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花束の意味

作者: 青柳文音
掲載日:2022/09/11

きっと後書きは書けない。

 八月三十一日、深夜。僕は中学校へと歩いている。


 五ヶ月前、僕は一つの音楽を聞いた。大好きな音楽だ。

 そこには音楽の中で生き、音楽の為に自死を選ぶ青年の物語があった。


 僕には音楽なんてわからなかった。絵画も文学もわからない。――――でも一つ、人生は芸術だと思った。



「人はなぜ生きるのか」という問いを見かける。

「家族のため」

「趣味のため」

「恋人のため」

「社会のため」

「正義のため」

 様々応えがある。とても素晴らしく思った。同時に、とても軽率にも思えた。


「人生は芸術である」それだけが僕の答えなのだ。


 本当を言えばこれは模倣だ。安易な模倣だ。


 しかし大抵の模倣と違うのは、その思想に自らの全てが侵されていることである。そして僕の芸術は、自死でなければならない。

 生きることが辛い訳ではない。むしろ楽しんでいる方だ。

 尤も家や学校はあまり好きではないが、それらに僕を殺す力はない。僕が僕を殺すのだ。

 この明確な自死への使命に、明確な理由や論理など無い。


 しかし僕は今夜死ぬ。


 二十三時五十二分、僕は中学校の前に立った。


 確か今日も部活動があったが、夏休みの間は一日も行かなかったために、終業式の帰りに渡された日程表の上での話に過ぎない。


 二十三時五十五分、温い夜風を吸う。


 作品名の書き留めた安っぽい紙を校門に貼り付け、四階の音楽室へと向かう。警報音はもう気にするところではない。


 なぜ音楽室なのか。なんて誰にも解らないだろう。理由など無いのだから。

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