JSHを狙う自称フィクサー
時系列的にどこに置くか迷っている話ですが、並行して存在しているので置いときます
あの男に弱味は無いのか!
「驚くほどございません」
カネ・・・は、あの家だからあるんだろうな・・・父母から手を回すのは試したのか?
「カネですか・・・100億円どころか100億ドル持っていっても驚かないでしょうね」
うん?!それほどか・・・
「はい、それに、彼は三男坊で、両親から厳しいところもありつつも基本的には甘やかされて育ったようです」
それなのに金儲けの才能・実力がある。と。
「極めて運の良い、ように見える、男です。しかし、あれだけ連続していると運ではないと判断します」
判断の根拠は!?
「匿名投資組合の連続成功記録もそうですが、JSH グループに組み込んだ中小企業各社も、業績は回復して、彼への配当金だけで、あと数年でモトが取れそうです」
どうやっているんだ?
「非常にシンプルです。老齢の社長に退いてもらって、その取り巻きの害悪を排除して、私腹を肥やすものを追放して、やる気のある若手を地位だけでなく給与でも抜擢しているだけです」
・・・全社でそれが出来ているなら、経営の天才だな・・・半分の会社で成功しているだけでも充分天才だろう・・・
しかし、各社に法務や税務なのどバックオフィス業務があるだろ?
あの辺にも既得権益を貪っている連中がいるんじゃないか?
「はい、JSH のバックオフィス業務の会社に全てアウトソースさせています。
既得権益自体を剥し取ってますね。
完全にIT、DX 化というやつです。税務署とも仲がよいくらいです」
む!それはワシもどうすればできるか聞きにいきたいくらだぞ!
しかしバックオフィスを全部自社のアウトソース会社に振り向けるか。徹底しているな。
「その、DX 化したシステムの運用と税の解釈などについて、顧問税理士と一緒に相談に行っているそうです」
まあ、見た目も人当たりも良いからな・・・あの一族は・・・
しかしそれで税務所員と仲良くはなれんだろう?
「やろうとしていることをハッキリと提示して、税法上の解釈について徹底的に討論するんだそうです」
それじゃ仲良くでなく仲が悪くなるのではないか?
「それが、図表などを丹念に使ってお互いの認識の違いや落とし所を明確化し、
どんどん上の立場の人間を巻き込んだ議論にしていくそうです。
そして、最後は両方とも握手してにこやかに挨拶するところまでやり切るそうです」
・・・あいかわらず、頭の良すぎる一族だな・・・それが甘やかされて育った三男坊か??
「担当者だけでなく、上長や所長、はてはその上のまで通達が出るような調整までしています。なので税務署としても統一見解ができるということで、助かるとのことです」
本当に徹底しているな・・・脱税などは無いのか?
「個人の資産管理会社が複数あり、タックスヘイブンで設立されているものも、あることはあります。
ですが、日本の税法には違反していませんし、しっかりと申告しているように見えました。実際、それなりの額の税金も支払っています」
まあ、タックスヘイブンは・・・そこを突かれるとワシらもな・・・同じ穴のなんとやらか。
賄賂とか、そういう弱みはないのか?
「政治家への寄付はありますが、常識の範囲で、隠れた献金などは見当りません。
公務員への贈賄もしていないですね。むしろ、していた社員を追放しているほうです」
どうやって付け入ればいいんだ!!そうだ!!女はどうだ!?
「特段の女性は囲っていない様子です。暮らしも質素ですね。
かなりのレベルの女性を複数使ってハニートラップも仕掛けてみましたが、まったくダメです。
ゲイ、ホモというわけでもないようです。
女性社員に手を出してもいない、これは100%とまでは言えませんが、ほぼ無いです」
あのお坊ちゃんにも性欲くらいあるだろう!?
「これは噂に過ぎないのですが、上流階級の男女の割り切った関係のサークル的なものがあるとは聞いています。
それが本当に存在するのか、彼がそこに入っているかどうかまでは調べきれていません。
上流だけあって、さすがにガードが固いです」
・・・噂は聞いたことがあるが、成り上がりのワシでは入れんからな。それにそんな歳はとっくの昔だ。一応調査は続けろ。
「承知しました。念の為にご報告しますと、あれらの技術は彼が発明したものではなく、事実上買ったものです」
それはそうだろう?
カネがあって経営の才能があったとしても技術はプロが説明しているのを何となくレベルで理解するくらいがやっとだろう?
いくら頭が良いにしてもだ。
「はい。そのようです。技術の主幹は本社の CTO ということになっており、会社概要や決算等の書類にも記述されています。顔写真は載っていませんが。
しかし、もう何年も、下手したら十年単位で、本社の人間ですら CTO を見たことがない、というのは周囲の証言から明らかです」
そんな馬鹿な話があるか!あそこの本社は創業してやっと10周年を迎えたばかりだぞ!
最近はキナ臭い話も耳にしているから、ここ一年ほどは身を躱している、
というならわかるが、創業時にいなければ技術系が回らんだろう!!
「リモート会議で声だけ聞いた、という人物には出会えましたが・・・」
リモートなら声だって変えられるだろう・・・顔も声も実質的にはわからぬのか?
せめて、その、技術系の部署には食い込めんのか?内通者などは作れぬか?
「こちらもハードルが高くて・・・」
盗聴でもなんでも方法はあるだろう!!何かあっても揉み消してやるぞ!!
「いえ、試したこともありますが、すぐ防御されました。
今ではあそこの本社は古ぼけた自社ビルに見えますが、電子化された要塞のようなものです。
技術系の部署は、開発部、と言うのですが、開発部の部員の中でもコアメンバーは英語のような言語で早口で会話をしています」
英語くらいわかるだろう!!
「いえ、英語のような言語、なんですよ。
Yes, No, Ah, Year くらいは英語なんですが、固有名詞や動詞が英語じゃないです。
勿論日本語でもないです。英語のほうがまだ似ている感じですね」
あのお坊ちゃんへの説明は日本語か英語だろう?
「それが、同じ言語で会話しているとのことです。お互い凄まじい早口で」
周りの社員は不審に思わんのか?英語をしゃべるやつくらいおるだろう?
「それは社長と CTO は同じ大学院に留学していたから、そこの訛りが不意に出る。
開発部にも数人そこへ留学していた人間がいて、開発部英語はいつの間にかそれに統一された。で、通しているようです」
訛りか・・・確かに聞きとれんほどの訛りはアメリカ人でも居るといえば居るな・・・しかし留学先なら調べればわかるだろう?
「はい、結論を申し上げますと、留学先の地域の訛りではありませんでした」
では嘘ということか!
「いえ、大学の指導教員、教授の研究室の訛りという可能性もあります。しかし、教授は退任済み、死去しております」
・・・その開発部とやらで買収に応じそうなヤツを見付けることは可能か?
「かなり前から探っていますが、これがなかなか・・・」
どういうことだ!!!
「コアメンバーはいわゆる『研究バカ』ばかりです。そのCTOも含めてです。
CTO 以外は、研究を続けたいけどお金が無くなり、バイト先と大学院の往復になって、それも苦しくなったところを拾ってもらったと。
研究場所と資金、寝泊まりする場所に食事、そして普通に給与を貰えるようになったということで非常に感謝しているわけです。
CTO はそれ以前から社長と二人で一緒に研究していて10億円単位で投資してもらっていた、かつ、ウマが合う友人ということで、攻略は厳しいんです」
できない理由ばかり挙げるな!!!
「申し訳ありません。・・・しかし、今や彼等もストックオプションなどをもらって株に変え、金持ちの仲間入りです。5億、10億ならともかく、我々の運動資金から出せる範囲、例えば百万円くらいですと振り向かせることすら・・・
なんと言っても今の立場なら給与もかなりもらっている上、株の配当金だけで百万くらいは毎年振り込まれるんですから。
あと、あの社長は甘いところもあるお坊ちゃんかもしれませんが、裏切りや不正、そういうものは結構苛烈に裁くのを、彼等は見せつけられていますからねぇ・・・」
・・・まったく・・・
配下を金持ちにすれば、そいつらも「金持ちケンカせず」か。
で、裏切者は徹底的に叩き落とす。
それを見せ付けて今の地位で俺に付いてくれば良い目を見させてやるぞ、裏切ったら・・・わかるよな? か・・・
・・・そこもあの一族らしいな・・・
難しいかもしれんが、女性秘書でも古参職人でもなんでもいいから、どこか付け込めそうなところを必死で探すんだ。いいな?
「承知いたしました。微力を尽します」
・・・もう、正攻法は残ってない。通常取引はことごとく断わられている。
ヤツの甘っちょろい正義感からすると、政治ゴロ扱いのワシは相容れぬ存在か・・・




