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やってて良かった金曜日の呑み会

「と、ガンさんとも相談したんだが、どうやら輸送は大変になりそうなんだよ」


金曜日はなるべく本社に戻り、金曜日の呑み会だけでも出るようにしている。


平戸鉄道の復旧案は大筋では了承された。しかし問題が山積みである。特にシールドマシンの輸送と、現地での組立、分解だ。


工場で分解して31ftコンテナに収納すれば、福岡貨物ターミナルまでは直送できる。箱崎埠頭は目と鼻の先だ。コンテナをトラックに積み替えればよい。RORO船をトラックフェリー代わりにチャーターすれば鷹島口の目の前まで船で行け、すぐに陸路をトラックとして出発できる。

その上比較的近くに発進基地に使えそうな土地も確保できそうだ。


工場<貨物列車1100km>福岡貨物<トラックに積み替えてすぐ>箱崎埠頭<RORO船で余裕みて4時間>今福港<トラックで15分くらい>発進基地候補地


時間はかかるだろうが、ここまでは良い。ここからが問題で、前島側には回収・解体基地は作れそうにない。よってバックで戻ってからセグメント機でギリギリまでシールドセグメントを嵌めてあとは従来工法で掘る。陸橋の施工も従来工法でかまわない。鷹島側の発進基地まで戻れば分解できる。仮組の支保などはしたときのままにしておいてかまわないから、分解してコンテナに積め直すのも容易だ。そこからトラックで末橘へ持っていくのも問題ない。


しかし、末橘トンネルの両端のどちらにも、発進基地兼回収・解体基地を作るスペースは無いことも無いが、そこに、トラックを持っていく道路がない。そこに仮設道路を作ることもできるがずいぶんな面積の田畑をツブしたり、山林の切り開きを伴うことになり、住民感情的にきわめてよろしくない。


西田平側にある、平戸鉄道を超える陸橋から強引に降ろす案も考えた。どちらにしろ現在不通なので、線路を支障しても問題ない。鉄骨でスロープを作り、ゆっくり降ろす案だ。そこで問題になったのが、今回利用する予定の7m機の直径だ。その名の通り7mある。


「これが5m機なら4.6mだから建築限界ギリギリアウトとは言え、まぁ多少の余裕はあるのでなんとか通りそうなんだが、7mだと信号線の電柱どころか、踏切とかそれこと隣の家とかにブツかる可能性も高くて、とても無理で、さて、どうしようか、というところなんだよ。最悪は仮設道路で田んぼをつぶすしかないんだが、なんとか避けたいんだ。むしろ、こっちのほうが7m機を使う真骨頂なのにな!」


すでに一時間近くが経過し、既に単なる呑み会だ。


「社長、いいですか?」


おお、布施君か。開発部の副部長兼鉄道チーム長ごくろうさまだな!呑んでいるかい!


「はい、ほどほどに。一応シールドマシンも鉄道にも関係あるのですが」

「おーい、社長、布施は鉄オタだよ!」


お、アイツが通信で呼びかけてきた。


そうなんだ。布施君は鉄道にも造詣が深いと。俺も呑むぞ。やってられん。


「はい、まぁ鉄の道は深くて広いので、ほんの浅い知識ですが、ある程度は、はい。で、コンテナ輸送にこだわる必要性ってありますかね?」


無いが、トラックより鉄道のほうが、カーボンフットプリントも小さいし、会社の命題的にも、な。


「いえ、鉄道は鉄道です。コンテナじゃなくてもいいかな、というジャストアイデアです」

「布施、どーゆーこと?」


アイツだけでなく、俺も知りたい。目で促す。


「僕はシールドマシンにも関わっていますが、3m機はともかく、5m機以上ってどんどんスカスカになっていくじゃないですか。ほぼ、外側の円柱を保持するための構造体の重さです。それから、3, 4.6, 7, 10, 14.7というラインナップは、立坑と横坑の比率のためののものですよね。CTO?」


「そーだよ、布施。基本√2+αね。もしかして鉄道用に違うサイズ?まぁ、ほとんどコピペや拡大縮小でいいからできなくはないけど・・・」


「設計図的にはそうですけど強度計算もしますから、それなりには面倒です。CTO。それでですね、社長、鉄道輸送といえば甲種輸送というのはご存知ですか?」


ニュースで見たことくらいならな。遠い工場から車両を実際に使う現場まで深夜に送るやつ、でよかったかな?


「そうですね、日本の中古車両を海外に送るため、港の近くまで持っていくなどもあります」

「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ーーーーそれ気づかなかったーーー!!!変形も漢のロマンだよなーーーーー!!」


おい、音割れしてるぞ。あと、ちょっと意味わかんないんだけど。俺が呑んでるせいか?


「いえ・・・これだけでわかるCTOがどうかしているだけです。すごくシンプルに言うと電車型、実際には架線は使いませんから気動車型のシールドマシンを作りませんか?ということです。

 社長のお話だと、鉄道には注力していくおつもりとのことで、検討していただければ幸いです」


検討はしてもよいが、気動車型のシールドマシン?どういうことだ?


「まず、一般的な気動車ですが、長さは16m~20m、幅はざっくりで3m、高さは4mです。重さはモノによりますが、20トンから40トン程度です。

 で、レールと車体との間にはボギー台車というのが付いてまして、一般的には2セット付いてます。甲種輸送では基本使いませんが、エンジンに繋っているのは1セットです。

 今、平戸鉄道で動いているディーゼルカーは30トンくらいです。7m機は40トン、かつ列車の台車やフレームなどは別枠で10トン以上あるので一両編成では厳しそうに思えますが、三セク転換前は、一両で60トンを超えるディーゼル機関車も入っていたので、基本的にはゆっくり走るぶんには問題ないと思います。まぁ、今はわざと重くしているとこもあるので、ある程度の軽量化も可能です。

 仮に7m機同等にするなら、幅高さともに7mを確保できる場所までは線路の上を自走します。ゆっくりでいいので駆動用モーターを一つ、重力波エンジンから電力を供給する運転用回路も作っておきます。

 現地はアウトリガーを出して車体を固定できるところ、とした場合、線路上に発進基地が作れます。そしてアウトリガーを出して台車を固定したらシールドマシンを組みたてます。左右の壁と上の屋根、そして床はシールド外壁円柱の一部としておいて、内側に分割しておいたそれ以外の外壁円柱・・・不等分割なら8分割でいけそうですが、10分割でもかまいません・・・を配置しておいて。重力子フィールドを使えば、その場で嵌め込めます。

 その後は必要なパーツを重いものは、例えばカッターブレード・・・これは4か6分割でしょうね・・・みたいなものはフィールド、軽いモノは手組みや機械を使って配置していけば、現場組立、解体が非常に容易になります。最後に重心点にあるターンテーブルを回転させれば線路からズレた角度に発進できます。まぁ、地山までのガイドなどは従来工法で組み上げておく必要がありますが」


長い……が、イメージは湧く・・・え・・・ん・・・「マジか?できるのか?」・・・思わず声が出てしまった。

「できちゃいそうだね!布施!図面起こせる?重量計算がちょっと甘い気もするけど……あー、金曜日かーーシャットダウン後かーー!!」


「そんなこともあろうかと。思い付いてから何…日かありましたので、こちらにご用意してあります」


布施君は、メモリを出してきた。いい淀んだのは夜に独自研究をしたってことかな。


いや、布施君、見るとしても月曜だ。君達も週末はしっかり休んでくれ!

もしかして言ってみたいセリフ一覧のうちの一つを消化したということか?


「おっしゃるとおりです (ニヤリ) 週末はしっかり休ませていただきます。」


そういえば、伊万里の線路がJRと切れたなんてニュースを、昔、聞いた気がするが、甲種輸送してもらえないんじゃないか?


「社長、大丈夫です、佐世保側は繋がったままです。少し前まで直通運転をしていたくらいです」


しかし、こんな長距離だとJR各社との調整が大変で甲種輸送まで時間がかかるんじゃないか?


「そこも大丈夫です。福岡貨物までは定期の貨物列車が出ています。一両に押しこめれば定期貨物列車と一緒に牽引してもらえる可能性はあります。前例がありますので。細かな日程調整は必須でしょうけど。

 そうすればJRFとJR9とだけが調整すればよいので、調整の複雑度は格段に下がります。

 それでもダメなら、社長がおっしゃった今福港まで海上輸送して、トレーラーに載せて今福駅までなんとか持ってくれば線路には載せられると考えます」


流石鉄オタ。抜かりが無いな。


正直、この話題の呑み会は二回目だった。今回は検討を進めても、ちっとも進展しない俺のグチに近いものだったんだが、前回、ちゃんと聞いてくれていたんだな。ウチの社員は素晴しいぜ!

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