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日本盾管隧道建設工業株式会社  作者: Jack...
9年目
104/106

半年前に入社した12人の自己紹介②

と、いうように、色々ぶっとんだ会社なんです。

休憩しますか?


「いや」「続けたいです」「だいじょぶです」「・・・」


・・・大丈夫そうですね。じゃ、続けましょう。


「じゃあ、次はあたしでいいですか?宇佐美麗華です。我ながらご大層な名前ですが、一般庶民です。渓ラインから来ました。海技士は機関の二級です・・・で、お分かりでしょうけど、この12人の中だともしかしたら一番年上かな?一応女は捨ててないんであまり年齢は言いたくないけど・・・けど、この船、機関室が無いそうですね・・・どうやって動いてるんですか?しかも数年で50KLなんて・・・一月持たないでしょう?」


「それはこれからね。でももったいなくない?商船なら・・・一等機関士だってできるでしょう?」


「そこは何回も・・・一人は女装だけど・・・出てる話で女だと成れないのよ!成瀬が一等航海士になったのは男だからよ。男装してればどうみてもイケメンでしょ?背もあるし、航海士っぽい制服がバッチリ似合う男なのよ。結局」


「でも、オフではずっと女装だよ?」


「それでも一等航海士をやるときは男装してたでしょ?」


「まあ、仕事だし・・・男装の女性っぽいメイクくらいまでは一応の抵抗としてしていたけど・・・」


「ふつーの男性は男性がそんなメイクしてるって気付かないわよ!!」


「まあ、女性しか気付いてなかったみたいだね。男性だとそっち系の人は気付くんだけど、僕は女子が好きだから・・・」


「やめーーーーい!!どこから突っ込んでいいかわからんわ!!」


部長、海上自衛隊にしても商船にしても男社会です。男性の三級海技士が一等航海士をしているのに、女性の二級海技士がその下に、なんてのは珍しくないと思いますよ。特に機関では二級の女性自体がめちゃくちゃ珍しい・・・とも言えますけど。ね?宇佐美さん?


「すみません。取り乱しました・・・はい。30過ぎくらいで機関の二級は・・・まあ、レアなほうだとは思います。そもそも機関をやる女性がレアですし・・・でもですね、部長」


「なーに?」


「未知の何かがあって、そこからの電力線は豪快に引っ張り回してますよね?」


「どーしてそー思うの?」


「仮に極秘裏に持ち込まれた超小型の密閉型原子炉があるとしても、電気を作ってからは配線しなきゃいけないはずですし、船長に見せてもらった映像がAIとかで作った偽物じゃないとしたら数MW以上の電力は消費してないとおかしいです。で、本物の船が目の前ある以上、そういう結論になるのは自明なんですよ!」


「そーなると機関士としてはどーなるの?いや、これはマジでわかんなくて聞いてるんだけど?」


「そんな電力を配電するなら、22kVとかの高電圧で配電しないと、電流で配線が溶けちゃうよねってなる。ですよ?」


「まーそーだね」


「そうなると、あのリムリニアモーターでしたっけ?聞いたことないけど理解はできるデバイスのところで変電するし、周波数変換もガンガン掛けるはずだよねってなる。わけです」


「ほーーー。なるほどーー」


「今は変圧器とかじゃなくて、半導体でも結構な電力を変換できると思うけど・・・仮にメインジェットっぽいあれが、1MW喰うとしたら、効率99%だとしても10kWの排熱が出る。そうなると多分複数系統に分けて一つチップが飛んでも大丈夫なようにして合成するはずだから、損失は更に増えると思うけど、とりあえず無視することにします。で、水は捨てるほどあるから排熱先はあるけど、チップに海水掛けたら一瞬で飛ぶからどうにかして排熱するデバイスを作りこんでいるはず。そうすると、そこに機械、メカ部分があるでしょ?」


「すごいねーーー」


「あと、今、ドックに水が入ってないから見えちゃってるけど、これ、層流制御しようとしてますよね?」


「わかるーー?」


「あと、リムリニアのハウジング・・・プッシュプルしようとしたけど諦めた痕跡を感じますよ?」


「おおおーーー。何故諦めたと思う?せーの!」


「「キャビテーション!!」」


「くらいまではわかるんですよ。機械屋、機関士の出番でしょ?」


「なるほどーーー。頼りになるなーー。船長、どこまで教えてあった?」


具体的には何も。アレもコレも実際には何も伝えてません。自分にも分からないことが多すぎますし。


「そーかーー。機械関係はそれほど得意じゃなくてーてゆーか苦手でさーー。試作と・・・シミュレーションしてもあまりうまくいかなくてさーー、試作機の破壊とその解析で、なんとか作ってるんだよーー。頼りにするよーー」


「・・・得意でなくてこれほどのものを作れるのは・・・相当トンデモないですよ・・・」


私の奥さん、船舶部長はそういう人です。


「元々、この会社の共同創業者のCTO もそーゆー人。やってみたらできちゃった、の繰り返しで会社を大きくしてきたんだよ。まあ、会社を大きくしたのは社長の手腕で、社長の金儲け力?は本当に空前絶後なトコロもあるんだけど、元になる技術はCTO がやってみたらできちゃった、で作ったものだねっ!」


「マジやべぇ会社に入っちまったみたい・・・よろしくお願いいたします」


はい。マジやべぇ会社なのは船長の私が保証します。

保証してどうこうってのはないんですが。


じゃ、佐藤さん?


「はい、佐藤翼です。海上自衛隊出身。潜水艦部隊でした。なので、退官した今も言えないことばかりです。陰気で無口に見えると思いますが、そのとおりなので御勘弁ください。ここに来た切っ掛けは、三佐にならないか、と言われたことです」


「えーと、三佐というのは三等海佐、昔の少佐さんということよね?その年でそうなら・・・普通は大出世じゃない?」


「一般論ではそうです。上官も、内示が出せるというのでご機嫌でした。でも・・・それを受け入れると・・・また潜水艦です。あれはちょっと限界でした」


「やっぱツラいんだ?」


「キツいですね。まあ、音を立てないのには慣れましたし、小声でしか話せないというのも、個人的には逆に楽でしたが・・・」


「それ以上聞くのはパワハラね・・・おっけー。でも興味でこれだけ聞いていい?」


「内容次第ですが、答えたくない、と答えてよいのであれば如何様にでも」


「それでいいです。で、そのスピード出世なら防大だよね?そっちのほうがキツくなかった?」


「ああ・・・それは問題なかったです。田舎のほうの出身で、高校もゲンコツでの指導が罷り通る学校で、理不尽とかには慣れてました。それに細めですが体力自体は今でも自信ありますよ?見た目でナメられるのも慣れてますし、その時はスルーしますけど」


「アタシ個人の感覚だと・・・辞めるときめっちゃ引き止められたんだろーなーって思うけど、佐藤にしてみれば、それだから辞めるんだよって感覚だったんじゃないかなーって感じ?」


「概ね、その認識で結構です。じゃ、最後ですかね。九条院さん、お願いします」


「はい、九条院(しおり)です。派手な名字ですけど、公家の末裔とかそういうのじゃなくて、瀬戸内海の離島出身です。商船高専から新卒で来ました」


「でも、瀬戸内海の離島なら公家が逃亡してその末裔というのはありそうよね?」


「部長、一応、ウチで言われているのは、九段目の段々畑のところにあった、神社かお寺のことを『院』といってて、これは漁船から見えますから、九条院になったんじゃないか・・・って推測です。まあ、公家の伝説はいっぱいありすぎてホントかウソか・・・どっちにしろ、仮に出自が公家だったとしても時代が経ちすぎてて・・・実家にしろ島の人にしろ、代々の農家か漁師ばっかで今となっては田舎、離島のジジババですね」


「その、神社かお寺って今もあるの?」


「台風で持ってかれちゃったみたいでないです。漁港の近くに神社はありますけど同じものかどうかは不明みたいです。どっちにしても山の上じゃ大変ですから」


「・・・お寺はあるの?」


「ありますよ。お寺の中に神社があります。都会では珍しいみたいですけど、島じゃ普通でした。禅宗・修験道系で、お坊さんも坊主頭じゃないですし。今のお坊さんには格闘技を習ってましたけど」


「え、あ、そうなんだ。修験道・・・山伏とかか・・・まあ、仏教と、神道というか八百万の神って感じなんだ。両方やんなきゃ食えないだろうし、そうなんだろうね。で格闘技?何?柔道?まさか少林寺拳法?」


「はい。本土のホテルで結婚式でもするんでなきゃ、全部そこです。ちなみに認定こども園も放課後学童クラブも書道教室も兼任です。小中学校は一つだけあるんですけどね。格闘技は総合格闘技というか、護身術というか・・・一応柔道も空手も黒帯は取ったって話ですけどね・・・合気道的な何かも入ってた気がします。高専では・・・一応柔道部でした」


「一応?」


「まあ、ちょっと話が出てたカッター部のほうが花形なんで・・・あたしはどっちつかずでしたね・・・でも高専だとカッターは3年までで事実上終わりなんで、その後はスケジュール的に自由な柔道部だけ・・・ほぼ在籍していただけ・・・です。結局専攻科まで出たので、あの島には7年半住んでました」


「へえ、高専も半年プラスは一緒なんだ。それであのタイミングで入社したのに新卒なのね?一ノ瀬さんもそうよね?」


「はい!四年半っす!」


「あれ?広瀬さんも商船じゃなかったっけ?一般企業の新卒採用なの?」


「そうですけど・・・私は院に二年半いたので・・・」


「ああ、それは普通にいるよね・・・これで全員か。じゃ、船長?任務の説明を」


はい。皆さん、パスポートは持参していますよね。すぐじゃないですけど、クルーリストはもう提出済みですので、わりと近い将来に出国します。


積荷はドーリーです。あちらの造船所で躯体を運ぶ機械ですね。大きいですよ?


「ドーリー・・・タイヤ付きの自走台車・・・トレーラー的なものと考えればよいでしょうか」


高城、いい質問です。その通りです。発電はディーゼルエンジンですが、駆動方式は電動ですね。向こうは造船所なので、ブロック工法だったとしてもそれなりの大きさのものを動かすためのものでしょうね。


「それは弊社製ではないですよね?」


はい。皆さんご存知の建設機械なんかを作っているところに取りに行きます。ちょっと日本海側ですけど。


「では出国してはマズいのでは?」


保税から中には入らないですから、入国はしませんよ。貨物船あるあるです。積み増し扱いです。つまり・・・


「上陸はできません。ということでしょうか?」


はい、上陸はできません。お寿司食べたいですか?まあ、諦めてください。それより、その後のほうがよっぽど大変ですからね。


「まあ、オーストラリアまで行くならそうでしょうね・・・」


「あのー、船長、質問していいですか?」


なんですか、九条院。


「信じられないんですけど・・・この船、ロールオン・オフまで含めてお二人で内航をこなしてたんですよね?」


はい。地上側にお客様側で人を出してもらう契約にしてましたから。お話はもうしていますよ?


「いや、聞いても信じられなくて・・・で、ですね・・・」


なんでしょう。


「部長と船長が、完全にバックアップに回るにしても、この船、順調に進んでいるときは・・・12人だとヒマじゃないですか?」


一応、練習航海を兼ねているので、それほどヒマじゃないですが・・・本質的にはそうなりますね。非常時は全員とんでもなく忙しくなりますが。


「それは常にそうでしょう。一応、船舶料理士を取得済みなんですけど」


それはすごい!!


「で、佐藤氏は・・・元自衛官からしたら扱いにくいでしょう?」


「まあ、一尉殿だから」「そうね」「まあ、上官という意識は・・・」


「私は新卒、大卒認定程度なので、こわいもの無しです。なので、任せてもらえるなら、ギャレーは佐藤氏と組もうかと。多分、潜水艦の中で給養の補助なんかしてた気がします。それも棺桶まで持ってかないといけない機密?」


「そんなことは無いが・・・話したこともないのによくわかるな?」


「潜水艦がもういやだ、という話と、無口で陰気というにが自虐ネタにしてもちょっとアレなんで考えてみたんだけど、人との距離が近すぎるのがイヤで、それならギャレーで芋や人参の皮剥きをしているほうが落ち着くタイプかと」


「・・・対人距離はちょっと違うが、ギャレーはなんで当たるんだ?」


「カン?」


はいはい。実は一応内部的にも調理人は検討してましたが、お二人が立候補するのであればそれもアリかと。部長、どうですか?


「そうね・・・ちょっとシフトを考えて・・・まあ出来るのは確定ではあるんだけど・・・手当を考えないと」


手当ですか?


「そうよ。料理人を任せるなら追加で手当を出さないと。まあ、一応社長に認可を取る必要があるけど通ると思うわよ?」


「手当なんていりませんよ!!」「私も追加の手当は特に求めません」


「そういうわけにもいかないの。ぶっちゃけ一人追加で雇うより、二人の手当をチーフコックが1.3倍の給与、サブコックが1.2倍の給与としたほうがずっと安いんだもん」


まあ、そうなりますね。職務が増えるのであれば、給与も増えるべき、というのがこの会社の考え方です。


「じゃあ、頂きたいです。まだ新卒でお金ないんで」「あっさりだな。私は純粋に仕事量が増えるなら・・・民間でも実質航海中ずっと拘束している乗組員に・・・残業手当って考え方は無いだろうし。まあ、会社の方針なら頂きます。基本給も予想以上に良かったので申し訳無い気持ちもありますが」


「だってやる事も考える事も増えるんだから負荷は増すわよ・・・なんか名目考えておくわ」


はい。ではその方向性でいきましょう。

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