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蒼天の下シリーズ

蒼天の下、海辺の街で貴方を想う

勢いで書いたので、誤字脱字や読みにくい所があるかもしれません。ただの自己満足な文章ですが、それでも読んで頂ければ幸いです。


私は昔、平凡だけど幸せな花嫁だった。



夫とは海辺の街で一緒に育った幼なじみ。お互い両親が流行病で他界していた私達。同じ境遇の私達が意気投合、恋人同士になるのもあっという間だったが、まさかその数年後、結婚を申し込まれるなんて思ってもみなかった。



蒼天の下行われた結婚式は地元の皆に祝福して貰った。見慣れた海もその日は私達夫婦を祝福するかのように真っ青に輝いていた。天国にいる互いの両親も祝福していたに違いない。



戦争への機運が高まっていた事は知っていた。しかし、その時は私の人生の中で一番幸せな時だった。そんな幸せな一時が崩れ去るのはあっという間で……



結婚から約ニ年。この日は夫の誕生日だった。戦時中、物資が不足している中でもどうにかお祝いしようと、器用な夫が作った人形を握りしめた赤ん坊を背負い、買い物に行っていた私を出迎えたのは、いつものおどけた顔をした貴方では無く、硬い笑顔の貴方。



――――――「俺にも来たよ。国の為に戦える、名誉な事だよ。」



そう言って、呆然とする私の前で、召集令状を見せる貴方。その紙を持つ手が、微かに震えていたのは気のせいか。



その日は彼の出兵も祝う事になった。



「おめでとう。頑張ってね。」



本当は、私は貴方の誕生日は祝えても、徴兵は心からは祝えなかった。この時だけ私は非国民だった。ただただ…………………行って欲しくなかった。



翌日。



――――――「きっと帰るから。○○を頼む。………行ってくるよ。」



そう子供を私に託し、召集令状握りしめ、笑顔で旅立った貴方。私が夜中起きた時、隣で眠る貴方の目尻にあった涙の跡は何を想って流したものか…。




夫がいつか……いつの日か戻ってくると信じて。育てていた貴重な食料が盗まれた日も、空襲にあって炎渦巻く中逃げ惑い、焼け崩れた家の下敷きになって友が亡くなった日も…どんなに辛い日も。いつか貴方が帰る事を信じて。遥か海の向こうにいる貴方の無事をひたすら祈る。



――――――――――――終戦。




帰還者の群れの中を探す。毎日、毎日……。でもどこにも貴方の姿は無くて。




――――――――――――終戦から一年後。



彼との想い出が詰まった地元に戻ってきていた。仲が良かった友達、近所の人と助け合いながら子供と共に生きてきた。彼が戻る事を信じて。彼との想い出が溢れたこの地なら、結婚式で祝福してくれた海が間近にあるこの地なら。きっと戻ってくると信じて…そう信じていた。あの時までは。




ある日、一人の男が訪れた。


「××君の奥様ですか?××君から託されました。」



そう言いながら、一枚の写真と手紙を渡された。写真は軍服を着た懐かしの夫。



「何故夫はいないのか?」そう思いつつも、口には出さず手紙を開いた。多少歪んではいたが、濡れた後もあったが…間違いなく夫の字で。



―――『国の為、家族の為、()()()特攻に志願する事にした。約束を守れなくてすまない。貴女と子供の幸せを遠い地より祈る。また来世で。 ××より』



たった数行の遺書てがみを読み、ただひたすら泣いた。『来世』ではなく、今会いたかった。とにかく生きて帰ってきて欲しかった。泣きじゃくる私の声に気付いた友人が慰めてくれていた。夫からの遺書てがみを持ってきた男性はいつの間にかいなくなっていた。



―――――――十数年後。



「母さん、このボロい人形何?」



「あぁ、これはあんたが赤ん坊の時にあんたの父親が作った人形だよ。あの人は手先が器用だったから。」



「そっか……じゃあ捨てれないね。」



「…そうだね。でも人形もそのままだと可哀想だからちょっと直してあげよう。」



「え、母さん、裁縫出来たっけ?」



「馬鹿にするんじゃないよ!貸しなさい。……ん?何か挟まってるね?」



『拝啓 愛しい坊やと妻へ。


こんな手紙で許して欲しい。坊やは父の事を覚えていないだろうね。


正直言ってこの戦争でこの国が勝つのは難しい。外国はこの国よりずっと凄いんだよ。でもそれを堂々と言うことは出来ない。


戦争に行っても行かなくても父はきっと死ぬだろう。行けば戦争で、行かなかったら非国民として罵られて。どの道死ぬなら、戦争に行って必ず坊やとお母さんを護るよ。死んでも必ず。


本当は行きたくない。本当は怖い。本当は死にたくない。でも大切な家族の為を護るためだったら喜んでいくよ。


どうかこの戦争が終わるまで坊やはお母さんを守っておくれ。父が帰らぬ人となっても。敬具 父 ××』



手紙は小さい紙片に、文字が敷き詰められていた。几帳面な夫らしい手紙。本当の気持ちが綴られた手紙。涙の跡があちこちに見られた。どんな想いでこの手紙を書いたのか。



「……あぁ………貴方……」



久しぶりの夫の言葉。分かっていた。あの遺書《手紙》が()()()()()事なんて。『()()()特攻に志願』した訳で無いことなんて……いや、真面目なあの人の事だから少しは思っていたかもしれないが。


下手な事を書いて検閲されて破棄され、家族を危険に晒す可能性もあったあの時代、『死にたくない』なんて本心は書けない。分かっていた。でも………



「……もっと分かりやすい所に隠して欲しかったねぇ。そしたら早く見つけられたのに。


私が鈍いの知ってただろう?


いや、私が貴方の想像を超えるくらい鈍かっただけなのかな?


………あんた、これ父さんからの手紙だったよ。」



「え?」



思い出すのが辛くて、子供にもあまり話さなかった貴方の話。


思い出すと昨日の事のように浮かぶ貴方の姿。


浮かんだ貴方の姿は、あの結婚式の時のような蒼天の下、はにかむ様な笑顔を私に向けていた……いつも私に見せていたあの笑顔を。


―――――――


ある一人の老婆が息子、息子の嫁、孫達、曾孫達に囲まれて寿命を終えた。その顔には優しげな笑みが浮かんでいた。



『私が死ぬ時はきっと迎えに来てくれると思っていたけど、迎えが遅くないかい?』



『すまない、待たせたね。でも俺の分まで長く生きて欲しかったんだよ。可愛い坊やにも早くお前を迎えに行くと悪いしね。』




老婆のお骨は老婆の夫の墓の中に入れられた。夫の遺骨は無いけれど、夫の写真と撮った結婚式の時の写真が入れられたその墓に。天国では、来世では一緒になれるようにと、家族皆に祈られて。



――――――XX年後。



桜の花びら咲く季節、ある街のカフェで2人の同年代女性が話に花を咲かせていた。



「私ね、次の一人旅の目的地、この海辺の町にしようと思うの!行ったことないのに何か懐かしくて。行かなくちゃって思うんだよね。」



「…あんた、またフラフラして。いい加減結婚相手探したら?」



「何か、男友達ばかり増えちゃって。いい感じになってもすぐ別れちゃうし、向こうから好意持たれても何か途中から嫌悪感出てきちゃって自然消滅狙っちゃうんだよね。……何でだろうか?」



「…ダメだこりゃ。」



――――――――


一人の三十代くらいの男が故郷である小さい海辺の町に戻ってきていた。


「あれ?あんた、帰って来たの?都会で勤めてたんじゃなかった?」



「母さん、ただいま。元々僻地医療に興味があって戻ってくるつもりではいたんだよ?そんな時にこっちで町興し事業やるから一緒にやらないか?って誘われてさ。面白そうだったしやってみようかと。やっぱりあっちより、こっちの方が落ち着くわ。」


「………僻地で悪かったな。今では立派なお医者様だもんな。まぁ、ゆっくりすればいいさ。あのヤブ医者もピンピンしてるから後で挨拶してきな。」


「ヤブ医者って…あの人、実は僻地医療業界の中じゃ有名なんだけど、まぁいいや。挨拶してくるよ。」




――――時を超えて辿り着く。蒼天下、海に祝福された町。若い二人が()()出逢うまであと少し。


とある曲を聞きながら書いたので、バックグラウンドは影響を受けてます。何の曲を聞きながら書いたのかは…分かる人には分かると思います…。拙い文書をお読み頂きありがとうございました。

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