【漫才】卒業祝賀パーティー
※ 王子=ツッコミ 令嬢=ボケ となっております。
二人「「はーい、こんにちはーっ!」」
王子「みんなの憧れ、王宮のアイドル第二王子でーす!」
令嬢「見た目は可憐、実は狡猾で腹黒な公爵令嬢でーす!」
二人「「二人揃って、『ザマーズ』でーす! よろしくお願いしまーす!」」
王子「いや、君、初っぱなから、ずいぶんなキャラを打ち出してきましたね?」
令嬢「キャラがはっきりしている方が、お客様にはわかりやすいですからね!」
王子「まあ、いいでしょう。ところで、いよいよ春が来ましたね!」
令嬢「はい。そろそろ鍋は片づけて、かき氷器を出す季節ですね!」
王子「いや、それはちょっと気が早いような。春と言えば、卒業の季節でしょう」
令嬢「ええ。ですから、鍋は卒業して、かき氷器を出そうかと……」
王子「鍋とかき氷器は忘れましょう。卒業と言えば、卒業祝賀パーティーですよね」
令嬢「卒業生とその関係者が学園の大ホールに集まり、みんなで鍋をつつく――」
王子「卒業祝賀パーティーに、鍋は出ませんよ!」
令嬢「鍋は卒業したんで、みんなで氷を削りまくる――」
王子「しませんよ! あのね、祝賀パーティーは、もっと厳かで感動的なものなんです。馬鹿にしちゃあいけません」
令嬢「あら、じゃあ、どういう料理が出るんですか?」
王子「パーティーではありますけれど、料理よりも大切なことがあるんです! 卒業生から、お世話になった方々へ、感謝の気持ちを伝える場なんですからね」
令嬢「そう言えば、殿下は今年のパーティーで、卒業生を代表して感謝の言葉を述べられるんですよね?」
王子「ええ。名誉学園長からのご指名なので、引き受けることにしました。まあ、名誉学園長は父上なんですけれど――、エへへへ!」
令嬢「それは大変ですわね……。失敗したら、殿下を指名した国王陛下が、恥をかくことになりますもの。そうだわ! せっかくお客様もたくさんおられますから、ここで、感謝の言葉の練習をしてみたらいかがでしょうか?」
王子「そうですね。やってみましょうか?」
令嬢「では、わたくしが司会役を――。次は、卒業生代表による感謝の言葉です。殿下、お願いいたします!」
王子「みなさん! 今日は、わたくしたち卒業生のためにこのような会を……」
令嬢「(突然泣き崩れて、王子に縋り付く)殿下―っ! 真実の愛のお話は、いつ皆様にしてくださるのですかーっ?!」
王子「な、何ですか、唐突に?! あ、あなたはだれですか?」
令嬢「(王子の耳元で囁くように)殿下が、真実の愛を誓った男爵令嬢ですわ!」
王子「ちょ、ちょっとストップ! あの、普通に挨拶させてもらうわけにはいきませんか?」
令嬢「殿下はご存じないんですか? 昨今の卒業祝賀パーティーでは、真実の愛宣言騒動や婚約解消宣言騒動が必ず起きるんです。そういう場合も考えて、練習しておく必要があると思いますよ」
王子「ああ、そ、そうなの? じゃあ、そのまま続けてみましょうか」
令嬢「はい、お願いいたします」
王子「だ、男爵令嬢! 君は、誤解しているよ。ぼくは、君に真実の愛など誓った覚えはない!」
令嬢「ひどい! 『君のピンクブロンドの髪とサファイアブルーの瞳が、頭から離れない。僕は、とうとう真実の愛を見つけたのだ!』と言って、学園のウサギ小屋の裏で、わたしを抱きしめてくれたではないですか! あれは、偽りだったのですか?!」
王子「ちょ、ちょっと、もう一回ストップ! ね、ねえ、君、どうしてその話を知っているわけ? あのとき、あそこには、僕と彼女しかいなかったはずなんだけど……。おかしいなあ」
令嬢「やっぱり! ……さあ、殿下続けますよ! (反対側に回り込んで)聞き捨てなりませんわね! わたくしという婚約者がありながら……。殿下、どういうおつもりですの?!」
王子「だ、誰なんですか、今度は?」
令嬢「(王子の耳元で囁くように)殿下の婚約者の隣国の王女様です。卒業後、結婚することになっていますよね?」
王子「隣国の王女? なんで、彼女が卒業祝賀パーティーにいるんですか?! いるはずないでしょうが! あの子は、そこまで僕に関心持っていないですよ!」
令嬢「まあ、憎たらしい! 殿下ったら、わたくしのことをそんな風に思っていらしたんですか?! ひどい方! こうなれば、婚約は解消するしかありません! わたくしから、あなたを捨てさせていただきますわ!」
王子「いいかげんにしてくれ! な、なんなんだよ、これ?! こんなこと、卒業祝賀パーティーで起こるわけないだろうが! こんな馬鹿なことやる奴なんかいるかよ! 感謝の言葉は、どこに行っちゃたんだよ! これじゃあ、やってらんないよ!」
令嬢「まあ、じゃあ、婚約解消はいつするんですか?!」
王子「しないよ! するのは、コンビ解消だよ!」
令嬢「ええーっ! そんなあ、鍋とかき氷器あげますから、それだけはご勘弁を!」
王子「まだ、覚えてたのかよ! もういいよ」
二人「「どうも、ありがとうございましたーっ!」」