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本当の機密事項

重力波インターロックセグメント工法、これ自体は夢のような画期的な工法だが、弊社の本当の秘密、あいつが政府機関や諜報機関を恐れて隠れている理由は別にある。


それは、ガンさんも気づいていた。


「社長、ちょっと聞きてぇんだが」


「何だい?ガンさん」


「電力を重力波にするってのがちょっとよくわかんねーんだよ」


「それは俺もよく理解してない」


「でも、まぁ、それはそういう便利なモンと思って使えればいいんだけどな」


「俺もその認識だ」


「でもな、社長、そうだとすると電力が足りねぇ。外から相当の電力を引き込まないとならねぇんだ」


「電力は買えば買えるだろうし・・・動力線の引き込みが難しいのか」


「それはある。色々と資格取得者も必要だし、大電力となると絶縁なんかも大変だしな。地面を掘る現場だと基本、水が出ちまうし、ケーブルは太くて重くてかさばるモノになっちまう」


「工数や費用が合わないのか?」


「まともにやりゃ、そうだ。。だけどなぁ、資料や参考映像、画像を見ると、それがいらねぇみたいで、どうにもわからねぇんだ」


気付いたか。


           ・・・


あいつが偶然開発できた、重力波エンジンの秘密は、漢のロマン、雷起動、だけじゃない。


あれは、実質的には物質反応炉なのだ。いわゆる e = mc (2)だな。


あいつにも理屈は完全にはわかっていないようだ。ざっくりで受けている説明はこうなる。


①. 重力波エンジンは、物質反応炉ではあるっぽい。

②. かといって、例の式全てのエネルギーが得られるわけではない。

③. エネルギーの半分は、反応炉 = エンジンを維持する為に使われる

④. さらにその半分はどこかに消える。本来なら③で膨大な熱が発生するはずだが、大した熱は発生しないのと関係あるのかもしれない

⑤ さらにその半分は重力波を発生するための電場を発生させることができる。一応、0~80%くらいまで調整できるようになっている。ここが重力波エンジン部分となる

⑥ 残りのエネルギーのうち半分くらいは電力として取りだせないわけではない。取りだせないエネルギーはどこかに消える。


この説明はなかなかに頭が痛く、あいつとの問答も、今でも明確に思いだせる。


「おまえなぁ・・・どこかに消えるって何だよ」


「わかんないんだよ!仮説は色々立ててるんだけど、まずは現象から把握しているんだ!」


「基本的に重力波として1/8×0.8、電力は今のところ1/64だっけ?、全体として、1/8くらいで、7/8はシステム維持も含めて消えるのか」


「あのさぁ・・・核分裂で、0.1%ちょい、核融合でも1%なんて全然届いてないんだよ!」


「何がだ」


「消える質量」


「・・・・・・ということは10%以上の効率というのは異常すぎるということにならないか」「なるんだよ!だから逃げ隠れしてんだろ!!」


「理解・・・は正直していないが納得はした。これの欠点ってあるのか?」


「めちゃくちゃある。まずは大型化が難しい。今の大きさが偶然の産物で、大きくも小さくもできない。次に連続高負荷に弱い。後で説明するけど仮に爆縮と呼んでいる現象が発生し、事実上この世から消えてなくなる。第三に止められない。ミリグラムどころかマイクログラム単位でもいいんだけど、常時物質を供給してやらないといけない。他にもあるけど大きなのはそんなとこかな」


「供給を止める、のはできるよな、止めるとどうなる」


「爆縮する。あー、聞かなくても説明するからね。爆縮というのは、これも仮説なんだけど、反応炉と反応炉重力保護重力波を巻き込んで重力崩壊を起こすこと。まさか1原子の大きさにまで・・・じゃないっぽいけど、1mmとかそういう見える小ささじゃないところまで小さくなる。そうなるとどうなるかわかる?」


「・・・数トンから十数トンのものが1mm未満の金属?球になるということだよな・・・すべてを突き通して地球の中心に落ちていく?」


「せーかい。反応炉の外側、どこまでってのはまだわかってなくて、触れかたや材質でも違うってのはわかってるし、稼動する反応炉は貴重だから実験できてない。偶然なっちゃったやつの観測結果だけね」


「すると、証拠隠滅に使える?」


「あのさー、物質供給用に重力波でパーティクルにする装置があるんだから、そっちで充分でしょ」


あ、そうか。「使用済み核燃料の受け入れは可能かな・・・」


「うーん、みんな被爆してもよければ、ま、よくないよね。放射線も論理的には重力波で抑えこめるはずだけど、実験できないからね。あと、機器に放射線が当たるのは故障の元だし、無理だろうね」


言われてみればごもっとも。「あまり想像したくないが、全ての物質を呑み込むとか、ないのか?」


「それは思うよね?まぁ、たぶん、無い。その前に過負荷で爆縮する。無負荷のほうは、今のところマイクログラム級のパーティクル、微粒子だね、を毎秒吸い込ませてやれば年単位で持つ」


1μg x 365 x 24 x 60 x 60・・・「持たせるだけなら、年間32gくらい、安全率考えて100g/年ほどの物質消費ということか。百万台レベルで稼動させない限りは問題に・・・ならなさそうだな」


「そんなに作れないけどね。年産30台くらいが精一杯じゃないかな。運良く雷を拾ったとしても」


「ふと思ったんだが、反応炉そのものが過熱しないんだよな。過負荷ってどこでわかるんだ?」


「⑥の電力をモニタリングしているとわかる。なんかわからんが周波数成分が変わる」


「交流が出てくるのか?都合よすぎるな」


「いや、直流。直流でも高周波は乗るよ」


そらそうだ。「そういえば電力が使いづらい?といっていたのは直流だからか?」


「そう、電圧が低いんだ。その変わり電流は引っぱれる。今は8V2000Aのユニットが研究されてる」


「そりゃ、送電の排熱がすごそうだ。高電圧化できないか?」


「研究中。5000V3Aのほうが使い勝手が良いのはオレにもわかるよ」


思い付きを言ってみるか「モーター・・・電動発電機を使うというアイデアはどうかな」


「まぁ、そう思うよね。でもさっき高調波成分でモニタリングしてるっていったでしょ。ノイズがね。あと排熱もすごいし」


考えてないわけないよな。俺が思いつく程度のものは。


「まぁ、目処が見えてるわけじゃないけど、そのヘンは研究でなんとかなると思ってるんだ。最大の問題店は、図面とかを見せると、無いはずの電力が生まれちゃってるのがわかっちゃうことかもしれないなー・・・たぶんさ、工事部の職人さんとかでも経験や資格がある人間ならわかっちゃうよ」


           ・・・


と、いうわけであいつの懸念のとおり、ガンさんは気付いてしまったようだ。


「ガンさん、そこなんだがな」


「社長、わかってるって。あのにーちゃん、CTOさんも秘密主義でいろいろはぐらかすし、何かヤバいことがあるとは思ってるって」


「ヤバい・・・?特に法に触れるような技術はないし、そのつもりもないよ」


「そーじゃねぇって。何か公表しづらい技術とかなんだろ?そういうのはまかせろよ。これで工事するってことになったら、ダミーのケーブルやらなんやらもバンバン大量に引いとくし、発発(ハッパツ)もでかいの借りとくぜ。何だったらウチで一台特大のやつを買っておいてもいいんじゃねぇか?金がどうにかなんならな」


発発(はっぱつ)、発動機発電機の略か。要は大型のディーゼル発電機をダミーで持っておけ、ということか。なるほどな。現場の感覚ってやつか。


「ガンさん、金はどうにかするよ。正直、どう答えようかと思ってたんだが、頼りにさせてもらうよ。貸すほうも仕事になるよう何台か持つか」


「おう、そのほうがいろいろカワしやすいだろうな。ただ、そうなると置く場所がなぁ・・・」


「大丈夫。必要なら建機レンタル会社ごと買うよ」


「あいかわらず買い物が剛毅だな!社長。現場はまかせてくれや。そっち、金のほうは社長にまかせるぜ!」


思わぬ形で問題が解決・・・というか棚上げのほうが近いか?まぁ、棚上げだとしても直近の問題としては片付いたことにしてもよさそうだ。

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