Sクラスのメンバー
あの御方大丈夫かしら...。
仲間達から攻撃受けて負傷したって聞いたけど...。
本当に心配で胸が張り裂けそう...。
~エミールのメンバー、ウェーブ~
黒い大理石に囲まれた広大な食堂。
食卓には既に四人の男女が席に着いていた。
「...」。
黒いワンピースを着ている一人の若い女性が、退屈そうに卓上で頬杖をつきながら溜息をついていた。
黒髪ショートボブのその女性は一重瞼でつり目、白い肌に深紅の口紅を施していた。
外見はキツそうな印象だが、両耳につけた赤い石のワンポイントピアスの輝きが彼女の美しさを更に演出していた。
「おいっ! シゲっ! 食事前なんだからいい加減にVR眼鏡取れよっ! いつまで青黒歌合戦見てんだよっ! 」。
女性の向かい側に座っている金髪ボブカットで銀の丸眼鏡をかけている細身の男が、隣に座っていたシゲという男にそう注意を促していた。
ちなみに青黒歌合戦は年末に生放送される歌番組である。
「ちげーよ、カワマタ。俺は歌合戦じゃなくてフウジンを見てたんだよ~。この大会ハグソ=クレイジーがさぁ~」。
糸目が特徴的で黒い長髪をオールバックにした無精髭のシゲは、カワマタ呼ぶその男にそう言いながらVR眼鏡を外した。
余談であるが、フウジンとは総合格闘技団体である。
そのフウジンが開催していた大会映像のアーカイブをシゲはVR眼鏡を用いて視聴していたようだ。
「ほぎゃあ~! ふぎゃ~! 」。
更にシゲの隣に座っている男は幼児の様にオムツ一丁でおしゃぶりをくわえており、ぐずった様子で泣き始めた。
幼児ならまだしも黒髪の角刈りで肥満体型の大人なので、周囲からすると幼児退行した中年男性にしか見えない。
(何でSクラスの連中達はこんな変態ばっかなのかしら? ホント、最悪...)。
ベルは向かい側に座っている男達を一瞥し、再び深い溜息をついた。
「ベルさん」。
シゲがベルという女性に声をかけてきた。
「...ん? 」。
ベルが向かい側に座っているシゲに視線を移した。
「御綺麗ですね」。
「...ありがと」。
無表情で淡々と容姿を褒めたシゲに対し、ベルは素っ気なくそう返した...のだが。
「本当に美しいピアスですね、思わず見惚れてしまいました」。
「...は? 」。
続けてそう話したシゲに懐疑的な様子で片眉を吊り上げた。
「お、おいっ! その言い方だとベルさんが綺麗じゃないみたいに聞こえるだろっ! 」。
カワマタが狼狽した様子でシゲにそう言った。
「あ~、そうか...。じゃあ、訂正するわ。ベルさんも御美しいですね」。
(この二人、ムカつく...)。
ベルはすっかり機嫌を損ねてしまい、男達からそっぽを向いてしまった。