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5-2 夜会の裏で

執務室でハンナが静かに言う。


「D地区、R4地点に敵3」

「了解。4人送る」


ココに守られながら、ルイーザが索敵した結果だ。それをハンナが受信している。

ヴィルヘルムのテレパスはこちらから指令を飛ばすことしかできないため、脳内で双方向に伝達できるハンナの存在は鍵だ。横でクリストフがハンナの手を握り、しっかりと≪防音結界≫(サウンドバリアー)を張っている。

 

報告を聞いたヴィルヘルムは四人の騎士にテレパスで指令を送り、該当地点に飛ばした。

しばらくしてハンナが再度、メッセージを受信する。捕縛に行った騎士たちの一人から報告があったのだ。

 

「敵3人捕縛。味方のうち、スヴェンが負傷」

「了解」


ヴィルヘルムは隣にあった地図の上にチェスの駒を置いている。それを現在の状況に合うように動かした。

すぐに≪瞬間移動≫(テレポート)でスヴェンが送られてくる。

肩を大きく負傷した彼に駆け寄り、アンネリーゼが魔法を唱えた。彼女は癒しの魔法が使える。


「≪治癒促進≫《メディケーション》」

「ありがとうございます……!」

「傷が塞がるまでに、20分程度はかかるわ」

「了解した」

 

ヴィルヘルムが味方に指示を送る。


「捕縛した敵は、R6地点まで運搬。全員そこで待機。ルイーザとココは移動、次はE地区を索敵」

「伝えます」

「順調だ。予定時刻までに、会場外にいる敵は全て捕縛できるペースだ」


ヴィルヘルムは地図を見ながら言った。

国王が軟禁されている西の古塔と、夜会会場を除く、全ての地区。そこで騎士を捕縛していくための作戦を展開していた。


「E地区、A2地点に敵2。うち強敵1」

「俺を含めて3人送る」


ヴィルヘルムの姿がすっと消える。しばらくすると、彼が腕を負傷して帰ってきた。


「ヴィル、大丈夫?」

「大丈夫だ。強敵だったが、何とかなった」

「≪治癒促進≫《メディケーション》…………傷が塞がるまでは、10分程度ね」

「了解。作戦を進める」


一同はそれを我慢強く、繰り返し行った。

そうして三時間ほど暗躍して、会場外にいる騎士すべてを捕縛することに成功した。

ヴィルヘルムの≪瞬間移動≫(テレポート)による奇襲作戦が、うまく嵌まって成功したのである。残るテオドール派の騎士たちは、西の古塔を除けば、夜会会場内にいるのみだ。


「よし、夜会会場に行こう。各自、持ち場へ着くぞ」

「はい」

「ハンナとクリストフは、守りの騎士から離れないように。俺はアンネを守る」

「分かりました」


静かに夜会会場へ急行する。クーデターはもう、水面下で開始していた。



♦︎♢♦︎



「ルーチェ、あの三人のうち、一番背が高い金髪の男は手練れだ。俺が行く」

「うん、私は黒髪をやる」

「マークとカイは残りを」

「はい!」


ダークの≪気配遮断≫パーフェクト・コバートに紛れて移動し、それぞれが瞬時に気絶させる。

剣の柄で、各自正確に急所を狙った。騒ぎを起こさず、静かにことを進めるのが第一優先だ。


「ここから先の階段は一本道になる。俺が先頭。マークが殿(しんがり)を務めてくれ」

「はい」


この一本道の階段を登った先に、国王が閉じ込められているはずだ。やはり、ここまで守りの騎士の数が多く、予定時刻に間に合うかどうかは微妙なところだった。


「必ず国王を助けよう。シリル様の力になってくれるはずだ」

「はい!!」


一同は密やかに言葉を交わした。

そうして薄暗い階段を、真っ直ぐに登り始めた。

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