untitled-04
呆然と立ち尽くすバーンズに、大型の触手が迫る。ヘイレルはバーンズに飛びつき、それをかわす。
ヘイレル「バーンズ!迷うな!走れ!!」
バーンズが我に返り走り出す。まずはこの窮地を脱することだ。
ヘイレル「マンジェロ!6時!中央の1体に突撃!」
今は6時が前方になっている。マンジェロが小型5体の群れに飛び込む。その瞬間にも触手の攻撃は続く。ヘイレルに触手がのびる。
タスカー「ギルシーダ!ヘイレル後方!受け止めろ!」
ギルシーダが両腕を交差し、触手を受け止める。だが強度がもたない。左腕がちぎれ飛ぶ。時を同じくマンジェロが群れの中央を切り崩す。そこを5人が一直線に突破する。同時に群れの各個体に零距離射撃。追っ手を防ぐ盾とする。
―――触手の有効範囲から外れた―――
それを確認してヘイレルは12時に向き直る。それに気づいてタスカー、バーンズも足を止める。
バーンズ「・・・隊長?」
彼は静かに答える。
ヘイレル「・・・先に行け・・・。」
タスカーは気づいていたようだ。ヘイレルはずっと考えていた。敗北が決まったあの瞬間から。難民船までの距離を。タスカーが確保した民間人の場所と、避難にかかる時間を。そして大型の要塞化完了までに残された時間を。難民船がいるのは6ブロック先。距離にして約6km。全力で走って30分といったところか。それだけなら間に合う。だがそれまでに敵に難民船を見つけられたら。そして、大型の要塞化が完了し、全個体に殲滅を指示したら。そうなれば全て終わりだ。最低でもあと20分、大型に攻撃を続け注意を引きつける必要がある。そのためには誰かが残らなければならない。そして、その一人は・・・難民船には間に合わない。
バーンズとタスカーは黙り込む。方法がそれしかないのは判っている。ここで一人が犠牲にならなければ誰一人助からないだろう。だが、自ら犠牲になる事を選んだヘイレルに何と言葉をかければいい?感謝?謝罪?気休め?かける言葉など有りはしないのだ。
ヘイレル「何をしている!早く行け!!」
背を向けたまま彼は叫ぶ。目を合わせれば辛くなるからだ。捨てられる側も、捨てる側も。
タスカー「・・・行くぞバーンズ・・・。」
バーンズ「・・・隊長・・・。」
2人と1体は走り出す。一言で語りつくせない思いを抱きながら。