ナンバー=ツー
最近は色々と組織の中で問題が起きている。
不安も拭えず食事も喉を通らない。
~エミールのメンバー、ファイド~
食堂に微妙な空気が流れる中、ロングパーマの長髪をセンター分けにした小柄な男が姿を現した。
「お疲れ様ですっ!! センコー様っ!! 」。
カワマタが狼狽しながら立ち上がってセンコーにそう挨拶すると、他のメンバー達(オムツ一丁の男以外)も椅子から立ち上がった。
「お疲れ、みんな座って楽にしててええで」。
センコーは皆にそう言いながら奥の席に着いた。
「お疲れ様で~す! センコー様ぁ~! 」。
隣に座るベルは今までの無愛想な態度とは打って変わり、微笑みながら甘え声でセンコーに話しかけてきた。
「お疲れ様」。
センコーは素っ気なくベルにそう挨拶を返すと羽織っている黒いローブの懐から小さめの本を取り出し、それを開いて書き記されている文章に目を通し始めた。
「センコー様ぁ~、最近多忙で疲れていらっしゃいませんこと? 最新の魔力薬を開発しましたの~! よろしかったらリラクゼーション感覚で...」。
「いや、俺は大丈夫や」。
「...」。
センコーに即行で拒まれたベルは腑に落ちない表情で何も言わずにうつむいた。
「待たせて悪いわ、エスティーはもうすぐコバと来るから」。
センコーは皆にそう言いながら卓上にあるナフキンを手に取り、それを膝の上にかけた。
「久しぶりですね、エスティー様との夕食会は」。
シゲがそう言うとセンコーは本に視線を向けたまま小さく頷いた。
「ここ最近は色々あったからな...。そのゴタゴタがようやく落ち着いたし、俺達に報告したい事もあるから久々に一緒に食事をしよう...だとさ」。
「エスティー様との会食なんて久しぶりですわぁ~! 本当に楽しみぃ~! 」。
ベルはそうはしゃぎながら組んだ両手を自身の頬に近づけ目を爛々とさせていた。
「ゴタゴタが落ち着いたという事は...あの山脈に入ってきたギャング集団を始末できたんですか? あの...何だっけ? 」。
シゲはそう言いながらカワマタに視線を向けて助け舟を求めた。
「ノンスタンスだっけ? ポンズ王国の方からやって来たっていう...」。
カワマタがそう言うと、センコーは本に視線を向けたまま小首を傾げた。
「その件に関しての情報はまだ聞いてへん。多分、その事もこれから話すんとちゃうか? 」。
センコーがそう答えると、シゲは両腕を組みながら見上げた。
「そのノンスタンスもそうだが、この間はスパイみたいな奴にもテリトリーを入られたみたいだしな~。諸国が回し者か何かに頼んでやってるのか? 」。
「さぁな...」。
センコーは変わらず本を読みながらシゲに対して素っ気なくそう答えた。