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引き際

 



「《一撃の拳》ッ!!」


 が、その拳は空振りした。


「な、んで避けられるんだYo!?」


 そんなの決まっている。


「ここは俺の空間だからだ。そして、チェックメイト」


 ──ポン。


 俺は、ジョイソンに触れた。



 正直、土石流の遠距離攻撃をされていた方がしんどかったので、筋肉が自信満々に懐へ飛び込んできてくれて助かった。


 俺の半径5メートルの射程圏内に入ることで、ジョイソンに存在する引力関係を操作することが可能となった。

 だが、再び距離を取れば引力関係を直接操作できる能力は失われてしまう。

 そこで、その能力を維持する為にも、直接触れる必要があったのだ。


 そこで俺は、半径5メートル以内に入ってきたジョイソンの、重力分の引力を遮断した。地球の自転の遠心力と、残る引力が釣り合った状態、即ち無重力状態にしたのだ。

 それにより制御を失ったジョイソンはバランスを崩し、体勢が崩れた。俺はその隙に背中に触れた。


 これが事の顛末だ。


 その後、俺はジョイソンの無重力状態を解除しなかったため、踏み込んだ方向へ一直線に飛んで行った。


「お前!俺に何をしたんだYo!」


 遠くで叫んでいる。


「ん〜、ナイスバルク」


 さて、アンを探すか。何となくだけど、この戦いを分析されていた気がする。

 どこに隠れているのでしょうか。


 あの飛んで行った筋肉はいつでも殺せるけど、今殺してアンに警戒されたら困っちゃうもんね。


 ──ズズズズズ!!!


 ん?おわ!筋肉が怒ってる!


 ジョイソンを飛ばした方をみたら、サーフィンボードにしがみつきながら、超巨大な津波のような土石流が、迫ってきやがった。


 まるでウォールマリアの壁のようだな。


「タキ オサム!!殺してやるYo!!!」


 すると、筋肉は何処から取り出したのか、機関銃を構えた。


 ん?え?機関銃?

 それは聞いてない!!


 といっても、まあ大丈夫なんだけどね。


 目の前の空間を引力操作する。


 打ち出された弾丸は、俺の周囲に留まった。

 なんか、いいや、めんどくさい。殺すか。


「な!なんなんだYo!!」


 ヤケクソなのか、筋肉は全身を伸ばして更に土砂の津波を巨大化させる。


「くそ!うおおおおお!!!!」


 しかし、もう遅い。俺は最初に筋肉が作り出した、上昇する土砂に触れていた。そこから地上へと繋がる土砂は、その能力の干渉は地続きの土砂が一連となっているため、その巨大な津波も俺の能力の範囲内である。


「鎮まれ」


 そう呟くと、津波は凍ったように、動きをピタリと止まった。


「俺は善人じゃないけどさ、筋肉。お前とアンは何万人も殺したんだろ?だからこれは……復讐?いや死んだの他人だしどうでもいいか。征伐?あーでもなんか違うな。お説教でもないしな。まあ、なんだ?あー別にいいか。俺の都合だな。さよなら」


「は、え、は??」


「《天核引(アマノカクイン)》」


 ──ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!!!!!!!!


 ジョイソンを核とした、強大な引力が、土砂の波が、固まった土石流が、その全てが宙に浮き、それがとんでもない勢いでジョイソンにぶつかっていった。


 どちらも触れているため、不可避の暴力。


 筋肉は呆気に取られたような顔をして、なにか叫んでいたが、すぐに見えなくなっていった。


 その自慢の肉体は削れ、血切れ、果てにはすり潰れ、生きた証拠を残さないかの如く粉砕した。

 瞬く間に出来上がったのはまるで小さな星。直径にして2.3キロ程の土砂の固まった球体ができた。



 ──

 《土砂の秘宝》を手に入れました。

 ──



 あまりにも呆気なかった。勝負にならなかった。目の前に浮かび上がった秘宝を収納箱へしまう。


 もしかして爆炎が一番強かった?え俺初戦ラスボスだったんか?



 そんなこと考えていたからだろうか。


 ──ドンッ!


 遠くで音がしたと思ったら、左肩に血しぶきが舞った。

「ぐっ、痛った、痛ってえええええ!!」


 左肩を抑える。銃声が聞こえたのは下の方……よく見ると、銃を構えた女がいた。あいつがアンか!


「ちっ」


 あいつ、人の肩を撃っといて舌打ちしやがった!


 くそ、油断した。


 逃がすかァ!!


 筋肉を固めた《天核引》の産物、この超巨大な土石流の塊をアンと思わしき女がいた場所目がけて放った。


 ──ゴゴゴゴ……グドドドドーー!!


 何かにぶつかった音はしたが、地面にはぶつかってない!?


 すると、この馬鹿でかい土石流の塊を、巨大な木の根や枝が、喰い破ってきた。球体は崩壊し、無数の巨大な榦が、それをも呑み込む。


 圧巻だった。


 土石流で荒らされた辺り一面の荒野が、再び巨大な森林によって緑に塗り替えられた。



 これまずいんじゃね?

 俺の能力をほぼ見られた。筋肉が叫んだから名前も多分知られた。そして怪我負わされている。アン見失った。


 そして、勝負が着くまで傍観していたアンの性格じゃ、絶対に近づいて来ないだろう。だって近づいたから、筋肉が負けたんだから。


 攻略法考えてみよう。


 物とばす……木で防がれる。

 近づく……逃げられて、木で防がれる。

 巨大な岩をぶつける……多分木で防がれる。


 あれ?これ詰んだ?どうやれば勝てるんだ?


 くっ、そういえば爆炎も筋肉も性格が簡単だったな。


 うーん、これは、撤退だな。

 物事には引き際ってのがある。多分今がその時だろう。

 相手めっちゃ警戒してると思うし。

 だってずっと戦ってた筋肉を瞬殺されたんだぜ?そりゃ警戒してくるでしょ。


 俺の負けだな。アンの作戦勝ち。

 あーなんか疲れたよ、たった2日の海外旅行。日本帰るか。


 最後にメッセージ残してくことにした。さあ!大きな声で。


「俺帰るね〜、もう怒ってないから〜!できたら俺の能力秘密にしといてほしいな〜!暫く来ないから!またね〜〜〜」


「……」


 よし、反応はなかったけど、まあこれでいいでしょ。バラされたらバラされたで。アン警戒心高いし、偏見だけど友達いないだろうから。


 まあ、冷静に考えると、アンにとって俺の能力をバラすメリットは、俺が殺される確率が上がる事。逆に言わないメリットが、俺がほかのプレイヤーを減らすって事。


 できるなら後者のメリット選んで欲しいけどね。

 ボストンの空港使えないらしいから、ニューヨーク経由で帰るか〜。



 こうして再び、ニューヨークへ向かう事になった。



 それにしても肩が痛てぇな……ん?あれ?治ってね?








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