変形合体シールド電車
布施君のファイルは宣言通り、月曜に開いた。まぁ、まだ日の出前だが・・・
正直、見てもわからなかった。7m機の周囲長はほぼ、22mだ。これをどうやって、3m×4mの中に押し込むんだろう。というか、明らかに構造材同士が干渉しているように見える。これでは展開もへったくれもないのではないか?
なので、出社してすぐに彼を呼び、説明をお願いした。
図面は見たが、これでは部材が干渉しているんじゃないかな?
「はい、そう見えるかもしれません。しかし、問題はございません」
いや、あるだろ。壁や床、天井にシールドの円柱の一部を使っているのはわかるし、その間をヒンジにしているのは、さすがにわかる。しかし、これでは構造の骨材だけでフレームが無いじゃないか。展開できたとしても掘れないだろ?
「いえ、そのまま発進すればそうなりますが、そうなりませんから」
わからん。その場で外板組立は難易度が高いだろう?
「はい。ただ、車両の屋根、床、壁とそれらを繋いでいる骨材は重力子フィールドで一気に展開できます。そこに進行方向、前後方向ですね、これの支柱から中心に向かう骨材は自動的に引き上げられ、中央ナセルまでの接続はほぼ自動です。いくつか手で嵌めないといけないところもありますが」
そこまではわかる。それではスカスカじゃないか?
「社長、弊社が何を作っているか忘れてしまったのですか? 重力式の鉄筋石板ですよ?現場で作るなり、別の現場の残土で作って運ぶなりすれば、現場ではクレーンで吊って嵌めればよいだけです」
!!!!!!!
なんと・・・そんなハイブリッドが可能なのか?
「結構、骨材の配置と、石板の形がなかなかのパズルでしたが、キレいにハマる形ができました。鉄筋石板で作ったシールドセグメントで土圧に耐えられるのですから、同じく土圧に耐えられます。セグメントとは逆に外から嵌める必要がありますが。」
結構重くなるんじゃないか?
「現場で掘っているときはシールドマシンは重いほうがいいくらいです。14m機なんて、軽すぎて不安なほどです。でも、運ぶときには軽いほうがいい。背反二律ですね。この構造はミウラ折りほどの複雑さではないですが、骨材だけなら折り込めると気づいたとき、外板は現場で作っても強度は得られるんじゃないか?と、思い付きました」
アイツに確認は?
「まだですが、きっと、先週末のように悔しがっていると思いますよ。なんで気づかなかったんだって」
わかった。それも含めて任せる。可能であれば展開と組立、分解と撤収の様子を動画にしてくれないか?
「承知いたしました」
・・・
「で、交渉というか、提案というかお話で JRF的には、どんな感じだった?」
今日はアイツとの 1 on 1 だ。やはり、そこが気になるか。
ああ、あっさりとOKしてくれた。コキが一部留置になるから事前調整は必要だそうだ。はっきり言えば拍子抜けだ。そこからの甲種輸送もJR9と調整してくれる。佐世保駅までの回送になるそうだ。
「まぁねぇ。言われてみればできるよな。軽くできれば輸送も楽だよな・・・他の機種もちょっと考えなおそうかな・・・」
なんだ?全機スケルトンにでもするのか?
「あのさぁ、ちょっとは考えようよ。あの構造は7m機ならではなんだよ。外周の構造体が上下は2.4mくらい、左右は3mくらいでそこは骨組だけでなく、ハニカム外板まであるんだ。要は硬いところが4分割で円周の半分弱あって、それにプラスしてフレーム、そこに外から嵌めていくから成り立つんだよ。
それ以外の大きさだと、5mは可能性あるけど、10m以上は鉄道で運べるサイズは難しいかもね。いや、現地組立なら可能だけどさ。シールドセグメントの形もかなり複雑だし、ヒンジの作りも凝っているから、単純な拡大縮小ではどうにもならないよ?オレが言うことじゃないかもしれないけどさ。ホント、パズルだよ。布施はパズルとか好きなのかな?」
俺に聞くなよ、1 on 1 してないのか?
「してるけどMarkdownで書いたものをささっと確認しておわりだよ。開発部の連中は確認する項目が多くて長いんだよ!あんたみたいに雑談に費やす時間はないの!!」
俺は雑談のほうが長いな。
「といっても社長に技術的な話で開発部のメンバーと喋れといっても困難だろうから、雑談とか困りごと相談くらいしかないよな。あ、思ったけど3m機の横幅縮めるのはすぐできるな。トラックに載せて輸送するのが楽になる。すぐに取りかかろう」
それは頼む。ガンさん始め、工事部の職人も喜ぶだろう。で、沖永君、國本さんに調査を頼んでいるRORO船のほうはどうかな?
「あれ、RORO船・・・では絶対ないけど、我々はそう認識している、という意味でRORO船と言いつづけたほうがいいかもな。あれさ、ウォータージェット推進だったろ?で、ディーゼル駆動だから、基本的に重いし、そもそもウォータージェットは、低速域での効率が悪い。内航海運では出しても20~25ktくらいだから、まったく向かないね。社長が行ってた海峡フェリー、もう使ってないみたいだけど、35kt以上出ていたっぽいよ。で、うちのROROはたぶん50kt以上行ける」
おいおい、それは燃費がヒドいことにならないか?
「社長、重力波エンジンは重力波以外も生みだすって知ってるよね。名目上ディーゼルエレクトリックってことにしてモーター駆動のウォータージェットに改造して、ディーゼルエンジンを積まなければいい。ただ問題がある」
おお、そういう手があるか。で、問題についてだが・・・確実にバレるということか?
「そう。そんなスピードで走っているのに、どこの港でも燃料を買わない船なんて絶対おかしい。偽装で買おうにも燃料タンクから減る燃料なんて予備で積む発電機用くらいで、減りようがないからな。まぁ、布施みたいなアイデアが出てくるかもしれないから、沖永には続けてもらおうと思う」
まぁ、洋上で小型タンカーに売る手はあるが、二重帳簿が必要になりそうだからやりたくないな。
「それは・・・どちらにしろ、マトモなところに売る話じゃないよね? やめておこうよ」
そうだな。で、シールドマシン電車に話を戻して、布施君は気動車といっていたけど、反応炉からの電力を利用するのなら、架線は使わないものの、電車だよな? 3m、5m、7mは実用化を進めるということでよいかな
「3mはトラックで特認とらなくて運べるように改造したほうがよいと思う、でも長距離でコンテナ輸送するとなると小改造では入らないから、電車型も考えていいのかもな・・・」
電車型というか、台車にアウトリガーを備えた即席発進基地と考えれば、在来工法で掘割を作っておいてそこに線路を引くとか応用のやりようがあると思うぞ。
「ああ、そう、それはそうだね。別に立坑を掘らなきゃいけないと決まったもんでもないからね。立坑は普通に危険だしな。工法をそちらに進化させるのも充分にアリだね。ウチは一時的なら残土が出ても運ばなくていいかもしれないんだからそれがいいかな」
そこは工事部とも相談だな。そういえば、布施君が、石板外板を思い付かなかったことを、お前が先週の呑み会の時に叫んだようにしてるんじゃないか、と推測していたがどうだった?意地悪な質問か?
「いや、意地悪ではないよ。電車型にして、車両限界を超えるところを内蔵して現地で展開するって考えると、どうしても干渉しちゃうんだ。骨格プラスハニカム構造外板のところの骨格だけを活かすってところまでは考えてたよ。あそこまでパズルみたいな構造にしてセンターナセルまでの構造をほぼ放り込むまでは考えてなかったけど。動画は見たけど、試作は必要だよなぁ、あれ。パネルを石板は考えたけど、隙間ができそうって、オレは考えちゃった。あそこまでジグソーパスルってのは思い付かなかったんだよ」
でも、やれそうなんだな。
「多分ね。試作はやらせないと危険だけど。ちょっとジェラっちゃうけど、素直に関心するよ。大幅に軽くなった分、鉄道車両としての18~20mの台車にアウトリガーとクレーンも積めちゃう。土工は必要だけど発進・回収基地になる。オレには無い視点だよ」
では、変形合体シールドマシン発進基地電車計画はGOだ。あと、偽装用の小型発電車も作ってくれ。
「ま、いるね。後ろに繋いでいればとろとろ走っている分には言い訳が立つね」
頼んだ。




