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前島高架橋は回転する

ガンさん、高架橋の工程はどうかな?


「おう!社長。まずは仮設線路だが、これは鷹島口側、海のほうにY字の分岐を作ってもらって仮称鷹島口トンネルの西側坑口に発進基地を作る算段は立ってる。

今は森というよりは灌木の藪だな、それを重機で掘り起こしているところだ」


重機?刈り払いじゃないのか?


「ああ、ああいう灌木や竹の類は刈り払いじゃあ、刈り切れねぇし、あとでまた生えてきちまう。コンクリだって突き破るんだよ」


・・・植物の力はあなどれないということか・・・


「なんで、根っこまでしっかり除去するために、ユンボで掘り起こしちまうんだ。

で、ウチの例のマシンでパーチと水が分離できるだろ?

ヨソの現場からの受け入れ残土もパーチにしちまえば扱いがラクになるから輸送も楽だ」


パーチというのは乾燥した土砂の微粉末だ。Particle、パーティクルのことだが、長いのと、つい言ってしまっても問題の無いよう、パーチという名称を作ったわけだ。パーチならいくらかでも推測する幅が増えるかな、くらいな話だ。


シールドマシンはカッターだけにあらず、というか付帯するマシンがかなり必要だ。ウチの特色でもあるセグメントマシンもそうだし。

クローラー、これはキャタピラと言えばわかると思うが、シールドマシンの推進はこれで行う。

まあ、これは単なる電動なので特に説明することもない。


以前、重力派ふるい効果という話をしたことがあると思うが、これがパーチ選別機という名称で付帯装置の一部になっている。


水と、微粉末の乾燥した土砂、重金属と有機化合物を選別することができる。


有機化合物、つまり、残土に含まれている草木や栄養分、細菌等だが、これは重力ふるい、通称スカッタと呼んでいる、で、水を抜きとられると微量になる。かつ、微粉末なのでよっぽどの量でない限り重力波エンジンに送り込まれて燃料?となる。

論理的には石油の(たぐ)いを作れても不思議ではないので、開発部で継続課題として研究を続けている。


重金属も微粉末として回収される。スカッタで分離できる金属はスカンジウム以降、量的に存在するものでいえば鉄より重いものだ。

建設残土だとアルミやマグネシウムも可能性は無いわけではないが、現状では技術的な理由により、パーチ側に入ってしまう。

ただ、粉末はスカッタから出た途端、空気に晒されるので、マグネシウムが分離できたとしても、微粉末は燃えてしまうだろう。


スカンジウムは建設残土に含まれている可能性はまずないが、工具や足場の破片が残っている可能性を考えるとチタン~亜鉛くらいは可能性があるし、その中でも鉄が一番可能性がある。

論理的には金銀銅が含まれていても驚けないのと、有害物質対策で金属粉末はパーチ選別機内のストッカーに集積される。


工場では、より精密なスカッタの開発も行われている。

よって、金属粉末は随時回収され、工場に送られている。


金属粉末は放置しておくと、空気中の酸素と水分と反応してしまう。

なので、自動でいわゆる『レトルトパウチ』のような袋に密封される。

といっても中身が金属なので、板状や小判型に固めてポリエチレンでシールするだけである。


スカッタは単体でも非常に有用だが、動作させるのに重力波エンジンが必須なので、単体で作るのはキツい。というか重力波エンジンが足らず、運用できないのだ。


よって、単体のパーチ選別機はまだ、全社で三台しかない。そのうちの一台がこの現場にある。


鉄筋石板は基本的に鉄筋コンクリート、プロックやパネルとしては、RC、PRC・・・はちょっとキツいか?とほぼ同等に使える。


そして、鉄筋石板製造装置では、セグメントだけでなく、直径2mくらいまでであれば、薄い中空円柱も作れる。

この場合、円形の異形鉄筋が必要となり、また、セグメントのように全自動化は、今はまだできないが、ともかく、高架橋の柱の素材が作れてしまうのだ。


中心の穴の比率が高いバウムクーヘンを切ったもの、のような素材となる。


実際には縦の異形鉄筋を通すための穴があり、また、ハメコミ位置を決めるための凹凸もあるのでバウムクーヘンを切ったもの、そのままの形ではない。


地盤の関係もあると思うが、ある程度の穴を掘り、H型鋼を垂直に立てられるように足場を組んでおく。

アンカー用に太いバウムクーヘン状の鉄筋石板積んでいき、地平の高さになったら、クレーンでH型鋼を立て、足場を使って垂直に固定する。

そこへコンクリートを流しこんで、異形鉄筋用の穴を使ってバイブレータでコンクリートを隅々までしっかりと行き渡らせる。

異形鉄筋を差し込んでコンクリートを流し込み、異形鉄筋自体をバイブレータとして使ったあと切断し、コンクリートで蓋をする。


そうなるとアンカーから垂直にH型鋼が立っている状態になるのでアンカー部分より直径の小さいバウムクーヘンで柱を立て、以下同文で高架橋の柱、高架柱ができる。


あとは桁を載せていけばいいだけだ。


あまりバウムクーヘンと言うのもあれなので、ウチではトーラスと言うようにしているが、デコボコしていないところの断面は長方形または正方形なので正確にはトーラスではない、かもしれないが、ウチの用語ということで。


           ・・・


ガンさん、高架柱のほうの計画はどうだ?


「アンカーの部材は在来工法のほうは手配済みだぜ。トーラスは現場組み、というか現場作成だな!あと、既存の路盤と比べると高架橋の路盤はちょっと振る感じで了解をもらった」


振る?とはどういうことだ?


「社長、駅を出たら右へ曲げてトンネルへ入るだろう?なので、一旦左に振ってS字っていうのか?それから右に振ったほうがコーナーの半径を少し大きく取れるんだ」


・・・なるほど、それはわかる。右には平戸鉄道の使っていない用地があったと思うが、左は?


「左は一本でいいんで鉄道と地権者でなんとかしたらしい」


なんとかって何だ?


「ほら、田舎の融通みたいな話だろ?図面は審査に通ってんだから大丈夫ってことだよ!」


本当に大丈夫かよ・・・鉄道と市の役人に確認して、ヤバそうだったら国交省や吉岡技官も使ってどうにかするか。


まあ、わかった。一旦現状の軌道を使ってシールド電車を仮GVで引いて、Y字の分岐の先まで行ったところで転轍してバックで発進基地地点。

そこでアウトリガーを出して固定。発進。


発進したら、後続機器を押しこむのにスロープを作ってやらないといけないがどうするんだ?


「そこがアレよ。バックして発進基地に来るのも高架桁だろう?この時点では載っているだけだから、90度回してやればスロープになる」


・・・なるな。クレーンでゆっくり回してやればな。しかし、発進基地とトンネルに成ったあとの路盤は結構高さが違わないか?


「そこだよ、社長。発進基地自体がアンカーみたいなもんで、そこにトーラスが一枚、その上に高架桁だ。

仮設んときは、異形鉄筋の坑に鉄筋もコンクリもいらねぇ。アウトリガーで固定するから、桁は乗ってるだけで充分だからな。

で、クレーンで桁を外して隣りに置く。

発進基地のアウトリガーをふんばらせるところだから、荷重を掛けても問題ない。

で、トーラスの上に斜めトーラスを載せてから、鉄筋とコンクリをトーラスの中心じゃない鉄筋坑に流しこんで、バイブレータかけてからフタすりゃいい」


・・・なるほど、そこで高さを稼ぐのか、仮GVと台車はどうする?


「仮GVの前に土砂ラッセルパーツを付けて一度限りの前進で鷹島口駅付近までいくんだよ」


雑だな・・・大丈夫なのか?仮GVもシールド電車の台枠も予備はないんだぞ?


「俺等も徒歩で検査したが、大丈夫だ。法面崩落の対策工事の目処が立たないだけで、路盤崩壊しているわけじゃない。土砂は概ね撤去済みだ。

ラッセルパーツも万が一を考えてのことで、本来なら無しでも通行はできる。

でもよ、目視のあと、小規模な崩落があるかもってのは否定できない。

そんときに落石に乗り上げて脱線、などを避けるためだけのもんだよ」


わかった。それで、斜めトーラスとは何だ?


「おう、普通のトーラスは水平だが、そいつは上がすこーしだけ斜めになっていて、厚味を上げた分、高さを稼いだ分だけ桁が斜めになるだろ?

それがすんなりと乗るようになってんだ」


しかしそれでは縦の変化量が大きすぎないか?


「社長、トンネル自体が登り勾配ってのを忘れちゃいねぇか? まあ、どっちにしろ、トンネルの末端処理は土工が必要なんだ。図面はできてるから俺達に任せてくれよ」


そういえばそうだな。そこはコンクリートでもモルタルでもなんとかしてくれ。


「おう、わかったぜ!!」


頼んだぞ。俺は調査と地均しだな・・・

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