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地域の建設会社だけでなく、内航海運業者も買収できた

結論だけ言えば、建設会社の買収はうまくいった。手続の完了はまだだが。契約書類は全て締結できた。


ガンさんの読みは7億円だったが、もっと安く済んだ。開口一番、「設備もかなり老朽化してますし、無料でお譲りしてもよいほどです」とまで言っていた。


それはありえないと思い、確認したところ、社屋だけでなく、元社長の自宅の土地も会社の資産になっており、そこも含めて土地は売らないつもりだったらしい。それでは来年からの固定資産税の支払いの時期にご自身のお金がないと大変なことになるのでは?と指摘すると、「あ、そうか、社屋分の賃料が欲しかったんじゃが、そりゃ借りんと払えんなぁ、税理士も頼まんといけんくなるのぉ・・・甘かったかぁ・・・」と頭を抱えていた。


なので、自宅分の土地は一旦買い取ったあと、分筆し、再度お譲りすることもできますし、現金化してご子息が福岡などの都会にいるなら近くの物件を買うことも可能ではないでしょうか、などの提案をした。

最終的には以下の形になった。


           ・・・


もうすぐ80歳ということで、社員への責任を持つ精神的余裕も無くなったし、社長を継いでくれる社員も息子もおらんのよ。とおっしゃられてましたが、御自宅を拝見したところ、少なくともリフォームは必要に思えました。


「そうよのぉ、老夫婦には大きいし、段差も多いんでなぁ」


隣県にはなりますが、もう少し街、大都市ではないですが、それなりに便利な街の郊外にバリアフリー住宅を建てるご提案も可能です。お孫さんもご結婚されたと伺いましたので、お孫さんが曾孫を連れて泊りにくるくらいの大きさでお作りします。さらにその市の市街地に8棟の単身者向けアパートを建てて、毎月の賃貸収入が発生するようにします。


「しかし、借金をこの年でするのは抵抗あるわ」


いえ、これは相続税対策です。アパートを資産、借金を負債として、社長に所有していただくことで、奥様、お子様への相続税が発生しないようにできます。管理もなにもかも大手のサブリース会社がやる合法の節税制度ですから、使わないと損ですよ。


「もう、いい加減、あんたの頭がいいことと、ちょっとズルいと思うことをするんでも違法なんはせんのはわかっとるからええけどね」


はい、違法性はないです。万が一社長が病気になられたり、これはアレですがおなくなりになったとしても奥様やお子様にアパートと賃貸収入を引き継ぐことができます。正直に申しますと、社長が極端に長生きしてしまうと、節税効果は薄れてしまいます。


「まあ、若手といっても40過ぎやけど、妻子もおって、まだ何十年は働かんと食えんもんらの面倒を見てくれんなら、ワシの寿命などどうでもええが」


そこは責任をもって、しっかりとやらせていただきます。社長もまだまだ長生きして下さい。


「よおいうわ。でな、ジジい仲間で紹介したいのがおるんじゃが・・・」


           ・・・


実際には新しく作る家を子供や孫に渡す方法や、法人向けでなく、個人向けの比較的契約金の安い税理士の紹介なども含めて、元社長の今後の生活についての話をして納得してもらった。


社員についても再教育を含め定年まで働ける環境作りをすることを約束した。当たり前だが気持よく働いてもらうことで利益を上げるというのはずっと変わらない仕事のやり方だ。


それはそれとして、紹介したい仕事仲間というのが離島への海運業者だった。


考えてみればこのあたりには離島も多い。離島というのは色々な意味で過酷で、人が少ない、仕事が少ない、支援が届かないという条件なところが多い。


このあたりの離島で橋が掛けられてないところは特に小さなコミュニティしかないところばかりだ。

橋があっても遠回りだったりすると、大量輸送、重量物輸送は船のほうが確実な場合も多い。


紹介したい、というのはその手の仕事をしている会社の社長であった。


建設会社の知り合いだけあって、離島中心の海運業者といっても人や通常物資の輸送だけでなく、コンクリート製の重量物や建設残土の輸送の免許も持つ、内航海運業者だ。


但し、カツカツながらも黒字だった建設会社とは違い、こちらの会社は赤字だ。どちらも補助金頼みには違いないが、離島への輸送というのは補助金を持ってしても基本的に黒字にしずらいそうだ。


ただ、RORO船を持っている。いわゆるカーフェリーを想像してもらえばいいが、直接、桟橋に付けて車両や荷物を積み卸しできる船だ。離島でいくらかでも儲かる仕事があるとすれば、公共事業だ。道路工事、学校や役場の建築、橋梁やトンネルなどの建設だ。


そういう建設工事用の資材、車両などを運べるRORO船なので、一般的なカーフェリーとは構造が異なり、まず旅客用の設備はほとんどない。


次に形だ。軍事用の空母という平たい離発着用の甲板を持つ船の想像は付くと思うが、貨物用のRORO船は、あそこまで平たくない。車両甲板が雨曝しのものもあるが、多くは長方形断面を持つ空間が内部に存在する中型~大型の船だ。


俺は内心の興奮を抑えながら質問した。


RORO船ですか、話では聞いたことありますが、自走貨物の運搬船ですよね。離島の公共事業で使うとなると大型の建機も乗るんでしょうね。


「じゃな、試作船のお下がりじゃが、喫水も浅く、幅も広く、高さも高い」


では、幅20m、高さ15m、長さは40mというところでしょうか。


「いやいや、そこまではない、幅は15m、高さは12m、長さは、まぁ、ほぼ40mじゃな。じゃが欠点がある」


ほう、欠点とは何でしょうか、古くて老朽化が激しいとかでしょうか


「古いがメンテはしちょるから、ほれ、あやつの会社でもドックにいれちょる。欠点はシンプルじゃ。ランウェイの幅が15mもあって、つけられる桟橋が限られる。そして、目一杯貨物を入れると沈むんじゃww」


ほ、ほう、それは結構な欠点ですね。試作とはいえ、そういう欠点は珍しいのではないでしょうか。


「双胴船でな、喫水を浅くしておる分浮力が足らんのじゃよww。ま、試作じゃしなwwww。もっともコンテナを4、5段積みして5列か6列に入れて3連分じゃから、そんなん離島運輸にいらんww」


・・・つまり、全長50~60m級の細い胴の船を2隻並べその間に内寸15×12×40の箱を付けてしまったということか?ランウェイが15mということはその箱がまるまる開く?そんなRORO船知らんぞ・・・


ちょっとまってください。40ftコンテナが5×6の30の3連で90個?2700tとかじゃないですか!そりゃ沈みますよ!というか、そんなのランウェイに載せようとしている時点で浸水しませんか?


「おう、わかっとるんじゃな。無理じゃ。デカいわりに積めん、100tは余裕なんじゃながな。200tはまぁなんとかじゃな」


また・・・珍しいRORO船ですね。双胴船とおっしゃいましたが、長さは60m、幅は25mくらい・・・でしょうか。係留費用もかかってらっしゃるんでしょうね。


「現状ではあやつのところで荷役用にハコの下に船底を追加してあるから三胴船かの?場所は島のほうならタダみたいなもんじゃからな。」


島なら無料同然・・・は想像できなくもないですね。追加の船底は、浮力とバラスト調整のためにでしょうか。たしかに荷役中はそのほうが安定しそうですね。まさかとは思いますが、高速走行時には底が浮き上がって細身の二胴だけで浮くとかするんですか?


「空荷ならできるらしいがやっちゃおらん。それをやると油代が高いんじゃ。空荷ではなるべく安く動かさんとなぁ。追加の船底も浮力だけじゃのうて構造強化と走行時の燃費改善も兼ねとる」


これは、是非図面を手に入れてアイツに解析させないとだな。船の解析も・・・アイツならできるだろう



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