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末橘トンネル竣工

「しかし、ドエライこっちゃな」


どうした、ガンさん?


「いやな、トンネルが掘れるのはわかっちゃいたが、こんな工法を取るとは思わなかったし、小型のユンボでほとんど取り付け工事が終わるとも思ってなかったんだよ。あと、あの電車?でいいのか?現場で変形して巨大なシールドマシンになって勝手に発進していくとか理解できねぇよ」


末橘トンネルだが、まぁ、前代未聞、とまでは言わないが珍しい工法を用いた。


まず、シールド電車だが、あっさりできた。20m級の台枠と電動ボギー台車をベースに重力波エンジンを搭載し、アウトリガー8本、クレーン2台、簡易運転台を前後に一応付けてある。半室というか、非常にコンパクトな運転室になっている。ただ、自走はできるがしない予定だ。


災害復旧というお題目もあったせいか、前例の無いことをいやがるはずの、JRFとの協議も異常な速度で進展し、貨物列車での福岡貨物ターミナルへの輸送、そして佐世保駅までの甲種輸送もJRFとJR9が無理をしてくれたようで、、あっというまに輸送されてきた。


平戸鉄道は、現状、佐世保-佐々間で折り返し運転をしている。伊万里側は有田ー伊万里ー今福間だ。


そこで、江迎鹿町駅周辺を工事用基地として借り受けた。


工事用の機材は31ftコンテナに積み込み、福岡まではコンテナ輸送、そこからはトラック輸送だ。


工事用基地で部材をコンテナから出す。ほとんどの部材はフォークリフトで運び出しができるようにしてある。省力化だ。


貨車はボギー台車二台を鉄枠というか、鉄棒と鉄板で薄い箱状にしたもので繋いだものだ。速度も出さないし、そんなので充分だ。


偽装用の電源車は、結局作らなかった。20ftコンテナ型ディーゼル発電機というのが存在する。それと電動ボギー台車を二台用意し、同様に鉄のフレームで繋ぐ。中央に20ftのコンテナ発電機、両端に簡易運転台を載せれば、両端式のディーゼルエレクトリック機関車の出来上がりだ。まぁ、どちらかと言うと、JREのGVシリーズのような事業用電車に近い。仮GVとでも呼ぶか?


機関車、貨車の組立もあるので、31ftコンテナ積載トラックは一台でよかった。トラックが福岡貨物に往復している間に組立作業を進められるからだ。


           ・・・


すえたちばな駅の先、佐世保から平戸口に向かう方向で、左カーブのあるあたりの切り通しを一部崩し、農業用水の上にアーチ橋を掛けた。用水路の両端、水路と直交する小さなアーチ橋で、それとさらに直交する路線のRC橋を保持する構造だ。既存の末橘トンネルの東側に並行して少し長いトンネルを掘るのだ。


アーチ橋の構造がわかりづらいだろうか?都市高速などで、川の両側にハの字に足を出して川の真上に本線を作っていいるような構造といえばおわかり頂けるだろうか?

そのような構造であり、あれほどの高さは無いので、用地買収も日陰も最小化できる。

ただ、シールド電車の台枠の高さが、シールドマシン発進の高さとなるので、少々掘り込む必要はあった。


トンネル開口予定部に、本来の線路の方向と直角に仮設線路を付ける。

そこにシールド電車を入線させ、アウトリガーを出してガッチリ固定する。そのため、ここの20m×10m程度の敷地だけは、ガッツリと土工後、鉄筋石板で固める必要があった。


そこで、シールド電車から変形した特製7m機を90度回し、保持材でシールドマシンを保持しながら発進だ。発進後は土を粉末状にして送ってくるフレキシブルチューブやらなんやらの接続が必要だが、それを後続の鉄筋石板製造装置へ送れば、その場で鉄筋石板のシールドセグメントが作れる。

それをシールドマシン後端のアームが掴み、重力子フィールドを使って掘ったばかりのトンネルを押し広げるようにして嵌めていく。いつ見ても不思議な光景だ。


今回は後退の必要はないのでπ型の路盤も作成し、トンネルに随時敷設していく。最初の数枚は事前に作っておいたものをクレーンで押し込むが、ある程度の路盤ができたら、タイヤ駆動の路盤セグメント用の鉄筋石板製造装置を別に走らせる。そうなると、シールドマシンは後退不可だ。しかし問題はない。


末橘トンネルは一部崩壊したが、閉塞したわけではなく、土砂は除去され、簡易的な補修もなされている。

ただ、安全性を考えると今後の利用は避けたい。補修は数ヶ月くらいなら持つだろうが、再度崩壊の可能性もあり、その際には閉塞もありうるからだ。


なお、仮設線路は15Rとか、かなり無理なカーブもあるが、本来真っ直ぐ進むべき線路と直交させる都合上どうしようもない。


まぁ、シールド電車全体の据付と、シールドマシンが発進して、シールド電車の台枠部分の引き上げだけに使えればいい仮設線路だからな。


台枠を江迎鹿町まで引き上げたら、仮設線路を撤去し、本線を施工する。


仮設線路は元々の築堤から少し下るが、本線は前述の路盤セグメントに接続されるので、ほぼ水平に向かう。アーチ構造なら、上部の1/3~1/2円と、下部の柱という構造を用いて、あとで高さを修正できるので有利だ。末端部分は撤去して作り直しだが。


路盤の形式を鉄道的に言うとスラブ軌道に分類されるそうだ。実は本線の敷設は割と急ぐ。何故かと言うと、鉄筋輸送機が必要だからな。土は現場で調達できるが、鉄筋はそうはいかない。これも、必要量は福岡貨物までコンテナで送ってもらえるので結構助かる。

これも鉄道でなければ大変なことだ。工場からトラックではどれだけカーボンフットプリントが増えてしまうことやら・・・。


二つの製造機は進んでいくので、どんどん往復距離は増える。しかし、速いとは言ってもシールドトンネル工事だ。時速20kmの仮GVに押されている鉄筋輸送機でも余裕で追い付ける。


「いやなあ、こんな工事が田んぼに入れるユンボあたりでできるとは思わんかった。それだけの話よ。あと、鉄道を輸送用に占有できるってのはスゲーな。資材の運びやすさが段違いだぜ!」


まぁ、その通りだな。ガンさん。


農閑期の田んぼは買収ではなく、借りることですませた。一部、どうしても買収しなければならないところは小面積の棚田、ということもあり、割と容易に買えた。もういらんから全部売る、と言われたところもあった。そういうところは有り難く買った

農閑期で水は乾いているとはいえ、元は水田、かつ農道も狭いので小さなユンボしか入れない。そこは数で補った。


買収に出向いた時の、「これも、ヤメにするいい切っ掛けか」という爺さんの寂しそうな顔はちょっと来るものがあった。そこはドライに流すしかない。


今回の仕事は鉄道輸送を用いた工事のモデルケースになりつつあるな。


末橘シールドトンネル工区の田平側も既存線路に近いところに開口ポイントが定まった。送電線の下に直線路を作る、というアイデアもあったが、買収や森の切り開きなどで却下となり、既存路盤で西田平に近いところで山が迫っているところに最小限の土地買収を行い、既存の路盤に接続できるようにした。ここにシールド電車のベースフレームを設置し、回収基地となる。


ここに工事のためにユンボ等の重機も持ってくるのも鉄道だ。というか、貨車の前後の板を外してしまえば、トラックに載せるのと変わらない。むしろ長さが20mもあるのでまとめて数台運べる。田平に向けて登り勾配なので、仮GVは後ろ側に付ける。土でもコンクリでも鉄筋石板でも全部貨車+仮GVで運べる。


こちらも20m×8mくらいはガッチリ路盤を固める必要があるので、本線を一部撤去し、一段低い仮設線路と路盤を釜田川沿いに設置した。既設の線路に対して30度という浅い角度なので、山を一部切り崩し、誘導用の構造材を配置し、シールド電車の台枠がマシンを受け入れる準備が整った。


そして、だれも見ていないであろう深夜に静かにシールドマシンは姿を表した。

構造材に支えながら、後端でシールドセグメントを嵌めこんでいきつつ前進する。

台枠に収まると斜め30度から線路と同一方向まで回転する。

そして、作業員がいくつかのパーツを手動で外したあとは、シュルシュルと降りたたまれて行き、電車の中央部と化した。クレーンもアウトリガーも畳まれたシールド電車は仮GVに押されてどこかに消えていった。


常識をはるかに超えた速度ですえたちばなー西田平間のトンネルを掘り、本線設置も終えた俺達だが、対外的には調査坑の試掘を終え、本坑工事の工程作成中ということになっている。早すぎるからだ。

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