表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/10

Destiny is sometimes cruel.

 


 あっつあつのお茶をイッキ飲みした後、拷問部屋(客間)から飛び出して、キンキンに冷えた麦茶をイッキして、お腹を壊した。

 いや、頑張ったよ?1年分の汗を流した気分。


 そんな俺の頑張りがあってか、優奈ちゃんは許してくれたらしい。

 ただ、また思い出したら、おでん用意してくれるそうだ。


 なるほどね、冬にいじれということか。


 そんなこんなで3人仲良くスイカ食べながら、やっとの思いで普通に会話する事になった。


「なぁ、なんでニューヨークに行ったんだ?」


 さすがに、脳死でプレイヤーを殺しに行ったとは言えない。


「特殊な事情があってな」


「それって、お前がプレイヤーだからか?」


「そうそう、え?なんで知ってんの?」


 びっくりした。


「そりゃ、今話題だからな。理解困難な特殊な能力を使う人のテロ」


「ちょっとまて、俺はテロしてない」


「でもニューヨークで皆殺しにしたんだろ?巨人の足」


「巨人の足ちゃう。でもそれはそう」


「なんで?」


 急に、啓介が真面目な顔になった。

 なんで殺したんだ。そういう意味だろうか。

 ……俺がスキルを手に入れたから、ハッスルして人を殺していると思われているのだろうか。

 心外だな。


「殺されかけたから」


 不可抗力です。あんなの交渉じゃなかったし。

 啓介は俺を見て、優奈をみた。優奈ゆっくりと頷いた。

 なんだろう。


「そっか、お前の事だもんな。爆発テロはどういうこと?」


「爆炎の直斗が俺を襲ってきて、やり返した」


「あ〜そういう事か。お前がテロなんて向いてないもんな」


「だろ」


 啓介はどこか納得したような、安心したような顔をした。そりゃ親友が好んでテロしてるとか嫌だよな。


「お前がお前のままで、よかった」


「変な心配しやがって」


「だな」


 啓介は、スイカの種を庭に飛ばしながら言った。



「心底よかったって思う。オサムじゃなくて、武田直斗の方が、爆発のテロ犯だったんだな」



 思わず、手にしたスイカを落としそうになった。


 ……ちょっとまて、なんで啓介は爆炎のフルネームを知っているんだ。

 嫌な予感がする。


「なぁ、啓介はプレイヤーなのか?」


 もし、啓介がプレイヤーなら、俺は、どうしたらいいんだ?唯一の親友だぞ。

 恐る恐る、聞いてみた。

 心臓が、バクバクする。


 ところが、安堵してニコニコしていた啓介は嫌そうな顔をすると



「ちゃうわ。嫌味かよ。羨ましいよ〜俺もスキル欲しかったんだけど!お前のスキル見せろよ」



 ……よかった。本当よかった。この反応は、嘘じゃない。冷や汗が止まんねぇ。

 俺が重いため息をつくと、優奈が心配そうに、俺を見てきた。


「何か、怖いことがありました?」


「いや、大丈夫」


「そう、ですか」


 気にすんなと言った。JKに心配されちゃ、ね。

 啓介がどんなスキルか教えろと目を輝かせてくる。距離が近いわ鬱陶しいな!


「俺のスキルそんなに知りたいか?」


「おう!知りたい教えてオサム先生!」


「えぇ〜全然良いけど。ふたりとも秘密だよ」


 俺は《引力操作》について教えることにした。満更でもないし。誰かに自慢したかったし。

 もちろん、《変人》については秘密にするけど。絶対馬鹿にされるから。


「まずね、オリジナルスキルというものがあって、プレイヤーによって固有スキルがあるんだよ」


「おお!」


「それで俺は、《引力操作》というスキルを手に入れた」


「なにそれ強そうかっこよさそう!!」


 さすが啓介、初見の俺と同じ反応だ。優奈ちゃんも興味津々らしい。


「何ができるかっていうとね、触れた物の引力関係を操作できるんだ」


 そう説明しながら、スイカの種を水平方向へ飛ばした。重力分の引力を相殺、もとい擬似的な無重力状態なので、力の方向へ進む。


「お〜!不思議ですね!」


「マジックじゃん。オサム宇宙ステーションかな?」


「こんな事もできる」


 跳ね返ってきたスイカの種を、地面に叩きつけた。それも、引力を爆発的に引き上げて。

 庭の地面には、スイカの種と同じサイズの穴ができた。分かりづらいが。


「え!何が起きたんだよ!」


 啓介と優奈は、種がめり込んで行った場所をまじまじと見ている。


「……これ、どんなに大きなものでもこうやってできるんですか?」


「まぁね、色々と制約があるけど」


「やば、チートじゃねぇか」


「こんな事もできる」


 俺は地面を蹴って、宙に浮いて見せた。このままだと、空へいつまでも登っていくので、力を調節する。


「え!俺もやりたい!浮きたい!」


「私も!」


「じゃ、俺に触れて」


 宙にいる状態で手を啓介に差し伸べると、思いっきり叩かれた。その勢いで俺は回転する。


「ぶぁっははははははー!!!」


「ぷっ、ふふ、あ、すみません!」


 空中で無様に回転する俺を見て、啓介はまたも指さしながら腹を抱えて笑い、優奈は面白かったのか顔のにやけが隠しきれてない。


 こ、こいつら!!

 あ、やべ目回るスイカ吐きそう。

 背中から地面に降りて、停止した。


 この兄妹……今までにないテンションの上がり方だな。それもそうか。こんな話聞いて、不思議なことを目の前にしたら、俺でもこうなるよな。


 おかげさまで《引力操作》の弱点を見つけた気分。やっぱり空中戦は向いてないな。


 啓介がいつまでもわらっているので、地球との引力関係を、重力分の引力を断ち、無重力状態にさせた。



「啓介、ジャンプ」


「え?おわ!おおおお!すげぇな!体が変だ!」


 あいつの方が無様じゃねぇか。そう思うくらい空中で暴れている。手足が気持ち悪く動いているが、表情は最高だな。



「スイカの種のように叩きつけることもできる」


「ぅおおおおおおい!!絶対するなよ!絶対だぞ!!」


「丁寧なフリありがとう」


「いやあああああぁ」


 ちょっと仕返しできた気分。スッキリするわ〜


「ははは、安心しろー。あ、優奈ちゃんもやる?」



 後ろにいる優奈ちゃんに対して、片手を差し出した。

 啓介に対する直前の、笑えない冗談の脅しが効いたのか、優奈ちゃんの顔がひくついている。

 あー、若い子の前でやっていい事と悪いことがあるよな。ムラムラしてやった。後悔はしていない。



「……怖い事はしないでくださいね」


「うん、しないよ」


「信じていますから」


 涙目じゃねぇか。悪いことした気分。

 だけど、手を俺の掌にそっと置いてきた。

 信頼、と受け取って良いのだろうか。


 いや、好奇心が抑えられないだけか。めっちゃわくわくしてるし。小刻みにジャンプしているし。



 俺を見ながら、早く早くとした表情で、小刻みにジャンプしている優奈ちゃんめっちゃ可愛い。このまま見ていたいけど、また顔が赤くなってきそうなので、《引力操作》を使った。


「おお!すごいです!からだが軽い!」



 啓介と違って、空中でも品がある。あー、すっごい楽しそう。

 しばらく遊ばせてあげようかな。


 収納箱から大きな岩を取り出して、啓介にゆっくりと投げつけた。


「そーれ受け取れ〜!」


「ッ!?うおおおおおおおおおおおおい!!」


「あ、お兄ちゃん!危ない!」


 啓介の背中に直撃した。が、エネルギーが移動しただけ。つまり振り子の法則。よって無傷。


「あれ、なんで俺強くなった?」


「あ、なるほど。オサムさん。驚かせないでください!」


 優奈ちゃんがプンプンしている。でもどこか楽しそうだ。


「当たっても挟まれない限り痛くないから、キャッチボールでもして遊びな」


「おおおおお!!さすがオサム!お前は俺の親友だ!!」


 わかるよ。普通じゃ持ち上げられない物を、持ち上げたりできたら、最高だもんな。ロマンだよな。



 俺は片手を上げて返した。


 あのふたり、楽しそうだなぁ。

 ちなみに、なんでわざわざあいつらの体に触れたのか。それにもちゃんと理由がある。


 確かに、半径5メートル以内だったら同等の引力操作ができるが、それより離れたら、操作ができなくなるからだ。危険だろ?

 つまり、触れてない状態で無重力状態にして吹っ飛ばしたら、再び5メートル近づくか触れるかしないと解除できないんだ。戦闘向きなんだよな。それに害悪能力。



 しばらくすると、遊び疲れたのか戻ってきた。《引力操作》を解除する。


「おお〜体がめっちゃ重い」


「今なら宇宙から地球に帰ってきた人の気持ちがわかります」


 ふたりとも息を切らしている。わかるよ。その気持ち。


「なぁ、《引力操作》のスキル、お前がその気になれば即死じゃね?」


「だね」


「チートじゃん」


「まぁ、多分だけどほとんどのプレイヤーのスキル、チートだと思う」


「それは戦ってきた他のプレイヤーの体験談?」


「そう。手を振った方向の物が大爆発したり、100メートル以上の津波のような土砂に襲われたり、巨大な森林が襲ってきたりした」


「災害じゃん。お前なんで生きてんの」


「とにかく頑張った」


「あぁ、そっか」


 啓介が、どこか呆れたようにしており、優奈はニコニコしている。


「そうだ。聞きたいことある?」


 質問タイム、欲しいよな。

 すると、啓介が手を挙げた。


「プレイヤーになる方法!」


「知らん」


 知るか。



 優奈が手を挙げた。挙手しなくてもいいのに。


「なんでニューヨークに行ったのですか」


「プレイヤー殺すとさ、居場所バレるんだよね。あと観光」



 啓介が手を挙げた。


「スキルを使えるようになる方法!」


「知らん」


 知るか。欲望じゃねぇか。



 優奈が手を挙げた。


「なぜ、他のプレイヤーと敵対するのですか」


 難しい質問が来た。なんて答えるかな。まぁ、素直に答えていいか。誤解されたら嫌だしね。


「うーん、俺が、生き残るためなんだよね」


「それって、どういうことですか?」


「それはね、秘宝を全部集めるには……!ちょっとまって」


 緑のモノリスが点滅してる。急だな。いつもか。

 開くとこのように表示された。



 ──

【プレイヤー情報】


 Player name タキ オサム が

 Player name ジョイソン をキルしました。


 ※【プレイヤー情報】は、殺した者の現在地の時刻を基準に、12時に全プレイヤーに通知されます。


 プレイヤー総数が、40人になりました。


 残り時間 1758/1781


 ──



 あー、アメリカで、ちょうど12時になったのかな。すっかり忘れていたよ。

 でもこれで、他のプレイヤーは俺が日本以外にもいくってことを知ったから、効果どうかわからないけど多少はカモフラージュになったんじゃないかな。


 モノリスの確認が終わって、ふたりの方を見る。


「あぁ、ごめん。ちょっとね。それで、優奈ちゃんの質問何だっけ」



 すると、優奈ちゃんは、



「えっと、ジョイソンって、誰ですか?」



 と、怯えたように、言ってきた。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ