終幕
テロ実行犯、及び、王女殺害の容疑で、ルイスは数ヶ月後に逮捕され、最も重い刑、最下層送りとされた。死罪になった貴族の送金記録から、ジョンも爆破テロの主犯格と特定され、ほぼ同時期に逮捕された。ルイスには分からなかったが、同じく最下層送りになったものと思われた。
最下層――第五階層。地表とも言われる、汚染された土地。
土と言えるものは殆ど無く、ドロドロの汚染物質が至る所を穢している。
そこでルイスは、炭鉱を掘らされていた。
暗い洞穴を、機械式のランプもなく、天然ガスに怯えながら火を焚いて掘り進む。
ガス爆発事故の他、落盤事故も後を絶たない。
仲間と呼べるものは少なく、差し入れられる汚染された補助食だけで食いつなぐ日々。
首を落とされて、天国に行けたほうが、どんなにマシだったか。
ここは地獄だ。生きながら這いずらねばならない、汚物の中だ。
女王の抗体を持つが故に、病気にならない体質を見込まれ、一番危ない鉱脈を任されてしまったルイスは、第三階層での生活を懐かしく思い返すのだった。
天国に行けないのなら、きっといつか、ここでの生活を終わらせて、また以前のように空を飛び回ってやる。
底辺と言っていい生活をしながらも、ルイスは、絶望していなかった。黙々と日々をこなしていた。
自分には、王女に刃向かえる力があるのだ。
事実、アルストロメリアを殺せたことが、父の仇を討てたことが、彼の自信の根拠になっていた。
しかし、ジョンは、最下層に送られてすぐ、病死していた。
過酷すぎる環境に、心身ともに、耐えられなかったのだ。
一方。
クランクを回して動かすタイプのエレベーターで、アイアンメイデンズは、女王の心臓を、第二階層から第一階層に運んでいた。
アリス達の中から、機械技術に秀でた、次なる王女が速やかに選抜される。
選ばれた新王女はシクータという名を与えられた。
聖杯に王宮水を満たし、ひとしずくの薬を垂らす。
シクータが聖杯を飲み干すと、八歳で止まっていた身体が、十四歳の外見まで成長する。
以前、アルストロメリアが、そうしてアリスから王女になったように。
「ロストナンバードアリスは、全て存在を消しておかないといけないわね。二度とこの階層に来られないように」
ヴィクトリア女王は、修復された心臓を、新王女シクータに取り付けてもらい、直ぐに目覚めた。
大コンピュータも修理が済み、シクータがデータを整理した後、通常通り、稼動を再開した。
断頭台の整備も、シクータが代行した。
アルストロメリアは、大コンピュータからバイタルデータを抹消され、歴代の王女目録に名を遺すのみとなった。
各階層に、新王女への交代劇と、クーデター失敗のニュースの載った電子新聞が流れ、主犯として断頭台に消えた貴族と、送金記録から割り出されて逮捕されたジョン、そしてテロ及び王女殺害実行犯として刑に処されたルイスの顔写真が大きく写り込んでいた。
完
拙い作品でしたが、ここまでお読みいただき、有難うございました。




