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災害復旧って予想より面倒・・・外野の声とか・・・

更新維持のため、一部文字数を減らしてお送りします

平戸鉄道の災害復旧工事を受注した。


ざっくり説明すると、長崎の北西部を通るローカル3セクだ。国鉄・JRからの転換当初は優良3セクとも言われていたらしいが、少子高齢化、地域の過疎化には耐えられず、地元の負担金でなんとか生きのびている鉄道だ。


災害は地震と台風のダブルパンチで、唯一の長大トンネル・・・といっても4km程度だが、そこへの土砂流入、かつ、当該トンネルはそれなりに老朽化していたので、地震と水害、土砂、水が入ったことによるクラックなどの多発が確認されている、というのと、唯一風光明媚な半島を回り込むところで切り通しや路盤の崩壊が発生してしまった、というところだ。


元々は炭鉱からの積み出しを担う鉄道だったということで、台風被害のことも考えて割と内陸に作られている。九州のこのあたりなら、まぁ、少なくとも数年に一度は絶対来てしまうだろうし。


しかし、昔の技術レベルでは掘れないところが1km程度海岸沿いにだけなっている。そこは 国道や県道でなく、鉄道が一番海沿いになっている。そこに地震での崩落と台風の水害が重なった。


落札後、平戸鉄道に出向き、担当のかたとの会話をしたが、結構頭が痛かった。


現状、両端で折り返し運転をしている状態ですが、平戸口までの復旧は喫緊の課題ではないでしょうか。


「はい、お題目ではそうなりますが、正直、伊万里と佐世保のローカル通勤通学だけがなんとか採算が取れるという状況、というか、そこも赤字ではあるんですが・・・お恥かしい限りではありますが、補助金がなければ復旧は何年かかったか・・・目処が付かない状況でした。しかし、御社の落札額で本当に工事が完了するのですか?他社の参考見積は100億円以上で、そもそも入札に参加していただけなかったのですが」


問題ございません。地権者の問題がなければ半島部分はまっすぐに掘り抜くこともできます。景観は望めませんが、災害には極めて強くなります。


「末橘は掘るしかないですが、そちら、鷹島側は微妙ですね。そんなに地盤もよくないと聞いてますし、掘れるのですか?」


はい、今回5m級機を投入予定です。円形断面なので、幅はかなり余裕があります。まだ確定ではありませんので大きい機械を持ってくるかもしれません。


「実績は聞いてるんで、疑ったりはしませんが、あの車窓を残せとか外野の声がウルさいんですよ。あとお金の話で恐縮ですが、大きい機械にしても価格は同じということでよいですよね?」


はい、そこは大丈夫です。景観の件ですが、申し訳ありませんが、そちらは貴社側でお願いします。


「そうですよね。現実として、毎年とは言わずとも少なくとも何年かに一度は台風が来るわけですし、頑丈なトンネルにしておけば被災のレベルも下がってくれるはずですよね」


おっしゃる通りです。末橘も上り勾配で掘りなおし、路盤の下に水、土砂を流す、いわば排水路を設ける予定です。何箇所か工事の為に土地をお借りしたり、買収させていただけると幸いです。こちらのご協力もぜひお願いします。


「はい、協力はします。またお金の話で恐縮ですが、それは見積と別に費用がかかるということですか?」


いえ、ご心配なく。費用的には粗々、概算ですが、買収、借地の費用も入っています。弊社として正直に言いますとお安くしていただけると助かります。過大な見積はしておりませんので。


「それはそうですね。がんこな方もいらっしゃいますが、協力的な方も多いので、こちらとしてもなるべく手を尽します」


本当にありがとうございます。


「今回トンネル工事がメインになりそうなのであまり問題にならないと思いますが、景観的な問題というか地元の要望としては、あまり近代的に作ってくれるな、というのもあります」


お気持ちはわかります。ウチの技術だと在来工法に比べ、利用するコンクリートの量が少ないので、昨今の高速道路の高架やトンネルに見られるような真っ白な仕上りにはなりません。

硬度としては同じか優れているのですが、岩のような見た目になります。

それでも一部は使わざるを得ませんので、そこだけは真新しいコンクリート色になってもご容赦下さい。


「それはしかたないですよ。でも見た目にも配慮してもらえた、と感じるのであれば皆さん納得すると思います。いえ、そうなるよう弊社も説明を努力します。いや、こんなに地元感情を気にするのもアレかと思われるかもしれませんが、ウチは補助金、つまり元は地域の人が支払った税金で動いているようなものですので……」


いえいえ、ごもっともです。弊社も開発した技術が地方のインフラ強化に役立つのであればこれ以上の喜びはありません。


「うれしいお言葉です。でも本当にこの金額で利益を出せるんですか?そういう素晴しい使命感をお持ちの貴社が損失や資金繰りに苦しんだり、最悪倒産される、というのは今後のメンテナンスのことを考えても本意ではございません。と、言っても落札された以上、この金額でやっていただくしかないのですが」


そこは大丈夫です。適切な利益を得て、しっかり納税もさせていただきます。

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