表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/102

平戸鉄道災害復旧工事完成

「やはり、実際には竣工していたんじゃないですか。期間が合わないですよ・・・

しかし、随分と・・・振り切ってきた御様子ですね・・・」


吉岡技官が小声でつぶやく。


俺は聞こえないふりをして、にこやかに愛想を振りまいている。


そう、開通式だ。そんなものは無くてもいい、出たくない、と一旦は断わったのだが、テープカットだけでもいいから出てくれと平戸鉄道の担当者に懇願されてここにいる。


           ・・・


どうせ出るなら派手に行こうとばかりに、俺だけでなく開発部の女性社員も三人ほど、現場担当者として出席させることにした。


俺達以外は、鉄道にしろ、地元市町村の首長、関係者にしろ、おっさん、じいさんばかりだからな。


自分の財布から金を出し、派手なドレスやバッグに宝飾品、それとヒール、美容室での化粧と着付けまで全部込みでともかくゴージャス路線を狙った。

俺のセンスでは問題があるだろう、と福岡の知り合いに頼み、一人当たりの予算を300万円とした上でドレスなどを選んでくれるサロンを紹介してもらった。サロンの費用は全員で100万、一日帯同してくれる専属美容師も一人付けてもらえることになった。


要は1000万出すから服を見繕って早朝からサロンを開けてそのまま人を付けてくれという金にモノを言わせた依頼だ。


その美容師は、

「うふ、お化粧が下手なコもいるけど、素材はバッチリよー。おねーさんに任せなさい!!」

と、言っていた。お前、男だろう?と突っ込むのは控えておいた。


それだけだと俺が女を囲っているように見えなくもないので、男性社員三名にも、燕尾服をベースにした昼間の礼服としてはかなり高級なナリをしてもらった。シルクハットはさすがにヤメた。


まあ、こちらはレンタルだ。シャツや小物は買い取りで、再利用の機会も少ないだろうが、それは各自にあげるから、結婚式の時にでも使ってくれ。


俺はさすがに持っているので、燕尾服も含めて自前だ。

あと、俺も男性社員三名も、オネェの美容師さんにメイクしてもらった。

このままだと男女比が1:1にならないので、清水さんに急遽来てもらった。

彼女も、ザ・社長秘書に見えるようなメイクをしてもらっている。


「あなたが社長さん?お若いわねー。それにこちらの男子もなかなかのイケメンねー。あ、社長さんもよ?こちらの秘書さんは愛人なの?」


愛人でも秘書でもない。俺についてもあわてて付け加えた感が半端ないが、まあ、いい。たまたまだが見た目のいい社員が男女とも集まっていたのはラッキーだったな。


「社長の呼出しは(きゅー)すぎまシュ……(きゅう)すぎです!!。あれ、開発部の女子ですか? なんてカッコさせてるんですか? まあ、ちょっとうらやましいですけど・・・」


欲しければ買ってあげることは可能だがどうする?


「いえ、一般社員の私に特別なお洋服やアクセというのはよくないです」


総務部長としてはそう答えるのが正解だろうね。ただ、あれは会社の費用は一円も使ってない。俺の個人のお金だ。

それに、彼女達も男子も一般社員なのは同じだろ?


「んー、なんというか、開発部って、やっぱり上級社員っぽいですよ。会話も英語?だし、私も高校では英語得意なほうでしたけど、細かい内容は何を言ってるのか、まったく聞き取れません・・・それに高卒の私とちがって大学院卒の人達ですし・・・」


俺としては特に区別しているつもりはないんだが・・・あの英語モドキがちょっとわかりづらいのは、まあ、そうしているからだがな。


清水さんも部長待遇になって自分で使えるお金も増えたでしょう?ああいう格好をしてもいいんだよ?


「最初は名前だけの部長かと思ったんですが、びっくりするくらい昇給しつづけましたからね。

仕事も責任も増えましたけど、その分やり甲斐もありますから。

贅沢はすぐ慣れるって聞いてますし、そもそも裕福じゃない普通の家育ちですから、今の生活を維持するようにしてます。

iDECO や NISA は枠一杯つかってます。

それは将来のためにありがたいと思ってますが・・・


・・・で、なんですかこの派手なバス?」


どうせなら、というわけで、登場も派手にした。サイズは大型観光バスだが、わずか12人乗りというリムジン的な仕様のバスを貸切で借りた。

この地域ではまあ、みんなが知っているバス会社だからそれなりに知名度のあるバスだろう。

イカツいミニバンも考えたが、大きさでこのバスよりデカいということはあるまい。

それに、福岡のサロンで着付け、メイクをして、移動しながら仕上げもできる。

清水さんは急遽合流なので、自称おねぇさんにガッツリメイクされている


「アナタも素材はばっちりだから、ブラウスはもう一つ下まで開けたほうがいいわ。スーツも調整しておいたのよ!」


「・・・明らかに胸を強調してますが、開通式にこんな服で出ていいんですか?社長」


別に見せ付けるってほどじゃないし、社長秘書っぽい出で立ちだから問題ない。


「・・・私は総務部長は納得して引き受けましたが、社長秘書なんて言われたことないですよ? 秘書検定も持ってませんし・・・」


いや、ちゃんと総務部長として紹介するよ。見た目が秘書っぽいだけだ。


「すごい派手なお化粧するんですね。こんなのしたことないです・・・まあ、燕尾服や夜会ドレスでないのは気分的に楽ですけど・・・」

清水さんは目の回りをキラキラさせながら周りの席を見回してそう言った。


他の出席者は普通にスーツだろう。そこに豪華リムジン風のバスで乗り付けてこの服装だ。


間違いなく浮くな・・・だが、浮くのは承知の上だ。

俺の性格的には目立ちたくはないが、目立つんなら思いっきり目立ったほうがまだマシと考える。我ながら厄介な性格だな。


           ・・・


まあ、目立った。


佐々駅での開通式には地元関係者だけでなく、県知事まで来ていた。


県知事の公用車は新定番のミニバン、通称アル。まあ、セダンタイプより乗り降りも楽だしな。


その後ろに付けた明らかに豪華に見えるバスから降りてきた燕尾服の男。

バスの入口でしずしずと降りてきた女子をエスコート。

これが三組。メイクの威力もあり、見事な美男美女だ。


この時点で目一杯浮いている。


しかしそれを無視するように、俺が降りる。

そして、清水さんをエスコートして主賓席の後ろ、関係者席に座る。


豪華な服装の我々、特にキラキラ女子4名は完全に異彩を放っていた。

自称おねぇさんがラメラメにしてくれたおかげで物理的にキラキラしている。


           ・・・


開通式といってもお偉方のご挨拶とテープカットくらいだ。

お偉方も長い挨拶は嫌われると判っているのか、コンパクトな挨拶で終わり、テープカットに呼ばれるかな、と思ったところで、壇上から声が掛かった。


「このような驚異的な短納期・低予算で工事を終えられました日本シールド工業の皆様をご紹介したいと思います。社長様、皆様、どうぞこちらにお越しください!!皆様!!拍手でお迎えください!!」


司会の女性の声が響く。聞いてないぜ、と思いつつも、まあ、あるかもな、とは思ってはいた。この格好もそれを意識している。


短く行くか。皆に声を掛け、早足で壇上に上がる。


いや、予想より人が来てるな。さっさと関係者席に座らされたので、周囲に人だかりが出来ているのに気づかなかった。


皆様。ご機嫌麗しくお過ごしのことと、心よりお慶び申し上げます。

このようにお目にかかることができ、誠に光栄に存じます。

私も含め普段は作業着、ツナギですので、本日は少々見栄えのするナリをさせていただいておりますが、衣装に着られている状態かと思います。


私が日本シールド工業の社長、一条でございます。

隣にいるのが東京から我々をサポートしてくれた本社総務部長の清水。

次に現場の工事事務所から、

現場監督その一の松丘、オレンジバーミリオンの衣装を着ているのが、技術部長の姫嶋。

現場監督その二の沖永、マリンブルーの衣装が品質管理部長の國本。

現場監督その三の丸森、ライムイエローの衣装が所長の芳野です。


管理職が女性ばかりなのに驚かれている方もいらっしゃるかとは思います。

ですが、皆、実力で掴み取った職位です。もちろん、仕事もできます。

この短い工期での完工は彼女たちの手柄です。

私は正直、神輿(みこし)(かつ)がれているだけの存在です。


彼女達に盛大な拍手をお願いいたします。


本日は誠にありがとうございました。


・・・概ねそんな感じの挨拶をして、俺達は壇上から降りようとした。良くみると、現場に来ていた作業員・職人さんや地権者の皆さん、地元で多少顔見知りになった人もかなり来ていた。よかった。みんな笑顔だ。


壇上から降りる我々に、拍手だけでなくカントクや彼女ら個人への声援らしきものも聞こえていた。

俺達は、事前の打ち合わせどおり、男子は静かに、女子は片手を男子に取られながらも、もう一方の手を振り、笑顔も振りまきながら元の席に戻った。


テープカットには俺一人が出た。俺は一番下座にあたる端の部分を割り当てられ、隣には吉岡技官が立っていた。


「まったく・・・美女軍団に、メシウマで現場作業員の胃袋を掴む方法といい、こんな現場は初めてですよ・・・早期完工には感謝しますし、報告書もしっかりと問題無きよう記述させていただきます」


ありがとうございます。ですが、特段の利益供与は致し兼ねます。


「それはいいです。以前も申し上げました。節度のある個人的にお付き合いの継続はさせていただきたい」


はい、それはありがたく。


「それと、政治家が寄ってきますから、これが終わったら、さっさと逃げましょう。私もあのバスに乗せていただけませんか?」


あれは豪華ですよ?まあ、酒食を提供するわけでもないですし、大丈夫かとは思います。


「一応経験だけはあるので。

政治家にとってはあなたの会社は利権の塊に見えるでしょう。

それに貸切なら私が乗ろうと乗るまいとあなたの支出は変わらないでしょうし、

自分の家の方向に行くかどうかも知りませんので利益供与にはあたりません!

ともかく、この場から逃げたほうがよいです!

国会議員の秘書もいますし、私も対象になったようですので私なりの逃げ方もお話できます」


その間にも開通式は進む。

「テープカットをお願いします」ざきっ!パチパチパチパチパチパチ・・・


やはりあれらは秘書か。

誰か知らんが、司会の女性に式辞の変更をそそのかした誰かがいるんだな。


「これにて、閉会とさせていただきます。皆様ありがとうございました」


よし、姫嶋。行け!


「ハイっ!!姫嶋です。みなさーん。お会いしたかたも来てくださいましてありがとーございまーーーす!!」


姫嶋が関係者席から立ち上がり、一周回りながら手を振ると

姫嶋さーん、ヒメちゃーん、などの歓声が湧きあがる。


「すみませーん。我々、まだ現場の後片付けが残ってるんですよ。この格好ではちょっとアレなのでバスで着替えますねー。社長も早く来てくださいっ!!荷物運びくらいはできますよねーー」


歓声に笑い声なども追加される。俺は腰の横で親指を小さく吉岡技官のほうに突き出す。姫嶋は吉岡技官のほうを向きながら手を振る。


「吉岡技官~、こないだ査察に来てくださってありがとうございましたー。お忘れものをお渡しするので、社長と一緒に来てくださ~い!!」


よし、通じた。


技官、逃げましょう。


「無茶しますね・・・しかし強引に行くしかないのも事実ですか・・・」


呆気に取られる会場の人々を尻目に、制止しようと近づく人が来る前に、我々はなるべく優雅な早足で吉岡技官と共に足早にバスに乗り込んだ。

社長と清水さんのイメージ画像をGeminiに作ってもらいました。雰囲気はこんな感じです


https://drive.google.com/file/d/1PcJL-uYG8eouLOpnDEyfpwGnJHuoZeAb/view?usp=drive_link


あとの6人のイメージです。あきらかに違う現場ですが、プロンプト的に難しく、二枚となりました。


https://drive.google.com/file/d/1q49vWkoBHomCOEjFjZfcfB5PzCaz57zf/view?usp=drive_link

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ