前編
「皆のもの! 我が真祖魔眼により、闇に飲まれよ!」
高校一年生の桜田桃香は教室に入るなり、クラスメイトへそう挨拶した。
彼女の父は日本人、母はイギリス人の日英ハーフで母の血が強いのか赤い髪の毛に白い肌のハーフらしい彫りの深い美少女と行って差し支えのない女子高生である。
彼女は自称”|赤き瞳の真祖《クリムゾンアイトゥツルーアンセスター 》”のミカーラ・フォン・スカーレットでありその実態は、自他ともに認める中二病である。
そんな挨拶もクラスメイトも、もはやなれたもので普通に挨拶を返している。
「あ、紅様おはよー、今日も朝日が眩しいの?」
紅様というのはスカーレットを呼びやすくしたもので、目をしょぼしょぼさせた彼女に明るく声を掛けるが、スカーレット様と言おうとすると長くて呼びづらいからしょうがないね。
桃香はそれに対して眠そうに答える。
「うむ、もともと我は夜型故にな」
そして、いつもは眼鏡のはずの桃香は何故か今日は赤いコンタクトレンズに片目は眼帯であった。
クラスメイトが不思議そうに聞く。
「所で眼鏡はー? なんで眼帯?」
「うむ、昨晩我の魔力を封じていたあの拘束具は、抑えきれぬ我が闇の波動により粉々になったのだ」
「あー、眼鏡壊れたんだ、大変だねーー」
「眼帯は目の怪我?」
「うむ、あれがなくば我よりほとばしる闇の波動をおさえきれぬ故な。
それ故眼鏡の代わりがこの眼帯よ、しかし今日は微妙にぼやけて見えるのだがな」
「あ、多分片目だからな上に度数が微妙に合わないんだよ。
でも赤いカラコンだとめっちゃ可愛いよ」
「ククク、我がチャームアイにより魅了されたしもべよ。
早速供物を捧げるがいい」
「はい、処女の生血だねー」
そういってクラスメイトが差し出したしたのはトマトジュース。
「うむ、苦しゅうないぞ」
そして、トマトジュースをの飲み始める桃香。
「ククク、わが体内に生命がみちていくのがわかるぞ」
「さすが、紅様!」
「今日も絶好調だね」
そんな様子を後ろの方の席で眺めているのは地味系男子の青木邦夫
彼はどこにでもいる、成績は真ん中くらい、これといった個性的な趣味もない、背の順に並べば越の真ん中あたりになる中肉中背のボサボサの前髪の影で目が隠れている地味系男子高校生であった。
しかし、彼は今日は前髪を上げてメガネを掛けていた。
「おっす、お、どうした今日は鬼畜眼鏡化したのか?
それともどこかのお嬢様の執事化したのか?」
声をかけたのは邦夫の数少ない友人の友野。
不服そうに邦夫は言い返した。
「なぜメガネを掛けただけで鬼畜呼ばわりされねばならん?
当然執事にもなってない」
「そら、前髪を上げたらイケメンとかギャルゲー主人公じゃよくあるじゃん。
で眼鏡をかけると「攻め」になり、眼鏡をかけない状態だと「受け」になるんだろ?
で実際お前前髪上げたら結構イケメンじゃん」
「いい加減うっとおしいから黙れ」
「へいへいだまりますよっと、おーこわ」
めちゃめちゃ目立つ桃子と地味ーな邦夫、それぞれには大きな秘密があったのです。