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機甲世記  作者: TIXXI
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untitled-03

ヘイレル「見えたぞ!大型だ!!」


1kmは先だろうか、倒壊したビルの群れから顔を出す巨大な姿は、赤く、禍々しい。表面の色が黒く変色していく。要塞化が進んでいるのだ。


―――ギャアアアア―――


大型は再び雄たけびを上げる。それは人間の無力をあざ笑うかのように。だがその直後、f4から爆音がひびく。コジマ小隊だ。人間もただやられはしない。


コジマ「ウィルマー!f4、ラインを確保した!このままf3の確保にあたる。あとどれくらいかかる?」


ウィルマー「2分だ!ヘイレル!大型はf7のどこだ?」


ヘイレル「中心やや4時より。」


ウィルマー「・・・その場所ならあと4分で射程に入る。」


ガンナーの砲撃が4分後に始まる。それまで大型の要塞化を止めなければならない。・・・方法はひとつだけだ。ヘイレルはしばし立ち止まる。トレイルの最期が頭をよぎるからだ。


バーンズ「行くしかない・・・ですね。」


ヘイレル「ああ・・・。」


大きく息を吸った。そして2人と1体は飛び出す。覚悟などできてはいない。勢いで自らの背中を押しただけだ。だが、やるしかない。


大型が近づく。その周りを守備するのは20を超える小型と8体の中型。中型がいる時点で、ポーンとビショップでは勝ち目は薄い。爆発にも耐えうる装甲。弾丸のような種子で射撃も行う。撃破するには格闘戦で装甲の隙間を狙うしかない。せめてナイトがいれば。だがこれらを倒す必要はない。その奥にいる大型に4分間でできるだけ手傷を負わせればいい。


ヘイレル「マンジェロ!前へ!!」


マンジェロを先頭に、ヘイレル、バーンズの順に並ぶ。一点突破。それが彼らの結論だった。目指すは大型ののど元ただ1つ。中型と中型の隙間を突破する!


中型の射撃が始まる。マンジェロの装甲がそれを弾く。前方に迫った小型のセンサーをバーンズが撃ち抜く。続けてヘイレルが絶妙のタイミングで足を撃ち、釘付けにする。これを射撃に対する盾にする気だ。


―――うまくいった―――


そう思った瞬間だった。バーンズののどに小型の爪が斬りかかる。気づいたのが遅かった。もう避けられない。気が緩んだのだ。


バーンズ「くっ!!」


―――ギャアアアア―――


バーンズは何が起こったのかわからない。自分に斬りかかってきた小型が仰向けに倒れ、その後ろに人影が現れる。違う。ソルドールだ。マンジェロとは別のシルエット。


???「すまない!遅くなったな。そのまま進め!」


無線から声がする。後方か?聞き覚えのある声。


バーンズ「タスカー軍曹!!」


民間人を護衛していたはずだ。


ヘイレル「民間人はどうした!」


タスカー「ビルの1つに避難させてある。とりあえず安全だ。」


民間人は気がかりだが、戦況が好転したのは間違いない。


タスカー「俺も後方から上がる!ギルシーダ!」


彼のソルドールの名だ。


タスカー「左前方の中型!左舷から足止めしろ!!」


ギルシーダが再び走り出す。


ヘイレル「マンジェロ!ギルシーダに合流。中型を仕留めろ!」


ソルドール1体では抑えるのがやっとの中型だが2体ならば話は別だ。ギルシーダが斬撃を受け流し、そのまま固定。マンジェロがその背後を取り、首の付け根、装甲の隙間に一撃!大きな唸り声を上げて中型が倒れる。中型を1体仕留められ、バイオウェポンズが陣形を変えはじめる。だがもう遅い!そこは既に大型ののど元!


上を見上げる。巨体は既にそのほとんどが黒に変色している。だが手遅れではなかったようだ。頭部の付け根一帯がまだ変色しきっていない。ヘイレルは思い出す。あの時の爆音を。


ヘイレル「・・・トレイル・・・。」


トレイルが命と引き換えに残したものの、それが全てだった。爆薬でダメージを受けた部分だけ要塞化が遅れている。時間にしてほんの数分。だが、そのわずかな差で彼が守ろうとしたものは、重く、尊い。


ウィルマー「ヘイレル!無事か?射撃準備完了だ!」


ヘイレル「・・・ああ!!」


5つの影は再び動き出す。一瞬早くバーンズが後方へ走り出す。ヘイレルが!タスカーが!ソルドール達が!!一斉にグレネードを撃ち、バーンズに続く!!激しい爆発を受け、大型の触手が地面から這い出す。トレイルを死に追いやったあの形態!


ヘイレル「マンジェロ!左舷から!」


タスカー「ギルシーダ!右前方!」


ヘイレル、タスカー「バーンズを守れ!!」


全力で走っていたバーンズが屈み込み、振り返る。そこに迫る2体の中型。マンジェロとギルシーダは、バーンズの前面で交差し、中型の腕にぶつかる。バーンズへの斬撃を逸らしたのだ。バーンズはじっくりと狙いを絞る。手にするのは大型ライフル。目指すのはトレイルが残したあの傷跡。


バーンズ「行っけぇ―――――――!!」


ライフルから放たれた光の帯が、大型ののどに突き刺さる。信号弾だ。


ヘイレル「ウィルマー!!」


ウィルマー「ああ!捉えた!!」


ガンナーの砲撃が始まる。一撃目が着弾する。根元やや上部。やはりダメージは少ない。二撃目、胸部に着弾。わずかに外れている。しかしヘイレルには確信がある。ウィルマーの腕なら、次は外さない。そして三撃目が着弾する・・・


はずだった。


無線を貫く爆音。はるか上空に飛び去る砲弾。コジマが何かを伝えようとしているが、爆発の残響でうまく聞き取れない。だがそれだけで充分だった。彼らは後方で何が起こったのかを悟った。


ヘイレル「・・・ウィルマーが・・・やられた。」


バーンズ「・・・そんな・・・。」


タスカー「クッ・・・。」


信号弾が上がる。撤退の合図だ。もはや大型を倒す手立てはない。それはこのコロニーを捨てるという事だ。次々にe1から3機の難民船が飛び立ち、最後の1機が30分後に出発する。あてなどない。ただ西を目指すだけだ。彼らの希望は今、絶たれた。

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