イエモンの行方
ふむ...。
煙草が無いと口寂しいな...。
~討伐部隊“勇者”ゴリラ隊員~
ハリガネと隊員達は席に着き、テーブルを囲んで話を始めた。
「え~、昨日も簡単に話しましたが、賊団“ゴクアクボンド”はボス二人体制の組織です。組織を全体的に統制しているのはケンキョウという男が、外交やそのケンキョウの補佐を担っているのがチョンケイというもう一人のリーダーです。過去にも複数の“アルマンダイト”を討伐した経験がある組織で拠点は地下に存在しています。団員の減少が著しい傾向にあるようですが、地下の環境は温泉街の様に充実しており組織の経済状況はそう悪くはないといった感じでした」。
ハリガネは卓上に地図を広げながら当時の状況を説明していた。
「ふむ...。人数もさることながら、やはり総力という点ではどの賊団にも太刀打ちは出来んな。ノンスタンスが賊団のテリトリーで暴れて組織にダメージを負わせているのは大きいわけだが、ここの捕虜と同様にノンスタンスの戦闘組がここまで避難して我々と遭遇する可能性も大いにある」。
ゴリラ隊員は険しい表情のまま地図を睨みつつ言葉を返した。
「ノンスタンスも度重なる交戦で疲弊している事は間違いありませんっ! 肉弾戦でも十分に対抗できるはずですっ! ミツカ勇士もいらっしゃいますしっ! 」。
ヤマナカはフンッと鼻を鳴らしながら自信満々は様子で両腕を組んだ。
「本当はロケット式の弾道ミサイルとかあればいいんだけどね~! 敵陣を始末しやすいし、後は僕が槍投げみたいに投げるだけだからね~! 」。
ミツカは満面の笑みを浮かべながらボディビルのポージングをヤマナカと取り始めた。
「そ、そんな事したらまたここら辺が滅茶苦茶になるし、賊団に存在を気付かれちゃいますよ...」。
ハリガネは困惑した表情を浮かべて冷や汗を頬に滴らせた。
「ヤマナカ、油断するな。疲弊しているノンスタンスでも魔法を操る奴なんだ。それに...剣術にも手練れた奴がいるらしいからな」。
ゴリラ隊員は厳かな口調でヤマナカにそう言いながら視線をハリガネに移した。
ハリガネは神妙な面持ちでしばらく地図を見下ろしていたが、やがて顔を上げてゴリラ隊員に視線を向けてゆっくりと口を開いた。
「そういえば、ちょっと気になった事があるんですけど」。
「ん? 」。
ゴリラ隊員はハリガネの問いかけに片眉を吊り上げた。
「イエモン先輩はどうなったんです? 僕等と共に軍に逮捕された後、しばらくして釈放されたと聞いてはいましたが...。今も王国にいるんですかね? 」。
ハリガネがそう問うと、ゴリラ隊員は険しい表情のままゆっくりと首を横に振った。
「その後の事は俺にも分からん。まぁ、アイツの事だ。王国を出て一人勝手に放浪しているんじゃないのか? 」。
「う~ん、イエモン先輩が味方になってくれるとすごく頼もしいんですけどね~」。
「どうだろうな、もう遥か遠くの方へ行っちまってるんじゃないか? 」。
「まじっすか...」。
そう言って苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべるハリガネを見て、ゴリラ隊員は思わず苦笑した。