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日本盾管隧道建設工業株式会社  作者: Jack...
9年目
111/112

これ?練習航海なの?

小野寺瑞季です・・・


一応練習航海と言われて出航したんですが、絶対『練習』じゃないよね、これ。

部長さんも船長も鼻歌まじりでご機嫌ですが、私は不安です。


まぁ、良くも悪くもいつも通り、突っ走りまくりの高城くんもいますが・・・

これもどちらかというと不安要因です・・・。


救いはお二人のお子様の(りく)くんがかぁいい♡ことです


というわけで既に出国済み扱いで津軽海峡経由で某社を目指しています。

実際には会社ではなく貿易港の保税区画まで付け、ロールオンしてもらうんですけどね。


成瀬くん、順調?

相変わらず男には見えないけど、彼女とはよろしくやってるの?


「ちゃんと避妊はしているから大丈夫!」


そうじゃなくてさ!


「うん。女装で操縦できるのはありがたいなぁ・・・」


うん。そうね。普通の船じゃダメだろうからね・・・まあ、いいや。

別に見てる分には美人だから、見るだけなら楽しいし・・・


で、・・・この船のクセとか慣れた?


「うん。異常だね。この船」


ああ、やっぱ異常なの?


「レスポンスが早い。船の感覚じゃないよ。クルマか・・・大型トラックくらいの感覚なんじゃないのかなぁ。普通免許しかないから運転したことないけど・・・」


仮定の疑問形かよ・・・わかりづらい・・・どういうこと?


「座学では説明を受けたけど、重力波エンジンとリムリニアモーターによるウォータージェット推進って、こんなに凄いんだって思ったよ」


まあねえ・・・離岸のときも太平洋に出てからも驚いたもんね・・・


「でしょ?減速試験もそうだし・・・タグボートも無しに真横に動く船なんて想像したことすらないよ」


           ・・・


「じゃ、発進するね。最初はアタシが操船するから見ててね?」


部長からそう言われて、航海士候補だけでなく、全員が操船席の後ろに集められました。


「すげえコクピットだ・・・船じゃないみたいだな・・・」


高城くん以外もほど同意見なようでざわざわしてます。


「まあね。元々ドローンとか作ってた連中が作ったコクピットだからね」


ジョイスティックとタッチパネル・・・部長、船の操船ってこんなのでできるんですか?


「うん、できるよ?サブメニュー開くのが面倒だけど、必要があればガンガンショートカット作るから」


え?航行中にソフトウェア変更できるんですか?


「半分はアタシが書いてるし問題ないよ。デバッグ用のログ、今でもずっととりっぱだし」


危なくないですか?


「まあ、255個前までならマルっと戻せる仕様になってるからだいじょぶだよー」


「そうそう。部長は航行中にレーダーや超音波のシステム開発して取り付けしちゃう人だからソフトだけなら全然問題ないですよ」


船長・・・それは異常な上にも異常だと思います。船長は・・・普通の船に乗ってたんですよね?


「そうですが、いきなりヤラれました」


どういうことですか?


「最初の航海で私一人で操船だったのですが」


いきなり一人でですか!御愁傷様です・・・


「いえいえ、一応、面接でも会ったと思う神崎課長がワッチ要員で来ては、くれましたけど・・・」


ああ、神崎さん、大きいのに、にこやかな方ですよね。船のご経験もあるとは知りませんでした。


「無いです。公園の手漕ぎボートくらいとおっしゃってましたよ?」


ド素人じゃないですか・・・


「まあ、居るだけでも違うは違いますよ、で、やられたってのはですね」


ああ、その話でしたね。


「当時はこの船、もっと横幅とか大きかったんですよ、逆に長さは今のほうが長いですけど」


ん?・・・奇妙な改造ですよねぇ・・・今のほうが高速船だとは思いますが


「はい。で重さ自体は以前のほうが重かったんです。そんな船を30ktで走らせてたんですが、管制室からの指示で停止させたことがあるんですよ」


停止って・・・30kt出してたら止まりたくても止まれるものじゃない、じゃないですか?


「普通の貨物船ならね。この船・・・じゃなくてその当時の船ですが、軸流ですがウォータージェットではあったんで10秒ちょっとくらいで静止したんです」


・・・ゾワっとした・・・航海士連中はほぼ同じ反応だ・・・異常すぎるとしか言い様がない・・・


船長・・・SFの宇宙船でももっと止まるのに時間かかると思いますよ?


「そうでしょうね。そのときに私は常識を捨てる決意をしました。タッチパネルのメニューを選ぶだけで静止する船なんて他に知りませんから」


「まー、水があるから真空中よりは止まるよーー。今、この船なら30ktからなら3秒で止められるよ?」


「この通り、常識にブチカマシを掛ける人が作った技術で動いている船ですからね」


75mの船が30ktから3秒で止まる?!部長も船長もイカれてんのか!?


「信じられないのは私にも理解できますから、太平洋に出てからやりましょう」


「よし、港は出たよ。まずは陸地から離れるね。沖に出るよ」


部長はそういうとフィン展開と書かれたボタンを押しました。


するとウィーーン・・・グーーンというような音が響き渡り、モニタの一部の水中画像に『翼』としか言いようのないものが展開されました。

モニタは9面以上あり、左上と右上がまったく表示されてませんが、正面の計器画像以外にも船の左右前後のリアルタイム映像が出ています。あとはレーダーやLiDAR、ソナーの画像も出ています。ホント、戦争でもする気かよってコクピットですよ・・・


「じゃじゃーーん。新機能~~!!ポチっとな」


部長はそう言うと、哨戒機展開、というボタンを押しました。まあ、タッチパネルなので本当にポチって音がするわけじゃないんですが。


「ドローンですか?船長」


「そうだ、高城。前方遠く高くに二機、近い前方低くに一機だ」


「ほとんど音が聞こえないんですが・・・」


「哨戒機だからな」


高城くんと船長の会話は噛み合ってないような気もしますが、一機は近くで静止・・・というか目視で200m程度でしょうか・・・船の速度と同期して低いところを飛翔しており、二機はもう見えなくなってしまいました。


前方の哨戒機は見えないんですけど・・・いいんですか?


「むふーー、目視では見えてないだけで、レーザー通信ができる程度には直線上に居るよ? 行くぜ、合成モード!!」


部長がそう叫ぶと、今まで前方の望遠画像だった上の真ん中の画面が変化しました。そして、上の左右の画面は上空からの映像になりました。


「よく見て、ソナーとLiDAR画面も変化しているよーー」


あ、本当です。元から画面の半分、縦の画面でしたが、より精細になりました。


「よーし、そろそろいいかな?アクティブフローコントロール作動!」


特に変化はありません。


「船長、復唱と確認を頼む!!」


「承知しました」


「5nm先までクリア」「はい、5マイルクリアです」


「計器異常無し」「はい、ありません」


「船内放送開始」「OKです。発声願います」


『これより全速前進を実施する。現状の20ktから55ktに増速する。着席可能者は着席せよ!着席不可なものは10秒以内に手摺りなどを保持し、衝撃に備えよ』


船内スピーカーから部長の声が響きます。


「全員、手摺り保持!!」高城くんの声が響き、私も含めてコクピット後ろの手摺りにしがみ付きます。船長は後方の船長席に最初から座っています。


『5・・4・・3・・2・・1・・増速』


しかし・・・55ktって・・・時速100キロ・・・船の速度じゃないよ・・・


「え・・・揺れてないよ・・・」


九条院さん?ああ、高専からだから乗船経験は新卒でも割と豊富なのね。

まあ、練習船はねぇ・・・


「これがアクティブフローコントールの威力だ!!」


「まさかとは思うけど・・・無理矢理キャビテーションを消してんの?!」


「よくわかったな!流石機械屋!!」


宇佐美さん・・・分かるんだ。私には凄いということは分かるけど原理なんかまったく分かんないよ・・・高城くんと成瀬さんに目を向けるとやっぱり左右に首を振るだけだった。成瀬さん、その仕草・・・普通の女子よりよっぽどエロいよ・・・


「船長!!再度放送だ!!」「承知です!どうぞ!」


『第二次増速及び全速停止試験を実施する!!70ktまで加速後に0ktまでの減速行う!!加速は先程より緩やかだが減速は最大0.5G程度の衝撃が発生するので、腕力、保持力に自信の無いものは前方の壁に背中を預けて座るか、頑丈自慢のクルーに救いを求めよ!!』


救いを求めよって船内放送ありぃ?

まあ、元海自多いし、女子で自信がない人は男子に守ってもらえばいいか。

うん・・・大丈夫そうだな。甲板員はがっつり体型だし二人保持できそうな気すらするし。


高城、奏上して!


「高城より部長へ!!候補生全員安全確保!!実施願います!!」


「よく言った!!増速実施!!」


これが・・・70kt・・・いや、全然実感ないわ。

計器というか画面の速度や海図の動きがちょっと早くなったくらいで、さっきみたいな加速感はないなぁ・・・


成瀬さんもそんな感じ?って目線を送ったら頷いた。やっぱ美人だな。


「はい、70kt到達を確認しました。船長から部長へ、減速時はカウントダウン後の実施を重ねて要請します」


『了解。テンカウントダウン後に全速停止試験実施!!総員衝撃に備えよ!!・・・9・・8・・7・・6・・5・・4・・3・・2・・1・・減速!!』


ごぉおぉおっおぉおぉおぉおぉおぉ


流石に轟音が響く!あと、音というか超音波というか超高音も成り響いている!!


通常では有り得ない・・・船の前方に扇のように水が弾け飛ぶという現象のあと、船は静止した・・・なんじゃこの船・・・この技術・・・SFでもこんなのないよ・・・物理法則を無視していない?


「はい。停止確認」


「ね、分かったでしょ?船長が言ったこと」


はい・・・船の常識というものは少なくともこの船には通用しないんですね。


「ツヨシ・・・ラッシングどうしようか・・・」

「そおっすねぇ・・・どうしたもんですかねぇ・・・鉄平さん・・・オレは車のタイダウンポイント、フレームがイガまねぇかが気になりますよ・・・」

「確かに・・・そっちも心配だなぁ・・・」


甲板員希望の約二名が真っ青になってます。

ああ・・・車両の固定かぁ・・・確かにあんな機動をされたらどこへすっとんでいくことやら・・・


「やーーねーー?普段はこんな機動しないわよーー。どうしてもって時だけよーー。第一、哨戒機があるんだから濃霧でいきなり大型タンカー出現とかって普通はないから!」


部長、哨戒機・・・ドローンって何時間飛べるんですか?


「一応公称は9000時間ね。もっと飛べるけど」


え?公称9000時間なら安全を見て4500~6000くらいってほうがしっくり来ますけど?


「ちょっと待て、いやお待ちください。部長」


どうしたの、高城?


「9000時間ということは、一年ちょっと、ということになりますが・・・お間違いございませんでしょうか?」


「お間違いございません(エヘン)」


「・・・承知いたしました」


部長・・・『得意満面』という形容詞を使うとしたら今ですね。

一年以上飛びっぱなしのドローンですかぁ?!


・・・更に色々と・・・常識を捨てないといけない様子です・・・

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