリさん、急にこんなことを伺うのも唐突かと思いますが、原付は乗れますか?免許的には普通免許をお持ちでしょうから問題ないと思いますが。
「二輪なら中型もあるし、乗れると思うよ」
それはよかったです。ジャイロキャノピー、三輪のデリバリーに使われるやつですから、ほぼ、コケる心配もないと思います。
「しかし、先ほどの話、あちらから車やバイクで追跡されている可能性は?ハチあわせたら困らないか?」
大丈夫です。協力会社さんに末橘からここまで登ってくる道の途中でのろのろ運転をしてもらっています。やまびこロード側でもです。
「それじゃあ、こちらも行けないじゃないか。それにウチまで原付は少々厳しいな・・・」
それでは我々の情報が正しいかどうかという話になりますが、ノリさんは佐世保中心地の官舎ではなく、少しはずれたところにお住まいのようですね。
「そうだね。なんというか鼻摘まみモノ扱いだから。国道から国道の丁字路、伊万里に抜けるトンネルのある国道でわかるかな。平鉄の泉福寺駅へも歩いて行ける。佐世保の中心に出るときはせめてもの運動として歩くことにしている」
正しい情報を掴めていたようで幸いです。ではこちらにどうぞ。
・・・
「これは・・・ドローンでいいのですか。小型機しか見たことのない私には巨大ドローン・・・まあ、飛行機よりは小さいんだろうが」
はい、その通りです。これには人と貨物あわせて350kgほど積めますので、これで移動します。操縦は私がします。
「社長本人が操縦するなら、安全性は担保されてるのでしょう。しかし官・・・私の住居のとなりには公園がありますが、あそこに降りるのはあまりにも目立つのでは?」
その通りです。国道同士の交差点の近くに自動車教習所があるのはご存知ですか?
「ん・・・ありますな。まさか?」
あそこと話が付いてます。そこから原付なら10分もかからないと思いますよ。
「・・・用意のよいことで。確かにその通りです。しかし法律的には」
はい、間違い無く航空法違反ですね。
「・・・まあ、今更ですな。秘書連中やその手下もこちらに向かっているでしょうし。省の書類を調べれば私の住居はわかりますが、あそこを張っている可能性は低いかと」
はい。自動車教習所の知人に見てもらっています、社員も一人向かわせています。もう着いたころだと思いますので御安心下さい。
「本当に用意のいいことですね。承知いたしました。参りましょう」
・・・
ジャイロキャノピーと俺達を乗せたドローンは静かに飛びあがった。
「はぁ・・・今更も今更ですが、このドローンもおかしいですね」
二人ですからいいですが、口調が戻ってますよ、ノリさん。
「おっと。まあ、ずっと付けていた仮面はなかなか外せないということです」
何がおかしいのでしょうか。ちゃんとプロペラで飛んでますし航空力学的にはおかしなところは無いはずです。
「動力ですよ。音からして電動ですよね。バッテリーだとしたらすさまじく革新的バッテリーですし、そうでないとしたらディーゼルなりガソリンのエンジン音がしないといけません」
まあ、バレるか。それ前提で乗せたからしかたないな。
そこは革新的な何かということでご容赦ください。もう、着きますよ。あ、あれがウチの社員です。あそこに降ろせ、ということなんでしょうね。
「もう着陸ですか、5分くらいですか?車じゃ30分でも無理でしょう。流石飛行機ですな」
しかも自動離着陸装置がありますから、一番事故の起きやすい離着陸も安心です。あと、外に出たらノリさんを徹底してください。
「わかったよ。社長。社長と呼ぶのはかまわないのかい」
それは大丈夫です。お、神崎、準備はいいか?
「はい、折角ジャイロキャノピーを持ってきていただきましたが、車を借りられました」
まあ、自動車教習所だからな。車が無いわけはない。
「ジャイロもいいですが、この車のほうが色々楽です。明らかに教習所の車ですから、ある意味目立ちません」
仮免許練習中のプレートを外せば違法な事項はないな。
では、ノリさん、ご自宅に向かってキャリーバッグを持ってきていただけますか?
・・・
まったく、想像の範囲を超えることを平気でしてくる人だな。
真っ平らになった、元・仮設事務所、鉄道コンテナを使った大規模輸送、及び鉄道コンテナに積載可能な住宅設備、あのドローンも謎だ。
今は社員さんの運転する車で官舎扱いの自宅に向かっている。
佐世保の中心と比べれば田舎ではあるが、スーパー、ドラッグストア、ファストファッション、ファミレスなど大概の店は選択肢が少ないながらもあるし、閑静な住宅街だ。
二年おき、下手したら一年で配転されるが、ここはわりといい場所だ。田舎の田舎は本当に田舎だしな・・・ここもこれで最後か・・・有給は貯まってしまっているし、適当に申請をしておくかな・・・。
神崎さん、でよろしかったかな?
「はい、神崎です。ノリさんとお呼びするように言われておりますがよいでしょうか」
はい、お願いします。官・・・自宅までは近いですが、安全運転でお願いします
「承知いたしました。事故など起こしては時間がかかってしまいますし、どこかの組織が動くかもしれませんからね」
まったくその通り。
自宅周辺は大丈夫ですか。
「はい、協力会社さんにお願いして工事の真似事と交通整理をしてもらっています。誰かが近付こうとしたら連絡が来ます。あ、ちゃんと道路占有許可は取ってますよ」
本当に準備のよろしいことで・・・あ、見えてきましたね。
工事のフリのパイロンが退けられて、家の前に停車しました。
「カントク、誰もきてねえよ。そっちが先生か?」
「はい。ノリ先生です。先生、お願いします」
カントクというのは・・・彼も現場監督をやっていたということでしょう。先生ね・・・ま、時々言われるので慣れてはいます。
無いとは思うが、無茶なことをする連中もいるかもしれないので、君も来てくれるかね。
「勿論です。あ、コウさん、数分だと思いますが、車を見ててください」
「わかった、カントク。Pに入れてサイド引いたら、エンジンもかけっぱなしでいいぜ」
「ありがとうございます。先生、参りましょう」
結果的に、それは杞憂だった。
リビングに置いていた開きっぱなしのキャリーバッグも無事であり、押し込み強盗的なこともされておらず、現場でされることもなかった。
本当にノーマークだったんだな。まあ、あっちの技術を押さえる方が圧倒的に優先度高いのはわかる。
帰りは後席にバッグと共に乗り込み、あっさりと教習所に戻った。
・・・
社長、戻ったよ。
「ご無事で何よりです。バッグも無事だったようですね」
静かなもんだったよ。また、ドローンで移動かな。
しかし、事務所跡はもう完全撤収しているんじゃないだろうか?
「おっしゃる通りです。行き先は違います。コイツの航続距離はなかなかのモノですから御安心下さい」
まあ、そうだろうね。何度目になるかわかりませんが、今更・・・だね。
「神崎、お前は佐世保の平戸鉄道の事務所に寄ってから適当に帰りたまえ。
とりあえずこの封筒に10万入れといたから今晩はこのあたりに泊まれ。
宿泊日当も出るから飯は外で食べていいぞ。
領収書は忘れず取れよ。清水さんに怒られるからな」
「社長、店のご飯もいいですが、正直、キッチンコンテナのご飯で充分おいしかったです。まあ、今日はありがたくいただきます」
「おう、神崎、よろしく頼む。ノリさん、早速ですが出発しましょう。今度は一気に高くまで飛びますよ」
安全運転?操縦?でお願いします。
「離着陸は全自動ですから安全ですよ。御安心ください」
彼がボタンを押すとローターは静かに回りはじめ、大した騒音も立てずにあっさりドローンは浮かび上がった。
宣言通り、今度は一気に相当な高さまで上昇し、そこから水平移動を始めた。
こんなに高く上がって航空機とニアミス、衝突などしませんか?
「高いように見えて、現在、対地150m程度です。目的地を地図上で指定すれば、絶対高度200m未満、対地高度30m以上のルートを自動で選択してくれます。だから操縦なんていっても大してすることはないんです」
200mというのはどうしてでしょうか
「航空法で、「航空交通管制区」と言うらしいですが、それが海面または地表上から200mらしいです。なので山を越えるときは絶対高度が200m越えててもいいはずですが、念の為、というかなるべく越えないようにしています。まあ、山を突っ切るルートをマニュアルで選べば、対地レーダーで対地高度を自動で調整します。高度は50/100/150/200mから選べます。通常は50のままです。前方もレーダーとライダーで監視してますので急に高い建造物が出現しても問題ないです」
なるほど・・・
言いわすれていたが、ドローンのキャビンはヘリのような形だ。テールロータ部分が無く、後部は四角い箱のようになっている。
それにローターナセル付きのローターが6機、前進用?の一見ジェットエンジンにも見えるが、これも電動ファンだろうな。
椅子は特急列車などの椅子を流用したんだろうな、という感じだ。
居室の前と後ろが荷物を入れるスペースになっている。
居室前部のカーゴスペースには私の機内持ち込み不可サイズの大きめキャリーバッグが入っているが、ガラガラだ。
後ろの四角い箱部分にはジャイロキャノピーが搭載されている。
積載能力は350kgと言っていたが、明らかに過少申告だろう。そもそも席が7つもある。人と手荷物だけで、7人乗ったら400kgを越える。
このルートだと海に向かってそれから北上されるおつもりですか。
「おっしゃる通りです。もう海に出ましたから、完全に自動ですね。このまま平戸大橋の上を越えて、目的地まで進みます」
なるほど、ではリラックスできますね。
横に付いているのはダクテッドファンですか?電力が心配ですね。
「まあ、電力の心配は不要です。丁度今からそのダクテッドファンを使って高速進行を掛けるところです」
心配不要ね・・・ま、いいか。お、明らかに速くなったな。
そういえば、清水さん、バスの中で社長に向かって怒っていましたが、そういう方なんですか?
「ああ、彼女もガンさんと同じく私が最初に買収した会社の社員で、平社員のOLだった彼女を一気に部長にして、なんとか引き受けてもらえましたが、その時も怒ってましたね」
栄転?というにも無理がありますが、そんな過去があったんですね。いきなり部長とは思い切りましたね。
「できると思ったからしただけです。事実、数ヶ月で慣れ、部長の権限に相応しい振舞いができるようになりました。総務部長なんて恐くてナンボです」
確かに。
ドローンのイメージについてAIと格闘しましたが、どうしても言うことを聞いてくれません。
2時間近く使ってしまい、本文より時間がかっているのであきらめました・・・
だいぶヘリコプター寄りのイメージになってしまいます・・・色はこんな感じです。
ジェットエンジンのようなものも、ダクテッドファンです。
https://drive.google.com/file/d/1DKO6Lwk4Gp6oB9UoHQvbPNykUZUAvy3Y/view?usp=drive_link




