七話 試験と異世界
見届け人としてきている二人の騎士は驚愕した表情を浮かべてデオゼクスとアルフレッドの戦いを見ていた。
今まで見てきたどの戦闘よりも二人の試験の方が壮絶だったからだ。
目にも止まらない速さ。正確な斬撃。
尚且つ、剣技を極めているものならわかる圧倒的なほどの力量。
血とか、七光りだとか馬鹿みたいな嫉妬している連中に見せてやりたい。
血だけでここまでのものになるか?親の七光りってだけでこんなことができるのかと
「なかなかやるなデオゼクス!!まさか、俺が少しだけ魔力を使うとは思わなかったぞ!!」
「兄上こそ流石です!!
剣技だけでここまでのことができるとは!!」
二人は魔力を使って身体能力を強化し、更なるスピード勝負をしていた。
斬撃は結界に当たるが、その結界の内にも関わらず、結界の外にまで影響を及ぼしている。
しかし、デオゼクスはアルフレッドほど余裕はなかった。
神殺しの力を駆使して『アルフレッドの攻撃そのもの』を防いでおり、それで互角なのだ。
アルフレッドはデオゼクスの前世である『ゼロ』よりも遥かに強いということになる。
当然だろう。
アルフレッドは神聖ドラグレディシオン王国最強であり、単独でドラゴンや神、天使や魔王などと言った存在に勝てるレベルなのだ。
現段階のデオゼクスではまるで話にならないのは自明の理だろう。
「(このままじゃ負ける………なら、少しだけ神殺しの力の本懐を使わせてもらおう!!)」
『神殺しの神罰』
神殺しの神罰。
これはかつて前世にてアーヴァデウスの側近である『三極神』との戦いのために神殺しの力の一つである『神への超域倍化』を極限以上まで引き出し、尚且つ己の潜在能力を引き出すという荒技だ。
代償は一週間の間、神殺しの一部使用ができなくなるというかなりリターンだが、今の強化された神殺しなら、リスクなしで使用できる。
そして、この状態だからこそできる更なる奥の手。
「超全越神化」
そういうと体が神々しく光出す。
神々しい純白の姿だが、髪の色は赤黒く、光り輝いていた。
「しっかり躱してください」
「!!!?」
アルフレッドは木刀を捨て、腰の剣を抜く。
だが、一瞬だけ遅かった。
「無天」
漆黒と純白が混じりあった斬撃がアルフレッドに襲いかかった。
ドカンっと衝撃が結界にまで響き、結界そのものは破壊されてしまう。
爆風と塵などが巻き起こる。
しかしが悪くなる中、騎士たちはデオゼクスのあの力に驚愕した。
彼の今の力は間違いなくアルフレッドに匹敵するレベルの強さだったと………
死んでしまったのではないかと心配する騎士たちだったが、すぐに馬鹿馬鹿しいと思ってしまった。
相手は王国最強の存在だったということを忘れていたからだ。
「いい一撃だったぞ。デオゼクス」
無傷な上に地面には斬撃が二箇所に分断されたような痕跡があった。
その意味とは
「嘘でしょ……?(今の一撃、俺の中でもかなりのものだったんだけど…)」
アルフレッドは抜いた剣で無天を斬ったのだ。
デオゼクスは改めて、目の前にいる男が化け物だと理解する。
なんせ、全盛期よりも遥かに弱体化しているとはいえ、神殺しの攻撃を斬るなんてできるものは前世でもいなかったからだ。
「うん、合格だ。
俺に一太刀浴びせることができた上にこの家の最高峰の結界すら破壊する斬撃を放てるんだ。
文句はないだろう?」
「「は、はい………」」
二人はそう呟き、そのままとぽとぽとどこかに歩いていった。
その姿はまるで迷子の子供のようだった。
「えっと、俺は何に合格したんですか?兄上」
「決まっているだろう?お前は今度新設される組織のメンバー候補になったんだ」
「は、はい!!?」
これは誰でも驚くだろう。
この六年間の間にさらに大きなことが起きた。
それは異世界への移動だ。
俺の時代でもかなり難航していたと言われているものであり、アーヴァデウスたちは俺たち以外の世界すらもその壊したりしていたらしい。
それで王たちは極秘にだが、世界移動……つまりは次元移動をするために魔導士たちや研究者たちが奔走していた聞いている。
その前に俺たちがアーヴァデウスを倒すことができたため、しばらくの間だけ凍結されていた。
だが、なぜ今更?
それがこの新設される組織に理由がある。
近年、神々の使徒である天使、堕天使、魔王の眷属である魔人や魔物たちが活発化し、そこには次元の歪みが生じているということがわかり、長年研究されていた異世界への移動をし、その調査と魔物たちを倒すことが決められたのだ。
しかし、異世界に行くにしてもかなりの魔力などの消費を考えられ、特別な部隊として今現在もメンバーを決めあぐねていると噂程度で聞いていたが……
「ですが、それは王国騎士団が担当することでは?なぜアイリス様たちまで……」
「その理由だが、コスモス様のことは知っているな?」
「はい。この国の王妃様ですよね?」
「そうだ。コスモス様は予知能力がある。
その予知で近い未来、異世界からの攻撃がやってくるとあったのだ。」
「異世界からの攻撃!!?」
これには驚いてしまう。
予知能力者はかなり希少であり、俺の時代でも誰一人として会うことができなかったものだ。
「そして、メンバーそれぞれも一番可能性のあるものたちの中にお前がいた。
それで俺が検査のためにきたわけだ。
まあ心配するな。部隊の編成はしばらくかかる。
今日はいいものが見れた。」
そう言って兄上はどこかにいってしまった。
「異世界……まさかな………」
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「グべっ!!?」
変な黒い場所に魔物たちの死体と魔人が血まみれで倒れていた。
「たくっ、厄介なことをしてくれたもんだなぁ?
折角、『アレ』を隠した上で『神殺し』のことも内密にしていたのによぉ?」
不良のような男がそう言って魔人たちを殺し尽くすと、後ろにいる少女に声をかける。
「おい、本当にいいのか?これで、あいつが世界を渡るようなことになっちまったら、マジで危険なんじゃねえのか?」
「仕方ないわよ。もうすでに現実化してしまっている。
我々は『リーダー』の御命令通りに動くだけよ。」
「チッ、それで?あいつの方はうまく行くのか?」
「ええ、王国の開国祭
その時が絶望の瞬間よ」
そう言って謎の集団もまた闇に消えていった。