偵察の影
わ、わわわわ私の役割はっ!
Sクラス以外の人事管理や統制をする事ですっ!
~エミールのメンバー、コバ~
「ポンズ王国の偵察...か。諸国の依頼で派遣された情報屋ではないかと話してはいたが...」。
エスティーはそう言いながら両腕を組んで神妙な表情を浮かべた。
「いや、ノンスタンスから聞いた話を素直に信じていいんですか? それに確証もないのに...」。
ファイドは困惑した表情でエスティーにそう問いかけるとデイは小さく頷いた。
「確かに、この間までエミールに攻撃を仕掛けた集団の話など信用できるはずがないとは思います。ですが、私がここでそんな噓をついて皆さんを騙しても何の得にもなりません」。
「...それで、その情報先は? 」。
エスティーがそう問いかけると、デイは話を続けた。
「我々ノンスタンスはエミール含めた山脈組織から逃れるために、パルメザンチーズ山脈を下りてソルト国へ潜伏しておりました。その際、ソルト国への侵入を協力してくれた関係者がおりまして、その関係者から情報を聞きました。ソルト国内で関係者はその偵察者一人と接触したようで自身の事をポンズ王国から依頼された遊び人と名乗っていたようで、我々の居場所や動向を探っていたようです。恐らく、エミールへの移動中にその遊び人に後を付けられていたかもしれません。その関係者によれば、茶色いスーツを着た金髪で長身の中年男だったとの事です」。
「...」。
ウェーブはうつむいたままデイ達の話を黙って聞いていた。
「茶色いスーツを着た金髪で長身の中年男...その偵察を追っていたメンバーの証言と一致している。ウェーブも確かその追跡者の顔は見ていたな? 」。
「...はい、その男で間違いありません」。
ウェーブはエスティーの問いかけに頷きながらそう答えた。
「デイ君の証言には信憑性がありそうだな。一旦、その話は信じるとしよう」。
「ありがとうございます」。
デイは頭を下げてエスティーに感謝を示した。
「しかし、我々エミールに危害を加えたノンスタンスを迎え入れるのにはやはり抵抗があります。他のメンバー達も到底納得できる事ではありませんよ。内部でクーデターを起こされる恐れもありますし、そうなってしまったらエミールは...」。
「心配ない、私が保障する。それに今の我々にはデイ達のような有能な人材が必要なんだ。必ず俺がメンバー全員を説得する」。
エスティーは表情を曇らせて意見したファイドの言葉を遮りつつそう答えた。
「は、はぁ...」。
ファイドは他のメンバーと同様、納得していない様子でうつむきながらそう返した。
「その二人に相当期待をしているんやな」。
センコーはエスティーに素っ気なくそう言った。
「何だ? 嫉妬か? 」。
エスティーはセンコーに悪戯っぽく笑いかけた。
「アホ抜かせ」。
センコーはエスティーに呆れた様子で鼻をフンッと鳴らした。
「まぁ、とにかくそういう事だ。経緯が経緯だから気が乗らないかもしれないが、ノンスタンスである彼等が一日も早くこのエミールに馴染めるよう協力してくれ。それと、例のポンズ王国から派遣された偵察者はテリトリーで発見でき次第その場で始末しろ」。
「...」。
エスティーの言葉にテーブル席から重たい空気が漂った。
「まぁ、私は協力してもよろしくてよ? 二人共イケメンだし」。
ベルはそう言いながらデイとライダーにウィンクをした。
「...」。
ウェーブは悲痛な面持ちでずっとうつむいていた。




